モスクワで必見の木造家屋12選

Anton Belitskiy
モスクワには500棟以上の木造家屋があるが、今回はその中でも見応えのあるものを厳選した。

1/ ポゴージンのイズバ、ポゴージンスカヤ通12A

 このイズバ(ロシアの伝統的な田舎の家屋)は、1856年に有名なロシア人歴史家のミハイル・ポゴージンの住まいとして擬ロシア様式で建てられた。この建物はもともと、レフ・トルストイやアレクサンドル・オストロフスキーなどが通った大きな屋敷(1941年の空襲で焼失)の一部だった。ニコライ・ゴーゴリも『タラス・ブーリバ』を執筆していた頃にここでよく過ごした。

2/ パリービンの家、ブルデンコ通23

 1818年に建てられたこの家は、モスクワ最古の木造家屋だ。ファサードに素晴らしいレリーフがあることで有名である。ソビエト時代には共同住宅として利用された。現在この家は改修工事中だ。

3/ ムムーの家(イワン・ツルゲーネフの家博物館)、オストジェンカ通37/7

 この家が有名なのは、ここがイワン・ツルゲーネフ(1818~1883)の名作、『ムムー』の舞台となったからだ。1819年に建てられたこの家は、ナポレオン戦争後のモスクワの典型的な家屋で、帝政様式で作られている。1840年、イワン・ツルゲーネフの母親がこの家を購入し、1850年に亡くなるまでここで暮らした。2018年、ツルゲーネフの家博物館は改修工事を終えて営業を再開した。中庭には犬のムムーを象った小さな像がある。

4/ ロプィレフスキーの家、カロシン横丁12

 この家はモスクワの建築家、ミハイル・ロプィレフスキー(1811~1883)が自身の住まいとして1852年に建設した。ロプィレフスキーは救世主ハリストス大聖堂の建設やクレムリンの武器庫の改修作業に参加した人物だ。この家は浅浮彫りの円形模様で飾られている。興味深いことに、この建物は150年の歴史を通して一度も火災に遭っていない。

5/ ヴィクトル・ヴァスネツォフの家博物館、ヴァスネツォフ横丁13

 この家はロシア人画家のヴィクトル・ヴァスネツォフ(1848~1926)が設計し、1894年から亡くなるまでの間、彼自身がここで暮らした。彼の出自(聖職者の家庭に生まれた)と君主制主義的な思想にもかかわらず、ボリシェヴィキはヴァスネツォフがこの家を保持し、働き続けることを許した。この建物はいくつかのロシアの建築様式を含んでいる。居間は17世紀のボヤール(貴族)の邸宅のような様式だが、食堂は農民小屋を思わせる。2階には110平米のアトリエがある。この家は現在トレチャコフ美術館附属の博物館となっている。

6/ モスカチニエフの家、チェルヌィシェフスキー横丁6/1、6/2

 これら2棟の中流階級家庭の家は、19世紀モスクワの全体像を包み込むものだった。行政機関の相談役を務め、検察官か一部局の長になることもできるような高位の文官だったユーリー・モスカチニエフの住まいとして、1893年に建設された。

7/ クルチツィ・ポドヴォリエの家々

 クルチツィ・ポドヴォリエは、タガンスキー地区の近くのモスクワ川河岸にある。17世紀の独特な石造建築の他、19世紀の木造民家もあり、しばしばロシアの歴史映画の背景に利用される。

8/ アレクサンドル・オストロフスキーの家博物館、マーラヤ・オルディンカ通9

 ロシアの有名な劇作家、アレクサンドル・オストロフスキーが暮らした家は、1823年に建設された。この建物はなんと18世紀に遡るとされている。ソビエト時代に共同住宅にされながらもその姿を今に留め、現在では劇作家の博物館として活用されている。19世紀のロシア商人の暮らしに関する展示もある。

9/ フィレフスキー邸、ゴンチャルナヤ通7/4

 この見たところコンパクトな家は2階建で、広い地下室がある。1899年に建てられ、ロシア古儀式派の裕福な家庭が所有していた。現在ではモスクワの有名な電子音楽クラブ、「パワーハウス」が入居している。

10/ 労働者病院の翼、オゴロードナヤ・スロボダー横丁9

 1875年に建てられたこの病院の翼には、多くの公共の建物に施されていた独特の木彫りの装飾が奇跡的に現存している。この建物を手掛けた建築家、アレクサンドル・メインハルド(1825~1894)は、モスクワ州の建築主任に任命された。この建物は、素朴だが魅力的な地元の木造建築の記念碑と言えるだろう。

11/ ストラホフの家、ガステロ通5

 この家は、革命家であった建築家、レオニード・ラゾフスキーによって1903年から1905年に建設された。この建築家はロシア南部で起きた反ボリシェヴィキ蜂起で亡くなった。所有者のマトヴェイ・ストラホフは建設業に携わっていた。

12/ ノソフ邸、エレクトロザヴォーツカヤ通12

 モスクワ・アールヌーボー建築の珠玉であるノソフ邸は、完全な木造建築だ。モスクワ・アールヌーボーの牽引者、レフ・ケークシェフ(1862-?)によって1903年に建てられ、繊維業界の巨頭であったワシリー・ノソフが所有者となった。

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