バレエが好きなロシアの子供たち

アルチョム・ジテネフ撮影/ロシア通信

アルチョム・ジテネフ撮影/ロシア通信

ロシアのバレエは、世界でもトップクラス。バレリーナは、38歳で年金生活へ入り、ソリストになれるのは、バレエ学校の卒業生の5%にも満たないが、親たちは、子供をバレエ学校へ通わせ、わが子がボリショイ劇場かマリインスキー劇場の舞台に立つ日を夢みている。

 ロシアは、宇宙開発と並んでバレエでも誉れ高いが、誰もがバレエを観に行くわけではなく、劇場を訪れる人のうちバレエを観るという人は3%にすぎない(2014年4月の基金「世論」の調査)。ソ連時代、舞踊学校は競争率100倍という狭き門だったが、今もバレエの人気は高い。スクール・スタジオ「イルゼ・リエパ」の共同設立者であるマリヤ・スボトフスカヤさんは、同校は2歳半以上のすべての希望者を受け入れているとし、こう語る。「バレエほど体を育むものはありません。コンサートマスター付きの音楽の授業は、子供のクラシック音楽のセンスを養います。すべての動作が、美しく調和がとれており、それらは、身体とくに姿勢を形づくります」

 

天の恵み 

バレエに憧れる子供たち

たいへんな職業であるにもかかわらず、子供たちは、依然として芸術に取り組みたがっており、5~6歳の子供の16,4%は、バレエを含む芸術の道に憧れている(2013年5月の基金「世界の子供たち」の調査)。

 ロシアのクラシック・バレエといえば、ボリショイやマリインスキーといった一流の劇場が想い浮かぶ。その舞台に立っているのは、大部分がモスクワ国立舞踊アカデミーやワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミーの卒業生だが、それらの学校へは入ろうと思って入れるものではなく、柔軟性や身の軽さや跳躍や音楽性といった素質がものを言い、まさにその段階で厳しくふるい分けされる。

 スボトフスカヤさんは、こう語る。「98%の子供は自分のためにやっており、もっと先を目指したいと思っても、スターになれるのはごく少数。そんな子供を育てるのは、ピンポイントの作業です。この学校が開校して8年になりますが、モスクワ国立舞踊学校へ入れたのは5人の少女だけです」

 しかし、アンナ・パヴロワやガリーナ・ウラノワあるいはルドルフ・ヌレエフといった世界的に有名なロシアのバレエダンサーは、身体能力が元々ずば抜けていたわけではなく、経験豊富な舞踊の教師らは、大切なのはそれではないと言う。

 スボトフスカヤさんはこう語る。「子供に夢や希望があること、これが大切なのです。無理矢理やらせても、結果はついてきません。性格や規律も大事ですが、頑張って身体能力を伸ばすことも可能なのです。子供にそれがあれば、私たちは、その子にこのことを伝え、その子が同意すれば、その先もその子とともに歩み、バレエがその子の人生の中心となるようにするのです」

 

ソリストになれるのは卒業生の5%以下 

 38歳のナタリヤ・モストヴァヤさんは、かつてバレリーナだった。毎日何時間もバー・レッスンに励み、夢を抱いてウクライナからモスクワへ移り住んだ。切磋琢磨の日々、一流バレエ団への入団の試み、サーカスの演目やショーへの出演…。ナターリヤさんは、30歳のときに教師の道を選び、現在はバレエ学校「リバンベル」の校長として子供たちを教えている。けっして後悔はしていない。舞踊は彼女の選んだ道なのだから。本人は、こう語る。

 「親がバレエのディテールを理解しないで子供に踊らせようすることがよくありますが、子供にやる気も素質もないとやがて問題が生じます。親が無理強いさせると、子供の人生は滅茶苦茶になります。バレエ・アカデミーの卒業生でさえ、一流のバレエ団へ入れるのは5%にすぎず、ソリストになれる人はもっと少ないのです」

 競争はとくに女子の間で烈しく、男子の生徒は滅多にいない。たとえば、2006年の開校以来、スクール・スタジオ「イルゼ・リエパ」で学んだ男子の生徒は、15人を超えない。男子は、合理的に職業を選ぶ傾向があるという。なにしろ、大多数のバレエ・アーティストにとって、キャリアは、始まったと思ったらもう終わってしまうのだから。

 モストヴァヤさんは、こう語る。「23歳までにものにならなかったら、将来のことを真剣に考えなくてはなりません。教育畑へ移ったり、結婚をしたり、第二の専門を身につけたりするケースが多いですね。バレエダンサーは、活動期間がたいへん短く、38歳で年金生活に入ります」

 バレエに費やされた健康、時間、資金を回収できることはまれで、たとえば、モスクワでは、月3回のレッスンに500ドルほどかかる。

 

サークルへ通う子供の17%はダンスを選択 

 児童バレエ学校に代わるものとして、ダンス・サークルがある。モスクワでは数千を数え、その多くが無料である。2012年5月に実施された全ロシア世論調査センターの調査のデータによれば、子供を補習へ通わせている61%のロシア国民のうち17%(スポーツ系に次いで多い)はダンスへ通わせている。しかし、それを自分の職業にする子供は、ほとんどいない。アーラ・クレムリョーワさんは、10年ダンスに熱中したのちに16歳で大学へ入り、今は「ノーヴイ・ディスク」社の就学前および初等学校教育課長を務めており、こう語る。

 「とても楽しい日々でしたね。レッスンに明け暮れて、家でも踊って、おさらいをして、ビデオで学びもしました。その後、怪我をしてしまい、身体に負荷がかけられず、その気はあったものの、次のステップへ進めませんでした。今は、娘をダンスへ通わせようと思っています」