ロシア連邦およびクリミアの当局は、ウクライナからクリミアへの送電が止まることを想定し、昨年から準備を行っていたが、突然かつ完全な送電停止への準備にはいたっていなかった。クリミアはこれまで、ウクライナの原子力発電所から電力需要の80%を受け取り、残りの20%を火力発電、太陽光発電、風力発電で得ていた。闇に沈んだクリミアの現在の生活とはこうだ。
セルゲイ・マルガフコ撮影/ロシア通信
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クリミア当局は自律電源を、産院、病院、輸血ステーション、児童養護施設、老人ホームなどの最も重要な社会施設に分配した。
ロシア本土からは強力な可動型ガスタービン発電機13台、ディーゼル発電機1000台以上を搬入した。これによって発電量を30~40%または350メガワットまで高めた。だがクリミアは通常でも約850メガワット、秋冬期は1200メガワットを必要とする。
トロリーバスは営業を止めた。クリミアではこの乗り物は街中を走るだけでなく、クリミアの首都シンフェロポリと黒海沿岸のリゾート地であるヤルタとアルシタをつないでいる。一時的にバスがトロリーバスに置きかえられた。
節電策として、街灯は消されている。またボイラーも停止された。気温がここ2週間、約プラス15度で比較的温かいため。ただ、集中給水・給ガスは維持されている。
各家庭への配電は時間制になっている。例えば、人口40万人強のセヴァストポリでは、2~3時間の通電、6時間の停電がくりかえされている。
アルチョム・クレミンスキー撮影/ロシア通信
多くの工場は生産停止を余儀なくされた。損害額は膨らみ、今のところ、補填のすべもない。ディーゼル発電機の購入に投資することを決定した会社もある。街中ではパン、ジャム、ワインの製造が続けられている。船舶修繕工場は注文に対応している。
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昨年の停電時にすでに発電機を確保していたチェーン店やガソリンスタンドも多く、そのようなところは営業を続けている。食料品と燃料は、ロシア本土からケルチ海峡経由で搬入されているため、十分にある。小さな店は昼間の明るい時間に営業し、夜は場合によってロウソクを灯して営業を続けている。街中のカフェは、「当店には照明あり、お入りください」と宣伝したりしている。
シンフェロポリに暮らすナデジダ・リャプコさんはこう話す。「うちの地域では食料品店5店舗のうち、1店舗しか営業してない。夜は行列ができていて、パンを買えないこともある。乳製品を買わなくなった。ずっと規定の温度で保管されていたかわからないから」
ほとんどの都市では、学校や幼稚園の休暇が宣言された。
クリミアではまた、携帯およびインターネットの通信に問題が発生している。電話が通じにくくなり、通話は途切れる。
セヴァストポリでは、携帯の基地局のバッテリーを消耗させず、通信を安定させるために、追加的な可動型ディーゼル発電機から充電している。
村は都市部よりも苦労している。22日から停電の状態で、ガスも止まっているところも多い。ロシア連邦非常事態省の指令によって、住民に温かい食事を与えるための野外炊事車が出動し、数日以内にはディーゼル発電機も届けられる。
電力遮断によって発生した不便さは、クリミアの住民を団結させた。都市部では夜になると、通りに多くの人が集まってくる。暗い家でじっと座っているのではなく、表を散歩して、カフェに立ち寄ったりしている。セヴァストポリのエヴゲニー・ユルコフさんはこう話す。「今までだと夜は皆家にいて、インターネットをしたり、テレビを見たりしていた。だけど今は集まって、ボードゲームしたり、会話したりしている」
クリミア行政府は、ウクライナの過激派による送電線の支柱の破壊を、民間人に対するテロと呼んでいる。ナタリヤ・ポクロンスカヤ共和国検事は、「破壊行為」容疑で立件した。
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ウクライナの国営電力会社「ウクルエネルゴ」は、この状況を不可抗力と考えている。これはクリミアへの送電停止に対する罰金を支払わない権利を同社に与える。
ウクルエネルゴは何度も送電線の支柱の修理を延期してきた。一方で、住民はケルチ海峡経由の電力ブリッジに、より期待している。この電力ブリッジは、ロシア本土の電力システムとクリミアをつなげる。ロシアのアレクサンドル・ノヴァク・エネルギー相は、設備の引き渡し期間を短縮し、来月22日にも350メガワットを送電することを明らかにした。第2段階は来年夏で、総電力量は850メガワットになる。
2017~2018年、各470メガワットの新しい発電所2ヶ所が建設される。これによって、クリミアの電気は完全に独立する。
セヴァストポリ
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