1965年に開発されたオフロード車「エルマーク」
V.Golovachev/Sputnik/SputnikMVTU-2
Archive photo柔らかくぬかるんだ地面を走れる低圧の柔らかいタイヤを用いたオフロード車のコンセプトは1950年代に米国で生まれた。冷戦で2つの超大国の緊張が高まる中、ソ連は軍用に転用して強力な兵器となり得る車両の生産を米国のみに許しておくわけにはいかなかった。
そこでソ連の技師らが1958年末までに開発したのが3輪の全地形対応車(ATV)だ。これは1953年以来ソ連で生産されていた4輪駆動の軽トラックGAZ-69をベースにしていた。
GAZ-69
Sergey Korovkin 84 (CC BY-SA 4.0)ベースとなったトラックはコンバーチブルだったため、新たに開発されたATVもその特徴を引き継いだ。エンジンやトランスミッションなどの重要な部品も元のトラックから借用されていた。主な違いは車輪とサスペンションだ。元のトラックは一般的な4輪だが、このATVは3輪で、最高レベルのオフロード走行性能を実現するため、低圧で弾性の高い巨大なタイヤを履いていた。
この設計は部分的に成功し、MVTU-2は柔らかい土地を簡単に走れた。しかしより大きな速度が必要となる舗装路での走行には難があり、揺れも酷かった。
ZIL-132C
Archive photo1964年、ZIL工場の技師らがロリゴン・タイヤを持つATVを製造した。この車はZIL-164とZIL-157Kトラックを組み合わせたものだった。
ZIL-164
Tolyatti Technical Museum/ShinePhantom (CC BY-SA 3.)ZIL-157K
Mikhail Tereshchenko/TASS独創的なのは、それぞれ直径1メートルある4輪のロリゴン・タイヤを装備したことだ。驚くべきことに、前輪にはサスペンションがなく、車体にしっかりと固定されていた。
この設計によって車は前輪で方向転換をすることができなくなり、進行方向はそれぞれ個別のサスペンションを持つ後輪の角度を変えることで変えた。ブレーキがかかるのは前輪だけで、後輪にはブレーキがなかった。
大胆な設計だったが、試験を通過することはできなかった。このATVは運転しにくく、設計上の欠陥のためハンドル操作が難しかった。プロジェクトはボツとなり、試作品も解体された。
ソ連の技師が開発したテラクルーザーの中で特に有望だったのが1963年に製造されたET-8だ。
外見は米国製のFWD MM1テラクルーザーとほとんど瓜二つだ。ただし航空機燃料を使う8気筒航空機エンジンを動力とする米国のモデルと異なり、ソ連のものはウラル375トラックから借用した180馬力のガソリン・エンジンを動力としていた。
ウラル375D
LutzBruno (CC BY-SA 3.0)ソ連のモデルは直径1.2メートルのロリゴン・タイヤを前後4輪ずつ、計8輪有していた。
車室はロシア製のAT-S砲兵トラクターのものを使っていた。
このATVの重さは12トンで、後部に最大8トンの貨物を載せることができた。
試験では比較的良い結果を残したものの、この車はあまりに重く、生産コストもかさむことが分かった。結局量産されずに終わった。
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