陸軍幼年学校の生活

ヴィターリイ・アンコフ撮影/ロシア通信

ヴィターリイ・アンコフ撮影/ロシア通信

ロシアに陸軍幼年学校があらわれたのは18世紀。ロシア革命の際に一旦閉鎖されたが、第二次世界大戦で復活した。スヴォーロフ陸軍幼年学校の70周年である2014年、陸軍幼年学校の歴史や人気の高め方を取材した。

 ロシアの作家ニコライ・レスコフ(1831~1895年)は、1880年の短編小説「陸軍幼年修道院」の中で、サンクトペテルブルク初の陸軍幼年学校の校長について、「もっともロシア人らしい人」の1人であると書いた。

 「ミハイル・ステパノヴィチの着こなしは、もっとも正しく、もっとも上品であった。当時の三角帽を形通りにかぶり、背筋を伸ばしてしっかりと立ち、職務の責任感に満ち、またそれを恐れない心持ちを表現するような、堂々とした威厳ある歩き方をしていた」

 ロシア革命以前の7~15歳の少年、特に軍人を目指し、陸軍幼年学校に通っていた少年にとって、これは手本であった。

 

勉強して自由思想に

 ロシア帝国に陸軍幼年学校が登場したのは1743年。サンクトペテルブルクや他の街の通りを、帯剣し軍服を着た少年が闊歩するようになった。学校に通う間ずっと、姿勢を保つことを学び、また上級生は皇帝が出席する閲兵式に参加していたため(現代のスヴォーロフ陸軍幼年学校の生徒は赤の広場のパレードに参加する)、隊列技術の習得に集中した。

 軍のエリートを養成する陸軍幼年学校では、倫理教育が特に重視されていた。生徒は隊列、砲術、エンジニアリング、武芸の基礎以外にも、文法、歴史、そして舞踏を学んだ。男は戦争だけでなく、婦人社会でのマナーも身につけておかなければならないと考えられていた。

 ただ、学習範囲が広がるほど、自由思想が強くなっていく。そのため19世紀末、多くの陸軍幼年学校では、政治的暴動などが発生した。「倫理的な堕落」に対し、学生は退学処分となっていた。

 

ソ連時代と孤児の支援

 国内では20世紀初め、歴史を大きく変えるようなできごとがたくさん起こったが、1917年10月革命の27年後、第二次世界大戦終盤の1944年には、陸軍幼年学校が再開した。

 1943年クルスクの戦いの後、ソ連は自国の領土を解放し、「解放される地区の経済復興」対策を講じたと、スヴォーロフ陸軍幼年学校の書類に記載されている。

 学校再開は困難な社会的課題解決の一助になった。ロシア連邦軍軍事・記念センターの正式な調査データによると、ソ連は戦争で約2660万人を失い、その大半が男性であった。戦後は父親を失った孤児であふれていた。学校は男性的な教育と家族の災難をある程度穴埋めできた。

 スヴォーロフ陸軍幼年学校にまず入学したのは、前線で亡くなった兵士の息子たちであり、大学入学に必要な知識を得ていた。ロシア帝国にはこのような学校が20校弱しかなかったが、ソ連には50校あった。

 

学校の人気


陸軍幼年舞踏会は重要な年次行事のひとつ。陸軍幼年学校は女子生徒の受け入れも始めたが、その人数は非常に少なく、ほとんどの場合、皆無である。そのため、舞踏会は生徒にとって、美しいお嬢様をダンスで魅了できる数少ないチャンスなのだ。=PhotoXPress撮影

 陸軍幼年学校の生徒はエリートと見なされていたし、それは現在でも同じである。2014年はスヴォーロフ陸軍幼年学校の70周年。だが関係者は1943年を創立年とは考えていない。「ロシア革命前の優れた陸軍幼年学校の伝統に沿って、スヴォーロフの生徒の教育が行われている」と、スヴォーロフ陸軍幼年学校モスクワ校の校長であるアレクサンドル・カシヤノフ少将は話す。

 70年の間、モスクワ校だけでも1万2000人強の卒業生を送りだしており、うち40人は将官に、8人はソ連とロシアの英雄になった。誰もが卒業後に軍人の道に進むわけではない。モスクワ校の300人強の卒業生は博士、修士、アカデミー研究員、教授になっている。

 それ以外の職業もある。ロシアのイーゴリ・イワノフ元外務大臣、またバンド「ゴーリキー・パーク」、「カリノフ・モスト」、「モラリヌイ・コデクス」、「スプリン」などを創設した、ミュージシャン、プロデューサー、監督のスタス・ナミン氏も卒業生である。

 教育レベルの高さと範囲の広さによって、今人気は高まっている。国防省は新たに学校をつくる計画も立てており、また多くの学校が陸軍幼年学級を開設している。

 スヴォーロフ陸軍幼年学校の心理学者エヴゲニヤさんはこう話す。「当校のプログラムは、肉体的な訓練や総合科目だけでなく、倫理や社交マナーにも重きを置いている。舞踏会のダンスやエチケットの基本も含んでいる」

 

陸軍幼年舞踏会

 陸軍幼年舞踏会は重要な年次行事のひとつ。陸軍幼年学校は女子生徒の受け入れも始めたが、その人数は非常に少なく、ほとんどの場合、皆無である。そのため、舞踏会は生徒にとって、美しいお嬢様をダンスで魅了できる数少ないチャンスなのだ。

 2013年の国際陸軍幼年舞踏会には、スヴォーロフ陸軍幼年学校トヴェリ校をロケ場所にしたテレビドラマ「陸軍幼年学校」の俳優が招かれた。ドラマは学校生活に関するもので、朝7時の起床、勉強、友だちとの関係、また未来の将校と女子の恋愛など、すべてが描かれている。

 ここの学校生活そのものだ。