モスクワ通信
日本を含む多くの国において、自転車はごく一般的な交通手段である。自転車を使って、会社員は会社へ、学生は学校へ、そして主婦は買い物へ行く。
近年モスクワでは同様のシステムの導入が進められている。シティバイクのステーションが設置され、各所で自転車をレンタルできるというサービスである。このサービス、モスクワ市の中心部では意味がある。しかし中心部に住んでいない人、中心部で働いていない人にとって、自転車での移動は予想もできないほど長い時間を要するものである。
というのもまずモスクワでは距離そのものが非常に大きい。つまり自転車で仕事に出かけようとするならかなり早く出て、オフィスについたらシャワーを浴びなくてはならなくなる。次にモスクワ政府がシティバイクを設置したのはいいが、自転車専用道路の整備はなかなか進んでおらず、専用道路はどこにでもあるわけではない。加えて、自動車と同じ道を自転車で走るなんてことは絶対にお勧めしない。モスクワには攻撃的なドライバーがいるからだ。
モスクワ地下鉄のマヤコフスカヤ駅=ロイター通信
モスクワの地下鉄は個別に扱うべきテーマである。まず覚えておいてもらいたいのは、モスクワの地下鉄の路線は赤、青、黄など色別で呼ばれているということだ。もちろん車内アナウンスの案内には色は使われない。各線の名称で呼ばれる。しかしこの正式名称、車内以外の場所で耳にすることはないだろう。
「スモレンスカヤ」駅または「アルバーツカヤ」駅に行かなければならないときには、前もってどの路線の駅なのかを明確にする必要がある。モスクワの地下鉄には「スモレンスカヤ」と「アルバーツカヤ」が2つずつあるからだ。しかしこれは高度な技である。モスクワっ子でさえ間違うことがあるほどなのだから。
続いて、モスクワでは、地下鉄の運行が終わりに近づくと、列車は路線の最終駅まで行かずに、あなたが降りたい駅のいくつか手前にある車輌基地に向かうという厄介な問題がある。これ自体は大したことではないが、途中の駅で降ろされ、当然、より混雑している次の電車に乗り換えなければならないというのは不愉快なことだ。
その代わり、モスクワの地下鉄の路線図をたとえばロンドンやニューヨークの地下鉄のそれと比較したなら、そのシステムが非常に解りやすいことは一目瞭然だ。迷子になる可能性はきわめて低い。
またあらゆる欠点を考慮しても、モスクワの地下鉄が美しいというのは誰にも否定できない事実である。
モスクワ中央環状線=ロイター通信
2016年9月モスクワの地下鉄には地上を走るもう一つの「環状線」が加わった。この路線はモスクワ中央環状線と呼ばれ、31あるすべての駅が地上の公共交通機関と連結している。
さらにソチのオリンピックで近郊輸送などに使われた「ラースタチカ(つばめ)」というポエティックな名前の新型車輌が投入された。またそれに合わせて、多くの乗り換え駅が改修された。政府が進めたものをモスクワ市民がこれほど熱狂的に受け入れたのは久しぶりのことである。唯一の難点は普通の地下鉄から地上への地下鉄に乗り換える際、美しいとは言い難い地域を延々と歩かなければならず、地下を走る路線に乗り続けた方がいいと言う人もいるほどだ。
トロリーバス「B」=エフゲニー・オディのコフ/ロシア通信
もし列車が嫌い、地下鉄を移動するのが嫌いという場合はどうすればいいか。そういう人のためにモスクワにはもちろん地上の交通システムがある。
たとえばトロリーバス「B」はサドーヴォエ環状道路を深夜まで走っていて、非常に便利である。バスもあるが、時刻表通り運行されないことが多々ある。
モスクワにはトランヴァイ(路面電車)もある。なぜかバスやトロリーバスほど人気がないので、目的地まで何に乗ってもかまわないという場合はトランヴァイをお勧めする。しかもトランヴァイの乗客はそれほど多くない。自動車の多さが深刻なモスクワにおいて公共交通機関はその生活をはるかにストレスレスにしてくれる。もちろん自分の自動車での移動は、より快適で、より早く着くことも多い。しかし何れにしても、渋滞に巻き込まれて自動車の中でじっとしているか、バスに揺られるか以外に、さらに2つの選択肢があるのは悪くないだろう。
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