ロシアのシリア難民たち

AP通信
 最新データによると、ロシアには約1万2000人のシリア人がいる。ヨーロッパでは難民が駅に殺到したり、公園や道端で野宿したりしているが、ロシアではそのような光景は見られない。ここはヨーロッパを目指す難民の最後の中継地となる。シリア難民の状況はどうなっているのだろうか。ロシアNOWが特集する。

 150人以上のシリア難民が、ロシアを経由してノルウェーに入国したと、ロシアの経済紙「ヴェドモスチ」がアメリカの経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の情報として伝えている。ヨーロッパでは今年初めから約50万人が難民申請をしていることを考えれば、ごく一部の話にすぎない。ロシアはシリア人にとって通過地点であると、専門家は言っているが、それでもロシアに来る人は、難民として来る人と同様、多くはない。

 

通過ルート

 シリアの内戦を理由にロシアに入国したシリア人の正確な人数を数えるのは、かなり難しい。というのも、学生ビザや就労ビザで入国するからだ。ロシアに暮らすシリア人ジャーナリストで作家のムンゼル・ハルムさんはこう話す。「空港で、伝統的なイスラム教の服を着ている女子の集団と会った。年単位のビザを持っていた。本人たちはサンクトペテルブルクでロシア語を学ぶために来たと主張していたが、内戦から逃れる唯一の手段を活用しただけであって、ロシアにも長く滞在しないと思う」

 ハルムさんによると、ロシアに来るシリア人を3つのカテゴリーにわけることができるという。それは最終目的地をヨーロッパとしている通過旅客、同じくシリアに帰国するつもりのない留学生、ずっと前からロシアに暮らしているが、この波に乗って、より先進的な国への移住を考えているシリア人。

 「シリア難民はロシアには残りたがらない。ここでは手当、住宅、または仕事が与えられないから。それに合法的在住のための書類を手続きするのも非常に困難」とハルムさん。

 「海外ダマスカス宣言」運動の会員で、在ロシア・シリア国民評議会の会長であるマフムド・アルハムザ氏も、シリア難民はロシアで仕事を見つけられず、また優遇措置も受けられないと話す。「ロシアが受け入れているのはごく少数のシリア難民で、あまり支援していない。今のところ、シリア人はそれを我慢し、難しい手順を経ながら、賄賂を支払っている。ロシアに入国する際、どのような政治的観点を持っているのか、どのようなイスラム教の決まりを守っているのかと聞かれたケースも、私は見ている。ヨーロッパの対応の仕方は全然違う」

 アルハムザ会長は、ロシアを通過地点とすることは難しいと考える。「ここからヨーロッパに入るのは困難。最初はそれを目的にしていても、ブローカーにだまされる。ブローカーはお金を取って逃げる」

 

シリア情勢への関心

 アルハムザ会長は、ロシア人がシリア難民に無関心なことに驚きつつ、概してシリア情勢のことを心配していることは認める。「ロシア人はシリア難民が近くに暮らしていることを知らない。私の同僚たちはシリア情勢にとても関心を持っているが、シリアで政治的に何が起こっているのかをあまり理解していない」

 ロシアには現在、約1万2000人のシリア人がいる。うち2000人は一時亡命を認められ、4691人はロシアで移民登録し、2666人は一時滞在許可証を受け取り、2029人は居住許可証を受け取った。ロシア連邦移民局広報課が9月4日にこれを発表した。

 1万2000人とは、在ロシア外国人総数の約0.1%だという。

 

ウクライナ難民とシリア難民

 「市民協力」委員会のスヴェトラーナ・ガンヌシキナ会長は、シリア難民の人数を1万人以下と考える。「2012年、国連難民高等弁務官事務所が難民条約に署名したすべての国の政府に対し、シリア人がそれらの国に合法的に入国したか否かにかかわらず、シリアへの強制送還にモラトリアムを導入するよう推奨した時、ロシア当局はシリア人に非常に忠実に対応し、書類の手続きを始めた。ところが、昨年、ウクライナ難民がロシアに押し寄せたため、シリア難民のことはほとんど忘れ去られた」

 ガンヌシキナ会長は、ロシアの対応がもっと良くなれば、シリア難民はヨーロッパに出国しようとしなくなると考える。「シリア人は、ヨーロッパよりも、ロシアのビザを取る方が安くて簡単だと話している。ここに来るシリア人は正式には難民ではない。ビザを持っているし、一部は働くために来た。だがもはや帰るところはない」

 ロシアへの大量のシリア移民の流入は起こっていないが、専門家によれば、今よりもはるかにたくさんのシリア難民を受け入れることがロシアにはできるはずだという。

 

シリア難民の国連データ

 2015年3月26日の国連のデータによると、シリアの人口のほぼ半数が、家を去ることを余儀なくされている。650万人が国内難民で、約400万人が出国した。シリア難民はトルコに170万人、レバノンに120万人(レバノンの人口は450万人)、ヨルダンに60万人、イラクとエジプトにそれぞれ20万人いる。