忘れられたソ連の軍用車両4選

 これらの車両が見られるのは、モスクワ郊外の軍事博物館だけだ。

 軍需工場ではソビエト軍の戦闘車両だけでなく、上級将校用のオープンカーやオフロード車も生産された。こうした自動車の中には長年にわたってパレードに参加したものもあれば、水上や起伏の激しい土地を快適に進む手段として用いられたものもあった。

 現存する最後の車両は5月9日の戦勝記念パレードにおいて現役で働いている。もっと近くで見たければ、モスクワ郊外のクビンカ(モスクワから60キロメートル)の軍事博物館を訪れよう。

UAZ-3172(プロジェクト「ヴァゴン」)

UAZ-3172「ヴァゴン」

 70年代末から技師らは有名なUAZに替わる車の開発に取り組んでいた。

 「ヴァゴン」は四輪駆動で、車輪間のデフロック、線条入りのドライブトレイン、リダクションギアを持ち、地上高は33センチメートルで、ロングストロークのサスペンション、100馬力のエンジンを搭載していた。

 「70年代末の試験では、オフロード車の走破性は当時最良の外国製品に引けを取らなかった。80年代末までに、プロジェクトは量産の準備ができたが、ソ連崩壊でプロジェクトに終止符が打たれ、現在は数少ないUAZ-3172の車体がクビンカの博物館にあるのみだ」と軍事科学アカデミーのヴァジム・コジュリン教授はロシア・ビヨンドに話す。

水上を駆ける「ヤグアル」

全地形対応車UAZ-3907「ヤグアル」

 80年代半ば、ソ連の技師らは空挺軍のために水上を走れる全地形対応車UAZ-3907(プロジェクト「ヤグアル」(「ジャガー」の意)を開発した。

 コジュリン氏によれば、技術的にヤグアルは風浪階級2に耐えられるはずだった。しかも試作品の試験の際、この車両は完璧な水陸両用車であることが証明された。水上から揚げる必要があるのは燃料補給の際だけだった。

 プロジェクトは万事順調に見えたが、ヤグアルを量産する資金が確保できず、ソ連崩壊によってヴァゴンと同様に立ち消えとなった。

TPK LuA3-967

水陸両用車 TPK LuA3-967

 過去のプロジェクトと異なり、TPK LuA3-967は量産にこぎ着け、ソ連空挺軍と医務班に配備された。この水陸両用車は、山の河川を渡って戦場から負傷兵を退避させたり、弾薬や武器、その他の物資を輸送したりする目的でソ連軍に導入された。

 興味深いのは、車両の中央に跳ね上げ式のステアリングコラムがあり、運転手は敵の銃撃を受けた際に半ば横になって身を隠しながら車を操縦することができるという点だ。

ZiL-115V 

ZiL-115V

 この車は5月9日の戦勝記念日に軍指導部の高官が乗るためのもので、わずか3台しか作られなかった。一台は国防相用、もう一台はパレードの指揮官用で、最後の一台は故障や不測の事態に備えてスパスキエ門のそばで待機していた。 

 オープンカーは「信頼性第一」で作られている。技師らは自動車に点火装置を2つ取り付け、車内にはアキュムレータを2つ搭載した。しかも、ZiL-115Vはパレードに相応しいよう一連の改良を経た。マイク台、トランクの無線装置と軍専用の無線システム、さらにはパレードの指揮官が快適に乗車できるよう、床暖房まで装備された。

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