凍れる「伝説の湖」への旅

ニコライ・リコフ、ドミトリー・チストプルドフ撮影
 ​幻想的な岸辺の岩穴、蜘蛛の巣状の氷のひび割れ、ジープやスケートによる旅、アイスフィッシング、心を落ち着かせる静けさ。こんなものはまだまだほんの一例に過ぎない。凍結したバイカル湖に出かけるに値する喜びは、ほかにもたくさんある。

 冬、それはおそらく、「聖なる湖」バイカルと出会うには最高の季節だ。特に、2月と3月。このころ湖面の氷は硬く張り、天気は極めて寒く、しかし乾燥して、太陽は驚くほど明るく、沈黙を心ゆくまで楽しむことを妨げるものは誰もいない。

 

奇跡の氷

 暗青色、墨色、多数の気泡、空色または眩い白色。どんな色をしていようとも、バイカルの氷は常に驚くべき透明さで、磨き上げた鏡面のように清らかだ。湖面が硬く凍りつく1月末から4月末まで、海と見紛う大きさの「伝説の湖」バイカルは、イルクーツク州最大の、天然の観光名所となる。

 厚さが1-1.5mにも上るバイカルの氷は、単なる平らな表面ではない。ここには水晶を思わせる、高さ12mにも上る巨大な氷塊、「氷丘」もある。また凍りついた岩や石にまといつく氷の寄せ波、「ソクイ」と呼ばれるものもある。また、「脊椎状亀裂」と呼ばれるものもある。これは、幅2-3m、長さ10-30kmにもわたって続く長大なひび割れで、これが生まれるとき湖は鋭い、轟々たる軋み音をたてる。概して冬のバイカルは、有史以前の眠れる怪獣に似ている。そいつは時々溜息をつき、物音を立てる。それを手なずけることは出来る。ただし、注意深くはあるべきだ。

 

氷の道

 冬のバイカルを旅するのには様々な方法があるが、最もポピュラーな方法のひとつが自動車である。それももっともなこと。車は、第一に、快適で暖かい。第二に、湖のあちこちのポイントを巡り、岩山や、幻想的な氷の岩穴を楽しむことが出来る。

 地元住民も、場数を踏んだ旅行者たちも、経験の浅い運転手が自立的に氷の上を移動することはお勧めしていない。湖のイルクーツク側で非常事態省の地域支部が公式にオープンさせているのは、オリホン島に通ずる一本の道だけだ。湖に沿って他の方面へ行くのは、もはや危険なことである。亀裂や氷丘があるためだ。やはり一番確実で安全な方法は、旅行会社に申し込むことだ。旅行会社なら、フィッシングや犬ぞり、バーニャ(サウナ)を含む見学コースも組んでくれるだろうし、熟練ドライバー兼ガイド込みで自動車を手配してもくれるだろう。なお、旅行に最適な場所は、オリホン島、マーラエ・モーリェ(小さな海)、それから湖岸だ。

 冬のバイカルはまた、素晴らしい、天然のスケートリンクでもある。まっ平らで、つるつるの氷をもつリンク。スケートをはじめとするウィンター・アクティビティ、たとえばバギー、スキー、アイスフィッシングなどの愛好家は、しばしばリストヴャンカ市に出かける。同市では沿岸全線にわたってきれいに整氷がなされている。また、イルクーツクにある多くのツアー基地も、そのバイカル沿岸部で、家族での休暇のためのスケート場を開く努力を行なっている。

 過激な、独立独行の旅を愛する人、それこそバイカル湖上をスケートで400kmも旅したダニーラ・コルジョノフ(そのフォト・ルポはこちら)のような人たちは、自らの二本の足でバイカル縦断を目指す。このような遠征は専門的な訓練、経験と勇気を要するが、極めてユニークなシベリアのアドベンチャーにはなるだろう。

Lori/Legion-Media撮影

モニター越しに見るバイカル

 もしこの冬、氷の下に眠るシベリアの伝説の湖と相まみえる余裕がないというならば、バーチャルツアー「冬のバイカル湖」を訪ねてみてはいかがか。

 ツアーを構成するのは高解像度でバイカルの様々なシーンを映した23枚の全天球パノラマ写真だ。写真は、ロシア地理学会の後援を受けて創設されたロシア人写真家チームによる非営利プロジェクト「AirPano」のために空撮されたもの。

 モニター画面から目を離すことなく、オリホン島のホボイ岬やブドゥン岬、「オリホン門」湾、仏塔の立つオゴイ島などの空撮画像、ボリシエ・カトゥイ(大猫)村から望むバイカルの夕焼け、蜘蛛の巣状の氷のひび割れなど、様々な景色を楽しむことが出来る。

 

アクセスとプライス

 バイカルの旅は伝統的に、イルクーツクから始まる。イルクーツクへは、シベリア横断鉄道でも、飛行機でも行ける。モスクワとサンクトペテルブルク、極東のハバロフスクからの空の便は、ほぼ毎日出ている。

 次のことを肝に銘じておきたい。もしあなたが不慣れな旅行者または運転手なのなら、バイカル湖氷の旅を企画する際、旅行会社の助けを借りるほうが確実だ。価格はピンキリ。ルートの複雑さや、どんなアクティビティを組み込むかによる。たとえば、ガイド付き、自動車による、オリホン島への2日間の旅なら、1万から1万2000ルーブル(1万7000-2万500円)。この有名な島で1週間過ごすなら、2万5000ルーブル(4万2700円)。同じ一週間でもより複雑な、スノーモービルや犬ぞりを含むジープツアーなら、5万ルーブル(8万5400円)からだ。

イルクーツク市民は、次の旅行社を特にお勧めしている。各社、様々な価格帯・複雑さの冬季ツアーを用意している。

バイカル・アドベンチャー社:http://www.baikal-adventure.com/

トリヴィウム社:http://www.baikal.travel/en

ヴァクルーク・バイカラ社:http://vokrug-baikala.ru/en

バイカロフ社:http://en.baikalov.ru/

バイカルヴィザ社:http://baikal-irkutsk.com/

もっと読む:冬場のロシア旅行には何が必要?>>>

 

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