日本と同じ時間割
モスクワ日本人学校はロシアに駐在する外交官やビジネスマンの子供たちにとって、いわば「小さな日本」だ。
授業は、日本の文部科学省の規定によるカリキュラムに則して行われている。
「お父さんの仕事の任期が2〜3年、長くても4年くらいなので、ほとんどの生徒・児童たちは日本に帰ります。そして、帰国して日本の学校に転入して、すぐに慣れて勉強を続けていけるように、日本と全く同じスタイルで、同じ授業内容で教えています。それが父母の方々の希望でもあります」
モスクワ日本人学校校長 白川修三氏
白川修三校長は時間割を示しながら話す。「日本の同学年の生徒の時間割とそっくりで、ロシア語と英語が追加されています」
ここには、父親の任期が過ぎて帰国しても日本の学校にすんなり溶け込めるようにとの配慮がみられる。
この学校には四つの標語がある。その一つは「モスクワでの生活を豊かにする子」
文科省から派遣された日本人13人の教員と日本人・ロシア人数人の講師がこの標語の実現に尽力している。
生徒数について白川校長は「2013年度は小学生120名、中学生25名の計145名でスタートし、日本とロシアとの関係が良くなっているので、今後は多くなりそうだ」と話す。46年前の開校時は16人の生徒数だった。
4階は静まりかえっていた。そっと様子をうかがうと、黒髪の可愛い頭が教師の話にじっと耳を傾けていた。
水のはねる音がする。銀色の小魚が水槽で気持ちよさそうに泳いでいる。その隣の小さなプラスチックケースの中には亀3匹が飼われていた。
ロンドンのビッグベンを想像させるメロディーのチャイムが流れると、学童たちの歓声が静けさを破る。
昼休み。母親が愛情込めて作ってくれたお弁当を教室で食べた後、元気に校庭やホールで遊びだす生徒もいる。5階に上がると理科室や図書室と小さなオフィスのような職員室がある。
日本人学校の子供たちはロシアの同い年の子供たちとも交流している。日本人学校はモスクワの1535番校、1239番校と親交を結び、合同の文化祭やスポーツ大会、交換授業などを行っている。「知・徳・体だけでなく豊かな国際理解を持つ人になってほしい」と白川修三校長は話している。
日本国籍があり、1カ月の授業料9000ルーブル(約2万7000円)を納めれば、この学校に通うことができる。
本棚に置かれた生徒制作のマトリョーシカとコケシ=ニキータ・ショーホフ/Salt Images撮影
ロシアの子供と相撲も
日本人学校は国際交流の一環として昨年、ロシアの学校の子供たちと相撲を体験した学年もあった。
モスクワで生活する機会を生かしてアイスホッケーやバレエなどロシアのお家芸の習い事を子供に学ばせる家庭は全校生徒の半数以上に上る。
そこでもロシアの子供たちとの触れ合いの場が生まれている。
他の外国人学校と同居
日本人学校の生徒たちは日本語以外に英語を使う機会が多い。同じ建物にはスウェーデン、フィンランド、イタリア人学校がある。
① 意欲をもって学ぶ子(知)
② 仲良く助け合う子(徳)
③ 丈夫で元気な子(体)
④ モスクワでの生活を豊かにする子(国際理解)
各国の子供たちは広い校庭でみんな一緒に遊ぶことがよくあるのだ。
白川校長は「他国の文化や生活、習慣や行事等を知るきっかけになり、いろいろな違いを認め合うことができる」とみている。
再び、チャイムの旋律が流れると、校内は水を打ったように静かになる。学びやの窓から明るい日の光が差し込む。
棚に飾られたマトリョーシカ、漢字が書かれた布、四つの標語が掲げられたステージ、そしてきちんと並べられた可愛いジョギングシューズを陽光が照らしている。
閉まった扉の向こうから、子供たちの斉唱が聞こえてきた。授業は午後4時ごろまで続くという。毎日がこうして過ぎていく。
ニキータ・ショーホフ/Salt Images撮影
修学旅行は東欧へ
ロシアの生活・文化に慣れるため、さまざまな観光遠足が行われている。近所のスーパーマーケットまで観光地になる。
修学旅行もあり、5年生と6年生は「黄金の環(わ)」の古都やサンクトペテルブルクを巡る。中学生は東欧へ足を延ばす。
「平和学習を重視している。今年はリトアニアとラトビアを訪れた。来年はポーランド、再来年はベルリンを予定しています」と白川校長は語る。
今年10月には、同校生徒たちがモスクワの東部にあるイズマイロボで学習発表会を行い、自分たちの創作プログラムの演目を披露する。
4年後、この「小さな日本」は開校50周年の節目を迎える。本紙ではこれら折々の学校行事の様子も伝えていきたい。
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