「ベリーか、スグリに近いものを感じる」と、ポクロフカ通りのインディーズ・コーヒー店「コオペラチフ・チョルヌイ」で、ノートパソコンを置いて座っている客が話す。「そう、カプチーノでこれを感じることはない」と、コオペラチフ・チョルヌイの創業者の一人であるパーヴェル・シュヴァエフさんが答える。
小さなコーヒー店が世界のあちこちに出現するというのが、普通になってきている。自分たちで焙煎してドリップする、とてもおいしいブラック・コーヒー。小さなコーヒー店は、スターバックスなどの大手チェーンの競合になり始めている。
モスクワも例外ではないが、パーヴェルさんはいわゆる「コーヒー革命は始まったばかり」と話す。コオペラチフ・チョルヌイは普通のカプチーノやフラット・ホワイトではなく、代替ドリップのブラック・コーヒーに特化している。ロシアでは、コーヒーを飲む人の59パーセントがインスタント・コーヒーを飲んでいるため、ドリップは一般的ではない。
モスクワで最も人気の高いコーヒーは、「ラフや、シロップ入りラテといった、甘い飲み物」だと、コオペラチフ・チョルヌイのスタッフ、ステファンさんは話す。ラフとは、モスクワのコーヒー店「コーヒー・ビーン」が1990年代半ばに考案した、乳脂とバニラ・シュガーの入ったスチーム・コーヒーで、いまだにロシアのコーヒー店では人気があり、さまざまなバリエーションができている。
コオペラチフ・チョルヌイは、ブラック・コーヒーのみの店としてスタートし、大々的な宣伝をしていない。「当店は異なる形でコーヒーをつくり始めた最初のカフェの一つ。エスプレッソ・マシンを持たず、最初の2年はV60、エアロプレス、ケメックス、サイフォンを使っていた」とパーヴェルさん。コオペラチフ・チョルヌイは現在、V60とエアロプレスでコーヒーを入れている。エスプレッソ・マシンと違うところは、「圧力がないところで、豆の本当の味を理解しやすい」とステファンさん。また、「実験の幅を広げている」という。
アナスタシア・ソロキナさんは、画像投稿サイト「インスタグラム」で、モスクワのさまざまな場所にある小さなコーヒー店を紹介している。スターバックスは「すべてに砂糖が入りすぎていて、エスプレッソが苦い」ため、あまり行かないという。砂糖やシロップの入っていないカプチーノやフラット・ホワイトを好む。時間があれば、「V60を楽しむ」。
「私は、『スイートビーンズ』(クラスノダルのマイクロ・ロースター会社)で焙煎されたエチオピアのコーヒー豆2種類から、カプチーノをつくろうとしたことがある。モスクワには、『ダブルB』、『ドリンクイット』、『ポイント・コーヒー・アンド・フード』などの良い店がたくさんある」とアナスタシヤさん。
代替式で淹れられたブラック・コーヒーは、「普通のアメリカーノよりも風味が豊か」で、「コーヒーを本当に味わうことのできる優れた機会」を提供すると、アナスタシヤさん。普通のカプチーノやラテは消えないものの、「将来的には甘いコーヒーが徐々に追いやられる」と考えている。
コオペラチフ・チョルヌイは4年前にオープンし、閉店寸前になったこともあったが、独立したコーヒー店へと進化した。創業者であるパーヴェルさんとアルチョム・テミロフさんは、モスクワ国立大学の哲学部で学びながら、責任ある消費とフェアトレードを原則とした事業を始めたいと考えていた。
ヨーロッパの供給業者から生豆を購入し、自分たちで焙煎し、店で使い、また販売した。「最初は『カメラ・オブスキュラ』や『ダブルB』(モスクワのコーヒー・ロースター)の焙煎コーヒーを使って活動していた」とパーヴェルさん。コーヒー愛好家として、長期的には「自分で焙煎することが、コーヒー・パックの販売、卸売の鍵になる」と説明する。
地元で焙煎すると、節約になるだけでなく、「新鮮」だという。また、これによって、「さらに実験し、風味を拡大し、新たな味を提案する」ようになるため、コーヒー店が独自性を増すと、パーヴェルさん。
「混合はせず、国際コーヒー規格で80点以上の特別なコーヒーの単種にしている。異なる地域のコーヒーを混合するのはおかしい。1種類の焙煎を強めれば、それぞれのカップで味を変えられるのに」とパーヴェルさん。
「ルーブル安の影響を強く受けた」という。業者から購入する生豆は1キロ約8ドルだが、「物流コストと消費税によって2倍の価格になる」とパーヴェルさん。
コオペラチフ・チョルヌイは、ブラック・コーヒーに関するさまざまな教育を始めている。毎月最後の金曜日に、誰もが無料でブラック・コーヒーを試飲できる「ブラック・フライデー」を実施している。
パーヴェルさんとアルチョムさんは時々、コーヒー栽培と生産の異なる側面について話す。
アルチョムさんは「インク」誌のインタビューで、店のメンバーが教育キャンペーン「コーヒーの31の事実」に関する本を書く予定だと話している。
コオペラチフ・チョルヌイとダブルBは、世界の「サードウェーブコーヒー」マップに記される、モスクワの5店のうちの2店である。コオペラチフ・チョルヌイは、特別なコーヒーをつくり、コーヒーの栽培、加工を発展させ、新鮮な焙煎と巧みなドリップを実施することを目指している。
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