必要なのは罰金ではなく運転マナー

9月1日から、ドライバーに対する新たな罰金が導入されている =タス通信撮影

9月1日から、ドライバーに対する新たな罰金が導入されている =タス通信撮影

9月1日から、ドライバーに対する新たな罰金が導入されている。罰則は、スピード違反、信号無視、飲酒運転、路肩走行など、46の違反に関して変更され、罰金の上限は、これまでの10倍にあたる5万ルーブル(およそ15万円)となったが、罰則がこれほど大幅に改められるのは初めてのこと。国家自動車監督局は、こうした変更により運転マナーが大きく改善されるとみなしているが、専門家らは、罰金を引き上げても乱暴な運転は改まらないとしている。

罰金の上限を10倍引き上げ 

 このほど発効した行政法律違反法の修正は、いくつかの部で構成されているが、第一部は、46の法律違反の項目に関する責任の強化についてもので、たとえば、時速80キロメートルを超えるスピード違反に対する罰金といった新たな項目も導入されている。ドライバーに対する罰金は、これまでの100ルーブル(約300円)以上5千ルーブル(約1万5千円)以下から500ルーブル(約1500円)以上5万ルーブル(約15万円)以下になった、とコメルサント紙は伝えている。

 再犯の場合は、罰金の額が増す。罰則義務の履行後(たとえば、罰金の納付後もしくは免許停止期間の満了後)一年以内に犯した違反が、それに該当する。5万ルーブルという最高額の罰金(さらに免許停止)が適用されるのは、飲酒運転再犯のケースだ。また、今回のルール改正により、免許停止が罰金とともに科せられるようになったが、これまでは、そうした併用は禁じられていた。

 ロシア国家自動車監督局のウラジーミル・クージン副長官によれば、新たな罰則の運用状況を分析したうえで、罰則をさらに強化するかどうかが判断されるが、同局は、ドライバーの意識が高まり、交通事故が減るよう、期待している。

 

ゆとりのなさと法意識の欠如 

 しかし、専門家らは、かなり懐疑的な見方をしている。たとえば、自動車所有者法的保護協議会のヴィクトル・トラーヴィン会長は、罰則を強化しても違反は減らないとして、こう語る。

 「ここ数年で何度も罰金が引き上げられましたが、相変わらず違反は起こっています。ドライバーを取り巻く環境がロシアと欧州ではまったく異なります。ロシア人は、山積する日々の問題に追われ、周囲に目を配る余裕がなく、運転を楽しむゆとりがありません。みんな、渋滞に時間を奪われ、その分を挽回しようとスピード違反を犯すのです」。  

 さらに、同氏は、ドライバーに限らずロシア国民全体に遵法性が欠けている点を指摘し、こう述べる。

 「ロシア人はあまり法律を遵守しない国民で、たとえば、賃貸住宅や贈与などの税金を払わないケースも見られます。心理学者らは、罰金の引き上げが有効なのは最初の一年間のみで、それ以降は、人々はそれに慣れるかうまく対応する、といいます。必要なのは、コミュニケーションや法律を尊重する文化そのものを向上させることです。法律をないがしろにする役人たちや汚職がなくならない限り、国民も同じように振る舞おうとするでしょう」。

 

昨年の死亡者数は28千人、負傷者数は25万人 

 「非常時法的心理的支援センター」のミハイル・ヴィノグラードフ所長も、同様の考えで、運転マナーを向上させるには、まず教育活動に力を入れ、道路上でのコミュニケーションの心理学を自動車教習所で学ばせる必要があるとし、こう語る。

 「こんなことがありました。ある女性の車が故障して、その車を路肩へ寄せるのを手伝っていた男性が、ほかの車の邪魔をする形となりました。道をふさがれた男性が自分の車を降り、その男性に喧嘩を吹っかけたのです。絶え間ない苛立ち、粗暴さ、そして、互いを敬う気持ちの欠如は、ドライバーに特有です」。

 ヴィノグラードフ氏は、心理学の授業とともに、運転免許証交付の手続きにも心を配る必要がある、とみなしている。

 国家自動車監督局の公式資料によれば、昨年の交通ルール違反の件数は、前年を1,4%上回るほぼ4300万件で、主に、運転手や乗客の過失によるものが増え、逆に、歩行者の過失によるものは減少している。

 また、昨年の国内の交通事故の件数は、およそ20万件で、死亡者数は2万8千人、負傷者数は25万人であった。2010年、専門家らは、ロシアにおける交通事故の85%は交通ルール違反によるもので、その4分の1はスピードの出し過ぎが原因であり、歩行者の過失によるものや悪路に起因するものはそれぞれ20%である、と算定した。