最高にクレイジーな人生劇場

Getty Images撮影

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“パンク辻音楽師”、90年代のギャングの墓地、住宅の裏庭の戦車…。ロシアで最も自由な街のアーバントリップは意外性に満ちている。ロシアNOWはこのメガポリスならではの、そしてロシアでしかお目にかかれないスポットを6箇所ご紹介する。

1. シャルタシの巨石群 

 エカテリンブルク郊外に、古代の生贄の祭壇、冶金工場跡、そして新石器時代の大集落跡がある。この場所は、「シャルタシの巨石群」と呼ばれており、氷河期に削られた多数の花崗岩の大丸石が、巨大な嘴さながらに突き出して、奇怪な景観を形作っている。ここで、かつての聖堂の入口、生贄の祭壇だった岩、花崗岩で築かれた円形劇場などを眺めていると。古代の祭祀の有様が生々しく浮かんでくるようだ。

 ちなみに、1905年にここで、残虐な革命家で、ウラルのボリシェビキを指導したヤーコフ・スベルドロフが、ボリシェビキの秘密集会を行った。 

 「シャルタシの巨石群」は周りを、広大なシャルタシ森林公園に囲まれている。公園は市街に隣接しているのに、面積は777ヘクタールにも及び、原初の自然が息づく美しい憩いの場だ。

 

2. シロコレチェンスコエ墓地とイワノフスコエ墓地 

 シロコレチェンスコエ墓地は、エカテリンブルク南西の街外れにあり、英雄、ペルソナ・ノン・グラータ、芸術家、アーティスト、学者、軍人などの有名人が葬られており、独自の名所となっている。

 風変わりな彫刻が多数立ち並び、正門のところにも、奇妙な円錐形の聖マルコ・ペチェルスキー教会が聳えている。この教会はいわば、折衷建築様式の神格化といった観があり、今にも異界への扉が開きそうだ。

 この墓地では、浮き彫り、高さ7mの石碑、「永遠の炎」(無名戦士の墓)、墓石に埋め込まれた宝石、故人の等身大のレーザー彫刻などを見ることができる。

 この墓地の際立った特徴は、90年代の無法時代に犯罪組織間の抗争で死んだ大物たちの墓がずらりと並ぶ並木道があること。当時エカテリンブルクは、ロシアの犯罪拠点の一つだった。2~3mもの高さの高価な黒大理石の墓碑で、刺青を彫った若きギャングが金の鎖を身につけ、煙草をくわえ、ベンツの鍵を持っている。

 この墓地に劣らず興味深いのは、エカテリンブルク最初の墓地の一つで今日まで残っているイワノフスコエ墓地だ。開設は1843年に遡り、市の中心部に位置している。ここには、ソ連時代閉鎖されなかった唯一の教会(現在は主教座教会)がある。1846年に当地の商人の発意で建てられたものだ。

 この墓地には、砂金の発見者であるレフ・ブルスニツィンの墓がある。その発見のおかげで、ロシア帝国は世界有数の金産出国に躍り出た。墓地中央の丘には、園内最大の彫刻が立っている。ウラルの鉱山の神秘と伝説を描いた有名作家パーベル・バジョーフの墓だ。またここから数歩の真向かいには、鮮血さながらに真っ赤に塗られた彫刻がある。ニコライ2世一家の殺害者の一人、ピョートル・エルマコフの墓である。

 

3. ビソツキー通りの住宅になぜか本物の戦車が


写真提供:ek-map.ru

 戦車そのものはロシアでは珍しくも何ともないが、エカテリンブルクのそれは、ベッドタウンのありふれた高層住宅の裏庭にある。住所はヴィソツキー通り18番地。子供の遊び場のかわりになぜかソ連時代の戦車が2両。よくみると、一応台座に載っているので、第二次世界大戦の何かの戦勝記念らしい。古い住民の話では80年代に出現したそうだが、どんな状況でなぜ現れたのかは覚えていないそうだ。

 

4. ブカシキンじいさんの小道 

 ブカシキンじいさん、またはエフゲニー・マラヒン(1938~2005)は、エカテリンブルクの“非公式”の伝説だ。彼はこの都市では有名な画家で、彼抜きにはこの街のアートは考えられない。大学でエネルギー分野のエンジニアの教育を受け、発電所の監督をしていたが、画家として有名になった。型破りなブカシキンじいさんのキャンバスは、文字通り街全体で、見栄えのしない灰色のガレージもゴミのコンテナもありふれたコンクリートの塀も、すべてが画布となった。じいさんは、「ゴミ捨て場の理論」なるものを編み出し、それによると、どんなゴミでも芸術作品とみなせるという。

 じいさんの作品は、ロンドンの大英図書館の稀覯本部、モスクワ、エカテリンブルク、ニジニ・ノブゴロドの美術館などに所蔵されている。

 通称「ブカシキンじいさんの小道」は、通り抜け可能な中庭(レーニン通り5-6番地)で、壁、塀、ガレージに描かれた絵のユニークなギャラリーになっている(じいさん自作の詩も書き込まれている)

 

5.過去に向かって走る市電


写真提供:ロマン・ヴェゼーニン

 エカテリンブルクで最も風変わりな市街交通の路線といえば、ゼリョーヌイ島に向かう路面電車の一本道だろう。この4キロの区間は1935年以来変わっていない。ここでは昔ながらのタブレット式列車運行方式が行われている。この11番トラムは、街中ではなく、風光明媚なベルフ・イセツキー池の岸辺を通る。夏ともなれば、カモの孵化をしばしば見かける。

 

6. 採取場「古いレンズ」


写真提供:marshruty.ru

 エカテリンブルク近郊で最も奇妙で美しい場所というと、シャブロフスコエ町にあるタルク(滑石)の採取場「スターラヤ・リンザ(古いレンズ)」だろう。これは、幻想的な美をもつ廃墟で、ここを訪れるのは、“止った時間”に触れる一つの方法だ。ストルガツキー兄弟の作品を映像化したような雰囲気に浸れる。 

 採取場の底には、狭軌鉄道、トロッコ、クレーン、大型鋸などが打ち捨てられていて、まるで他の惑星にいるみたいだ。採取場の幅は400m、深さは100m。夏には、段々状の壁を水流が滝上に流れ落ち、タルク、蛇紋石、スモーキークォーツ、トルマリン等の美しい結晶を見つけることができる。

 ここで採取が始まったのは、ソ連最大のタルク・コンビナートが創設された1931年のこと。コンビナートはいまだに稼動している。採取場の方は1974年に閉鎖された。ここに辿りつくには、 エカテリンブルクからポレフスキー街道を17キロ走り、「シャブルイ方面」の標識を見たら左折してシャブルイまで行く。ここでコンビナートを見つけたら、採取場までは徒歩1キロだ。

 

エカテリンブルクの安全旅行ガイド 

1.道が迷路のように曲がりくねっているのでご注意。とくに「人民の意志」通りは4回ほど、どこからともなく忽然と現れては消えていく。チュツコエフ通りは、自分自身と並行に進んだり(!)、垂直になったりすることが5回あり、自分と交差することも4回ある。

2.水道の水を煮沸せずに飲まないこと。健康を害する恐れがある。

3.暖かい季節はツツガムシが活発で、市内で刺されることもある。吸い付いているのを見たらすぐ医者へ。

4. 横断歩道以外の場所では道路を渡らないこと。エカテリンブルクの交通警察は、市民の安全確保に熱心だ。