この建築様式の主なコンセプトは、あらゆる構造物の形式と用途とを融合することだった。純粋な幾何学性を追求して装飾性を否定する考え方は現代の建築家らをも動かし、ソビエト構成主義を注意深く研究する刺激を与えている。
しかしこれらの風変わりな建物には、専門家だけでなくモスクワを訪れる人々も興味を引かれる。こうした建築物は、ソビエト時代の精神を非常によく伝えているからだ。
シューホフ・タワー(シューホフ通8番)
Getty Images技師のウラジーミル・シューホフは、当初高さ350㍍の塔を建てるつもりだったが、金属が足りず(当時のロシアは内戦中だった)、計画の変更を余儀なくされた。塔の高さは半分になり、構造物はずっと軽くなった。革新的な技術により、一平方㍍当たりに必要な金属は13㌧未満となった。これはエッフェル塔の一平方メートル当たりの重さのほぼ半分だ。だがその軽さと透かし細工のような華奢さにもかかわらず、塔は驚くほど強靭である。
建築家メリニコフの家(リヴォアルバーツキー横丁10番)
Vladimir Astapkovich/Sputnikこの家は実験だった。以後、まさに円形の建物がモスクワの大規模な住宅建設に採用される計画だった。プロジェクトの発案者、コンスタンチン・メリニコフによれば、円筒形の構造は建材を大幅に節約することを可能にした。それにもかかわらず、その後もモスクワの家々は「角ばった」ままで、メリニコフの家はシューセフ記念建築博物館の分館となった。
オルジョニキーゼ通の共同住宅(第2ドンスコイ横丁9番)
Artem Svetlov (CC BY 3.0)建築家イワン・ニコラエフの建物には学生寮があった。共同住宅の建築の強調された機能性は、住民の厳格な生活規定に呼応していた。学生のあらゆる学業と課外活動が一つの建物で行われ、一人部屋の大きさはなんと6平米以下だった。
「コンプレッサー」工場の「プロレタリア」クラブ(エントゥジアストフ街道28/2番)
babs71 (CC BY 3.0)金属工労働組合の初めてのクラブを設計したのは、ヴャチェスラフ・ウラジーミロフだった。建築家は建物を2棟に分け、回廊によって両棟を連結した。一方の棟には図書館と趣味クラブがあり、もう一方のひときわ目を引く棟には講堂があった。
ルサコフ記念クラブ(ストロムィンカ通6番)
Ludvig14 (CC BY-SA 4.0)別のクラブはコンスタンチン・メリニコフによって建設された。この建築家の多くのプロジェクトと異なり、このクラブは彼の構想とほぼ完全に一致する形で実現された。クラブ本体から突き出した3つの立方体には観覧席がある。まさにこの宙に浮かぶ幾何学的な構造体が、この建物に世界中で認知されるユニークな外観を与えている。
多足館(平和大通184番)
Moskva Agency「宙に浮かぶ」家は平和大通のヴェー・デー・エヌ・ハーの辺りにもある。この高層建築は建築家のトリフォン・ザイキンとビクトル・アンドレーエフによって設計された。モスクワっ子はその構造の特徴を評価し、この家に「ムカデ」や「タコ」といったあだ名を付けた。同様の高層ビルは、スモレンスキー並木道やベゴヴァヤ通にも建てられた。
タガンスカヤ電話交換局は、装飾における禁欲性と建物の規模と形状に対する注意を特徴とするソビエト産業建築の一例だ。1920年代に建築家マルトィノヴィチの設計に基づいて建設されたが、簡潔なファサードと狭い窓のリズムが、この建物に非常に現代的な外観を与えていた。モスクワ市民は電話交換局の保存を頑強に訴えたが、建物は2016年に取り壊された。
この学校は、教育機関の新原則に従って建設された。内部の多くの空間を占めていたのは休憩所、工房、実験室だった。学童が天体や天候の変化を観測できるよう、2層の展望台がある塔まで建てられた。
ズーエフ文化会館(レスナヤ通18番)
Konstantin Kokoshkin/Global Look Press建築家イリヤ・ゴロソフがキュービズムの影響を受けてレスナヤ通に建設したのがこの文化会館だ。彼の構想では、文化会館の外観は技術の世界を連想させなければならなかった。建物の中央にはガラスの円筒があり、幾何学図形でできた建物の残りの部分を「着せられている」かのように見える。
モスセリプロム館(カラシヌイ横丁2/10番)
Konstantin Kokoshkin/Global Look Pressこの塔のある角ばった建物は、その色彩が目を引く。明色のファサードと対照的な窓とバルコニーが印象的だ。しかし、最も興味深いのは、建物の東側の側面に隠れている。ここには、アレクサンドル・ロトチェンコのスケッチに基づく模様が店の主な製品(キャンディー、タバコ、チョコレート)の図像とともに再現され、ウラジーミル・マヤコフスキーが考案した「モスセリプロム以外のどこにもない!」というキャッチフレーズが並んでいる。
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