1981年8月8日、255航空部隊のある乗員が、油田開発の調査の一環としてヘリコプターMi–6で飛行を行った。飛行の合間にヘリコプターはハラムプール(ヤマロ・ネネツ自治管区、モスクワから2,400㌔)の小基地で給油を行った。ヘリコプターは貨物を積載して飛び立ったが、5分後に上空150㍍で両方のエンジンが停止した。
そして5人の乗員が、タルコサレ市の南東60キロにある沼地にヘリコプターを緊急着陸させた。乗員に犠牲者はなかったが、機体は深刻な損傷を受けた。
事故の調査では、給油の際にタルコサレの調査員らが誤って、ガソリンと一緒に水を注入してしまったことが判明した。これがエンジン停止の原因となったのである。
40年の間、ヘリコプターは沼から引き上げられることはなかったが、尾部とエンジンは盗まれた。ヘリコプターを撤去するという計画に関するニュースすら、この40年の間に報じられることはなかった。
しかも、ロシアで森の中に航空機が放置されていた例は、このヘリコプターMi–6だけではない。モスクワから自動車でわずか1時間ほどの場所にあるロブニャ市の小住宅地ルゴヴァヤには、1949年に製造された「ククルーズニク」(トウモロコシ男の意でフルシチョフの異称)と呼ばれたAn–2が放置されていたが、この飛行機は地元のカフェの経営者が購入し、設置した。
さらに1974年に製造されたTu–134はウラジオストクから50㌔の海岸にあるかつてサマーキャンプがあった場所に設置されている。地元のメディアによれば、地元の企業家が購入し、この地に運んできたとのこと。企業家はこの飛行機を修理し、そばにホテルを建設する計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で計画は変更を余儀なくされた。そこで現在は地元の住民や観光客が飛行機を見学にきて、家族で写真撮影をしているだけだという。
放置された航空機の中で最大のものといえば、航空機と船を合体させた地面効果翼機「ルーニ」である。ダゲスタン共和国(モスクワからおよそ2,000㌔)デルベントにあるカスピ海沿岸に打ち捨てられたままとなっている。
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地面効果翼機は1983年にニジニ・ノヴゴロド(モスクワから422㌔)の工場「ヴォルガ」で建設が開始され、1986年には進水式が執り行われた。「ルーニ」は敵の艦船にミサイル攻撃を行うもので、最大時速は500㌔であった。
1990年、「ルーニ」は試験運用に移行したが、その1年後にソ連邦が解体したことにより、財政難となり、プロジェクトは中断された。地面効果翼機は、長年にわたり、テストが行われていたカスピスク市に置かれていた。2020年7月、「ルーニ」は、展示されるため、デルベントにある「パトリオット」公園の敷地内に移された。しかしこの公園がいつ完成するは不明であるが、それでもすでに地元の人々やロシア各地からやってくる観光客たちは、この「カスピ海の怪物」とともに写真撮影を行っている。
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