怪鳥「コリ」、ナナイ民族の民話『正確な射手』
A.A. Passar, G.D. Pavlyshin/ "Malysh" publisher, 1990ロシアの極東には、古より先住民族が住んでいる。ウデゲ、ナナイ、オロチ、ニヴフ、ターズなどだ。彼らは、周囲の現実について独自の見方をしている。
彼らのなかには今でも、自分たちは神秘的な世界に囲まれていると信じている者がいる。その世界は、様々な霊、妖怪、魔力をもつ動物に満たされており、これらの生き物は人々を助け、あるいは悪をなす。
古来より、人間世界と交差するこの魔法の世界についての伝説は、口伝えで受け継がれ、ソ連時代にようやく記述され、刊行された。それらの精霊、妖怪、動物の中でも最も珍奇なものをここに集めた。
デュレン、ナナイ民族の民話『正確な射手』
A.A. Passar, G.D. Pavlyshin/ "Malysh" publisher, 1990これは愛嬌のある小さな「木の人」で、家々に住みついており、住民を守っている。たぶん、デュレンは、このリストにあるすべての生き物のなかで最も無害な存在だろう。デュレンはほとんど人々の目に触れることはないが、常に家の中の秩序を見守り、悪霊を追い払っている。
だからこれは、アムール沿岸のドモヴォイ(ロシア版「座敷わらし」)といったところだ。彼らは、その密やかな生態にもかかわらず、何かの危険が家族を脅かすときは、人間に伝えてくることがある。基本的にデュレンは、何世代にもわたって同じ家族と暮らしており、自分の魔力を使って、人々が大小さまざまな問題を解決するのを助ける。
海の老人「タイルナズ」、『勇敢なアズムヌ:アムルの民話』
D. Nagishkin, A. Vinokurov, L. Schwarzman/ "Diafilm" studio, 1972この老人は、河川や湖沼にいつでも十分な魚がいるように見張っている。しかし、見張りが常にうまくいくとはかぎらない。あるとき彼は、仕事を一休みすることにし、しばらくまどろんだ。結局、老人は数日間眠りに落ち、そのせいでアムール川に魚がいなくなった。しかし、彼が目覚めるとすぐに、「バランス」は再び回復し、魚はアムール流域の川や湖に戻った。
このキャラクターは気難しいこともあるが、それはごく稀だ。
沼の人「ボコ」、ウデゲ民族の民話『七つの恐怖』
Boris Dezhkin, Gennady Filippov/Soyuzmultfilm, 1951この生き物は人間にとって危険だと言える。腕と足が一本ずつしかない「沼の男」の何が危険なのか?明らかに身体が不自由であるにもかかわらず、ボコは人々をだますことができるからだ。沼地の奥深くへ誘い込み、泥土にはまり込ませる。
しかし、ボコを逆に欺くことも可能だ。驚いたことに、節くれだった木の幹に似たこの生き物は、ジャンプするのが大好きで、雲に達するほど高く飛べる。あなたが、「本当にそんなに高く飛べるのか?」と疑うと、ボコはすぐさま自分の能力をあなたに証明しようとする。そして、彼が雲間に舞い上がる間に、あなたは安全に沼から抜け出すことができるだろう。
カクザム、『アムルの民話』
D. Nagishin, G. Pavlyshin/ "Rech" publisher, 2014これは石の巨人で、ちょっと触れるだけで人間を生きた石に変えることができる。その人間は、石に変わっても話すことができるし、動くことさえできるが、そんなに速くは動けない。意識も保っているが、もはや、石と化した自分の運命をどうにもできない。ただし、カクザムが望めば、その人を以前の姿に戻すことができる。
だから、カクザムは力で打ち負かすことはほとんど不可能だ。狡く立ち回って自分の身を救うのが関の山である。
古代伝説のヒーローの一人は、「お前は本当に自分を元通りの姿に戻せるか?」とわざと疑ってみせて、この巨人をだました。もちろん、元の姿になった男は、尻に帆をかけてスタコラ逃げたとさ。
とはいえ、カクザムとは会わないに越したことはない。彼のこしらえる「石庭」の飾りの一つに成り下がるのは、誰しも願い下げだろう。
魔力をもつトラ、『アムルの民話』
D. Nagishin, G. Pavlyshin/ "Rech" publisher, 2014我々ロシア人は子供の頃から、魔法をもつ狼にはおなじみだが、化け物のトラとなるとそうでもない。アムール流域に住むこの生き物は、怪力と高い知力を備えている。タイガで彼らに出くわすことは、災害を招くことを意味する。
しかし、一見するほど恐ろしいわけではない。この生き物とは話が通じ、交渉できるからだ。人間がトラと結婚し、家庭をもったケースさえある。このトラ一族の雌が古代おとぎ話のキャラクターの一人を誘拐し、夫にしたのである。男の方もそれにとくに反対しなかった。
肉を食らう木、『アムルの民話』
D. Nagishin, G. Pavlyshin/ "Rech" publisher, 2014この木は、肉食を――人肉を含めて――厭わない。木をなだめるには、何かの肉片を投げてやるしかない。そして、三十六計逃げるに如かず。なぜなら、木は走れないけれども、長い枝を伸ばして捕まえることができるからだ。
蛇「シム」、『アムルの民話』
D. Nagishin, G. Pavlyshin/ "Rech" publisher, 2014この大蛇は、いかに勇敢な者でも恐怖に陥れる。第一に、炎を吐き、村をいくつも焼き尽くすことができる。第二に、獣や人間を食らうからだ。この地の狩人は大蛇を退治しようとしたが失敗した。
ただ一人の英雄だけが大蛇を倒すことができたが、やはり力でではなく、知恵でだ。英雄はただ蛇に近づき、炎を吐かれる前に、口の中に樹脂を詰めた鋳鉄製の大鍋を投げ入れた。それで蛇は死んだ。
怪鳥「コリ」、ナナイ民族の民話『正確な射手』
A.A. Passar, G.D. Pavlyshin/ "Malysh" publisher, 1990怪鳥「コリ」は途方もなく大きく、空を覆い隠すほどだ。羽は鋼鉄でできており、爪は鋭く何でも引っかけ、目はギラギラ光り、二つの篝火のようだ。普通の人はとても相手にならない。ありふれた方法では助からない。
怪鳥「コリ」は謎々が好きだ。しかも謎は、鳥ではなくあなたの方が出さねばならない。そして、鳥が三つの謎を解けなかったら、あなたは無事に立ち去ることができる。鳥はあなたを放してくれるのだ。
怪鳥を退治する方法もこれに劣らず変わったものだ。この鳥の身体のなかで最も保護されていない部分、すなわち喉の中に魔法の矢を放つことである。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。