モスクワの地下鉄駅は、中心部は深い場所に位置し(地下20㍍以上)、郊外では浅い場所に位置するのが特徴である。たとえば、パルク・ポベーディ駅は73㍍、マリイナ・ローシャ駅は72㍍、チェーホフスカヤ駅は62㍍、スレテンスキー・ブリヴァールは60㍍という深さである。ただし、1930年代に最初に作られたいくつかの駅、クロポトキンスカヤ(13㍍)、アレクサンドロフスキー・サード(7㍍)などはその例外となっている。
地下鉄駅は、浅い場所に作った方が容易であり、費用も安く済むが、モスクワ中心部では当時、そうすることが不可能であった。第一に、モスクワで大々的な建設事業が始まったこと。第二に、開削工法は、強固で乾燥した土壌でしか行うことができないのだが、モスクワ中心部には多くの地下河川や流砂がある、つまり水を多く含んだ土壌が多いということ。そして第三に、1930年代末にはすでに、地下鉄駅には防空壕としての機能を備えておくべきだということが明白だったことである。
現在、深い駅が建設されるのは、過密な建設などによる地盤沈下のリスクがある場所だけである。大環状線の複数の駅は活動が盛んな地区の下にあることから、かなり深い場所に建設する必要性に迫られた。加えて、最近作られた駅も、避難場所としての機能は維持されている。