ハプニングだらけの政治家の個人SNS

ドミトリー・メドベージェフ氏が大統領に就任し、ロシアのブログ界で情報革命が起こった =コメルサント紙撮影

ドミトリー・メドベージェフ氏が大統領に就任し、ロシアのブログ界で情報革命が起こった =コメルサント紙撮影

ロシアの政治家がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使い、自ら情報を発信するケースが増えている。これはもはや大流行とも言える。だが、有権者との対話は、時に大きな問題に発展することもある。

フォロワーを大臣に任命 

 チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長は、インスタグラム(Instagram)でブログを書いているが、首長報道官によると、このクラスの政治家としてはもっとも引用されているのだという。最近驚くようなことが起きた。カディロフ首長は新たに市民社会相互活動省を設置したが、大臣には自身のインスタグラムのフォロワーである、アルビ・タマエフ氏を任命したのだ。

 ロシアの大手広告代理店エージェンシー・ワン(Agency One)のアレクセイ・ゴレスラフスキー社長は、カディロフ首長のインスタグラムが、政治家のSNSの中でもっとも成功していると考える。「カディロフ首長は、証明(証拠写真)と対話(コメントを書くだけで議論をするのは禁止)を組み合わせて、独特の空間をつくった。フォロワーを大臣に起用し、現代的民衆主義を進め、新しい人材を獲得し、これらによって質の高い人気の政治をつくろうとしている」。

 

大統領のツイッター本社訪問がきっかけ 

 2008年までは、ブログを書いているロシアの政治家は数えるほどしかいなかった。その後ドミトリー・メドベージェフ氏が大統領に就任し、ロシアのブログ界で情報革命が起こった。メドベージェフ大統領(当時)は、政治家にブログを書くよう、いつも呼びかけていた。

だが決定的となったのは、メドベージェフ大統領が2010年にアメリカを訪問した際、サンフランシスコにあるツイッターの本社を訪れ、アカウントを作成し、そこからツイートした時だ。「みなさんこんにちは!これは初めてのツイートです!」。

 

知事になれなかったミミズ君 

 これ以降政治家の間で、SNSが勢い良く広まっていった。ブログには2種類あった。報道官が代理で書きこむ公式のブログと、個人のブログだ。公式ブログの方では何の問題も起こらないが、個人ブログとなるといろいろなことが起こる。トヴェリ州(モスクワの北西約200キロメートル)のドミトリー・ゼレニン知事(当時)は2010年10月、クレムリンで行われたドイツ大統領の歓迎会の席で、サラダの皿の上にミミズを見つけたと言って、写真を撮り、ツイッターにその場で投稿した。ツイッターにはそのミミズ君のアカウントもすぐに現れ、この件で解任が決まったゼレニン知事の後任は、ミミズ君になると宣言した。ミミズ君は残念ながら、知事に選ばれることはなかった・・・

 

クラスノダールのマリー・アントワネット? 

 昨年2月には、別の知事がツイッターで有名になった。それはクラスノダール地方(モスクワの南1400キロメートルに位置する黒海のリゾート)のアレクサンドル・トカチョフ知事だ。

地元民が月給1万5000ルーブル(約4万5000円)は安すぎると知事に訴えたところ、知事は仕事を変えればいいじゃないかと助言したのだ。ユーザーはこれを聞いて、似たような話が歴史上存在することを思い出した。フランス革命の前、マリー・アントワネットはパンがないと騒いでいた農民に対し、「パンがないならブリオッシュ(菓子)を食べればいいじゃない」と言ったのだ。

 

「政治的娼婦」に「小者のろくでなし」と応酬 

 政治家がSNSで国民と会話することは、リスクが高すぎるのではないだろうか。ロシアの主要紙「モスコフスキー・コムソモレツ」はつい最近、下院(国家会議)の議員3人を、ウラジーミル・レーニンが考案した用語「政治的娼婦」に例えて、痛烈に批判した。与党「統一ロシア」の下院議員であるアンドレイ・イサエフ氏は、すぐにツイッターにこう書きこんだ。「小者のろくでなしたちよ、落ち着いてくれ。君たちなんてどうでもいい。だが特定の編集者と筆者の代償は厳しい」。ユーザーはこれが何をほのめかしているのかを推測して、大問題へと発展した。小者のろくでなしとはロシアのネット民のことで、代償とはジャーナリストへの脅迫であると捉えられたからだ。

 インターネット新聞「民間記者」の発行者であるイワン・ザスルスキー氏は、ブログからすべてが丸見えになってしまうと考える。「誰でも間違いはするものだ。問題は書いている人がいくら良い人を演じても、その人の怒りや愚かさが読みとれてしまうということだ。ネガティブなことを書かず、人に嘘をついていなければ、大失敗することはないだろう」。

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