安全だ。だが、ムスリムが過半数を占める保守的な地域であり、島での休暇のように酔っ払って騒いだり羽目を外したりすることは容認されないということを覚えておこう。
現地の警察は常に親切だが、あなたが少しでも問題を起こせば、躊躇なく後ろ手に捻られ手錠を掛けられるだろう。
彼らは銃を抜くのも早い。チェチェンの警官は皆、調整済みのカラシニコフ小銃(AK)と拳銃で武装している。そして彼らはこの地域の特殊性ゆえ、銃の扱い方を大変よく知っている。2000年代後半にロシア政府と法執行機関とが反テロ政策を効果的に遂行するまで何十年もの間、この地方はテロ組織によって分断されていた。
したがってこれはコインの表裏のようなものだ。身の安全を確保したければ、大学生さながらの酔っ払い騒ぎはやめることだ。
この場所へ行くには2つの方法がある。第一に、モスクワのヴヌコヴォ空港からグロズヌイへの直行便に乗ることができる。飛行機は1日に2往復しており、チェチェンへ行くにはこれが一番楽で最速の手段だ。
もう一つの方法は、陸路だ。グロズヌイはモスクワの1850キロメートル南にあり、真新しい道路を下ってドライブを楽しむことができる。ドライブの途中、2つの大きな都市、ヴォロネジとロストフ・ナ・ドヌを通るだろう。したがってチェチェン以外にロシアの地方の風景を見たいなら、この方法がうってつけだ。
ほんの10年前まで戦場だった地方の住人にしては、チェチェン人はとても社交的で好奇心の強い人々だ。この地方に対する過去の危険なイメージが残っているため、観光客を見る機会は少ないが、彼らはこの場所を楽しもうと願う人なら誰でも歓迎する。
ただし少しだけご注意を。現地の家族と知り合ったなら、夕食の招待を決して断ってはならない。すぐに行けないなら、後日に予定を組もう。さもなければ、彼らは気を悪くし、友情は消滅するだろう。
特にかつて激しい武力紛争が繰り広げられたこの地域にあっては、客を迎えてもてなすことはムスリムにとって神聖なことだ。彼らは自分たちの世界がどれほど良くなったかを示すことを切望しており、それが時に過度のもてなしにつながる。
住民の大半がイスラム教徒である地域ということで、チェチェンには服装に関していくつか独特のルールがある。チェチェンの女性は脚や腕を見せてはならない。胸の大きく開いたシャツなど論外だ。露出の多い服を着ると、人々から不快な目を向けられ、叫び声を浴びるかもしれない。 男性のドレスコードについては、一つだけ心に留めておこう。短パンや奇抜なシャツはNGだ。「敬意を持って接してもらいたいならば」と現地ガイドは忠告する。
まず注意点を整理しよう。酒類は、一切チェチェンに持ち込んではならない。タバコもだめだ。そういったものは、豪華ホテルやレストランでも見つけることはできない。これもムスリムの伝統のためだ。現地の人々は健康的な生活を送る他に選択肢はなく、彼らの最大の野望はスポーツ、文化、銃、旅行だ。そしてもちろん、この伝統破りの関心の融合は、上手く機能しているようだ。
彼らは伝統的に自分たちの山がちな地方を戦士の故郷と見ているため、スポーツは彼らにとって神聖なものだ。チェチェンの男性は誰でも人生に一度は武道に励んだことがある。我々のガイドがまず見せてくれたのは、地元の柔道の大会で戦う息子の姿だった。ぼろぼろの崩れかれた試合会場は人々で溢れかえっていた。地元の人々はスポーツ観戦を楽しみ、こうした大会を開くために近年では大きなアリーナもたくさん建てられてきている。中でも美しいのがアフマト・アリーナだ。
文化的なイベントや場所を楽しむなら、中央劇場と、この地方で最大のモスク「チェチェンの心」を訪れよう。どちらもグロズヌイにある。
ガンマニアなら、チェチェンは絶好の旅行先だろう。チェチェンの首長ラムザン・カディロフ氏は、特殊部隊の訓練センターの建設を視察している。これはグロズヌイから33キロメートル、グデルメスという街の近くにある。
正式にはロシア特殊部隊センターと呼ばれるこの施設の一部はまだ建設中だが、所有者はすでに射撃場を開放しており、ここでは拳銃から重機関銃、グレネードランチャーまで、撃ちたい銃を文字通り何でも撃つことができる。2020年に工事が終われば、水中射撃や、地雷の信管除去を体験できるほか、砂漠の砂嵐を再現した射撃場で好きな銃を撃つことができる。
射撃や爆破のほか、ハイキングもお勧めだ。キャンプや森林散策、登山が好きならば、チェチェンはやはり絶好の場所だ。グロズヌイから出発し、好きな方角へ進もう。この地方はあらゆる美しい場所で満ちている。
豚肉は見当たらないだろう。これは確かだ。
地元のシャシリクやケバブを試そう。特に羊肉のものだ。地元の料理を提供してくれるカフェはたくさんあり、地元のタクシー運転手ならば20分以内でそこまで連れて行ってくれる。グロズヌイはモスクワに比べれば小さな街だ。
グロズヌイへ行く前にドル(その他どの通貨でも)からルーブルに両替しておこう。
クレジットカードでは支払えないため、現金を用意しておく必要がある(例外的に大きな高級レストランや高級ホテルではカードも使えるが、地元の文化に浸りたいなら、こうした場所に滞在する機会はないだろう)。
また、大都市と同じ要領で現地の女性と親しくなるのは避けよう。ここは家族の許しがなければ女性とデートすることのできない保守的な地方だ。しかも家族の許しというのは、すなわち父親の許しのことである。ティンダーのようなマッチングサイトで現地女性を見つけることもできない。我々が皆さんのために調べてみたが、ティンダーに登録しているチェチェン女性は文字通りゼロである。
とはいえ一番のアドバイスは、心を開いて出歩くことだろう。我々が実際に訪れたチェチェンは、テレビで見る映像や知り合いから伝え聞く「恐ろしい話」とはまるで違う場所だった。
自ら新しい体験をして、新世界を冒険しようという意志があるなら、チェチェンは絶対に訪れる価値のある場所だ。
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