タス通信撮影
市場の整理、非犯罪化へ
マトヴェエフスキー市場の事件は、社会的反響を呼んだだけでなく、警察も刺激した。コロコリツェフ内相は、モスクワ市内の市場の非犯罪化、移民法順守 状況の調査、組織犯罪や民族犯罪の防止強化などが記載された命令に署名した。
その上でコロコリツェフ内務相は、内務省モスクワ総局のアナトリー・ヤクー ニン局長に対し、口頭で指示もしている。今後長期に渡って大規模な対策が取られることになると警察は説明している。
ロシア政府は市場が対立の温床になると考えており、整理しようとしている。これは大規模な作戦の始まりだ。
民族・市場問題自体はすでに20年続いている。最初にモスクワの市場を支配したのは、カフカース出身者からなる民族マフィアで、警察用語で「組織犯罪集 団(OPG)」と呼ばれていた。もっとも強力なのはグルジア、チェチェン、アゼルバイジャン、アルメニア、ダゲスタンの集団。2000年代には市場や販売 などのモスクワの世界で、南カフカース人の勢力が弱まり、北カフカース人が支配的になった。こうして汚職システムが完全にできあがってしまった。
管理できていない移民の流れ
モスクワで強まる民族間対立には、中央アジアや南カフカースなどを中心とした、外部からの移民の流れをあまり管理できていないこと、そして北カフカース の共和国という内部からの移民の流れがまったく管理できていないことの、2つの主な要因がある。
アジアからの移民は主に建設や都市整備に携わっているが、 カフカースからの移民は販売活動(担ぎ屋など)をしている。近年は数百ヶ所の大きな食料品市場や消費財市場などが閉鎖されているが、民族間対立への刺激は 続いている。
各民族の組織犯罪集団
大統領直属の市民社会発展・人権問題評議会の会員で、全国反汚職委員会の委員長を務めるキリル・カバノフ氏は、「大きな市場を牛耳っているのは、グルジ ア、ダゲスタン共和国、カバルダ・バルカル共和国の出身者だ」と話す。このような対策は、警察当局の合意がなければ進められないという。カバノフ氏による と、近年は中央アジア人だけでなく、中国人やベトナム人などの集団も現れ、モスクワの犯罪に深刻な影響を及ぼしているという。また市場で不法に稼いだ資金 を、犯罪に使っている。路上や市場の販売から得る収入が、組織犯罪集団の最大60%の資金を占めているという。
警察を支援者から敵に変える必要
ロシアの警察を、市場を支配する民族集団の支援者から敵に変えるためには、まず汚職をなくさなければならない。「あの事件で警察がならず者たちと穏便に 別れようとしたのはなぜか。市場を守る自分の組織の上司から大目玉をくらわないようにだ。そして自分たちにも小さな打算がある」。
今はこのようなシステム すべてを徹底的に変えようとしていると、カバノフ氏は説明する。汚職と戦うには、縦軸と横軸の対策が必要だ。
ロシア連邦社会会議のメンバーであるゲオルギー・フョードロフ氏はこう話す。「民族的犯罪集団の活動は、社会の否定的な反応を呼び、過激な民族主義グループの活動を活発化させ、最後には民族をベースとした深刻な衝突を引き起こす可能性がある」。
いかに民族的犯罪集団と省内を取り締まるか
内務省がいかに民族的犯罪集団と省内を取り締まるかに、多くのことが依存している。
「これから大規模な取り締まりが行われて、状況が健全化するだろう。 内務省の力と政治的意思があれば、十分に民族的犯罪集団に対抗できる。今の内務省の幹部の世代は、多くの情報に通じている。コロコリツェフ内務相自身が元 捜査官で、これまでの大臣とは異なり、現場からたたき上げてきた人だ」とカバノフ氏。
モスクワの警察の一仕事だけで、民族的犯罪問題を解決することが不可能なのは明白だ。問題はもっと幅広く、内部移民(もはや、移住登録証を導入する以外、ほかの対策は残されていないようだ)と外部移民に対処しなければならない。そして民族的犯罪集団と当局の汚職の取り締まりだけでなく、民族間の矛盾の度合いを低める必要があ る。
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