企業の慈善活動が活発化

トランスアエロの慈善プログラムは昨年、ロシア第3位に入った。=写真提供:航空会社「トランスアエロ」

トランスアエロの慈善プログラムは昨年、ロシア第3位に入った。=写真提供:航空会社「トランスアエロ」

単発の慈善活動が、大手企業の発展戦略に変わってきている。成功例の一つである、ロシアの航空会社「トランスアエロ」の活動を取材した。

 病気の子供たちが作ったアニメ「飛行機の短い物語」 

 「私はソーニャ・レヴェンツォワ。自分で風船についてのアニメを作ったの」と、病院のベッドに座っている、頭髪を刈り上げた少女は、カメラに向かって笑顔で明るく話した。

 このアニメ「飛行機の短い物語」は、モスクワとサンクトペテルブルクの腫瘍センターで治療を受けている子供たちが描いたものだ。色彩豊かなエピソードは、子供たちが戦っている怖い病気などみじんも感じさせない。陽気で面白いこのアニメのナレーションは、子供たち自らがつとめ、人間が初めて空を飛ぼうとする試みについて語っている。

 この5作のシリーズをつくるのに、約10ヶ月を要した。企画したのはロシアの航空会社「トランスアエロ」で、サンクトペテルブルクのアニメ・スタジオ「ダー(Yes!)」が参加している。

 続編についてもすでに計画されている。トランスアエロ社会プログラム・グループをまとめている、エレーナ・ジュラヴリョワさんはこう話す。「子供たちがこの作業で自信をつけたことが、結果から見えてくる。自分の必要性を感じることで、リハビリにも良い影響を与える。これは医師や心理学者も認めている」。

 「飛行機の短い物語」は、トランスアエロにとって象徴的で楽しいプロジェクトだが、困難な生活を送っている子供たちに向けられた社会政策の、ほんの一部にすぎない。このプログラムは、近年多くの賞を獲得している。トランスアエロは昨年秋、ロシアの格付け会社「レプタツィヤ(評判)」の調査にもとづいて、企業社会責任で最高ランクのAAAを獲得した。それより前の2009年には、ロシア管理者協会がピープル・インベスター賞をこのプログラムに授与している。そしてトランスアエロの慈善プログラムは昨年、ロシア第3位に入った。


バック・トゥ・ザ・フューチャー」プログラムの一環

 「未来に戻る(またはバック・トゥ・ザ・フューチャー)」と名づけられたこのプログラムには、航空輸送サービス、子供のリハビリ、企業の慈善事業という3つの要素がある。同社はロシアの大手慈善基金と協力し、腫瘍性疾患を抱える子供の治療およびリハビリ、そして孤児の社会化などを目指した活動を行っている。

 子供とその両親は、モスクワやサンクトペテルブルク、そして必要に応じて外国へ診察や治療を受けに行く際、航空券を無料で受け取ることができる。腫瘍性疾患児童患者支援慈善基金「ナスチェニカ」のジャミリヤ・アリエワ理事長はこう話す。「これはかけがえのない支援。航空券が高すぎて、多くの親が治療後の診察を年に何回も子供に受けさせることができなかったし、場所によってはまともな診察も受けられずに再発することも多々あった。今ではこういった親が電話で予約するだけで、航空券を完全に無料で受け取ることができる」。

 トランスアエロはリハビリ活動の一環として、腫瘍性疾患を経験した子供が、医学的、心理学的回復コースを受けられるような、子供向けの冬季、夏季キャンプを企画しているほか、モスクワの年中無休のセンターも支援している。このセンターでは、法律家や心理学者に相談したり、お祭りやさまざまな教室に参加したりできる。

 

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 約500人のボランティアが参加 

 すべてのプログラムに、約500人のボランティアが参加している。

 エカチェリーナ・トヴォゴロワさん(28)は管理職で、トランスアエロの慈善プログラムにすでに5年参加している。子供のお祭りの時には、音楽グループ「空の乗組員」のソロとして舞台に上がり、何かの慈善イベントがあれば、夜通し舞台セットを組み立てるなど、活動を決して選ばない。

 ボランティア参加者は、定期的に病院や腫瘍センターを訪れ、仮装ゲームや子供を交えた演出を行っている。「小さな子供が病気と闘っているところを見ると、日常の問題なんてちっぽけなことだとわかる。人生を違った目で見るようになるの」とトヴォゴロワさん。

 客室乗務員であるダリア・パニチェフさん(25)は、多くの人と同じように、1回きりの活動から始めてみた。そこでビッグ・ブラザーズ・ビッグ・シスターズという、孤児のためのプログラムと出会った。そして、孤児院で暮らすヴィーカちゃんという「妹」ができた。「1週間に少なくとも1回、多ければ何回も会っている。子供にとって大切なのは友好的な参加なの。限られた人々としか接していないから」。

 アリエワ理事長はこう話す。「トランスアエロは正しく適切に慈善団体との関係を構築していると思う。おかげで、我々の団体はきちんと計画を立てて、安定した活動をしていくことができるようになった。トランスアエロの人はとても優しく、当基金の問題を深く理解し、我々の協力関係が子供にできるだけ多くのプラスをもたらすように努めている」。

オリガ・プレシャコワさん

 モチベーターは女性社長

 航空会社「トランスアエロ」の最高経営責任者であるオリガ・プレシャコワさんは、同社の社会プログラムのリーダーであり、モチベーターだ。企業の慈善活動は単なる社会責任のプログラムではなく、団結を目指したポリシーの一部でもあり、この活動から従業員の長所や才能が見えてくると考えている。創造性が豊かなプレシャコワさんは、独創的なアイデアをどんどん出していく。例えばリハビリを受けている子供の日帰り旅行だ。トランスアエロの慈善活動に参加している乗員や付き添いが乗る特別旅客機で、他の街を旅することができる。