「イスカンデルM」はどんな兵器か

テック
イーゴリ・ロジン
 これらのミサイルは核兵器に相当する威力を持ち、500キロメートル以内の標的を破壊できる。

 ロシアの戦域弾道ミサイル複合「イスカンデルM」は国家防衛を保証する極めて重要なシステムの一つだ。

 イスカンデルには核兵器に相当する威力を持つミサイルが2発標準装備されている。だが、これらのミサイルは攻撃地点を放射能汚染しない。

 イスカンデルは可動式の機動的複合で、敵の攻撃システムから届かない地域へ極めて短時間で移動させることができる。しかも、ミサイルは500キロメートル先の標的まで、まるで弾道ミサイルではなく巡航ミサイルであるかのような複雑な軌道を描いて飛び、敵に打撃を加える前にデコイをばらまいて唯一の弾頭を敵の防空システムが破壊できないようにする。

 現在イスカンデルMの他にこれが可能なのは、遥かに威力の大きな戦略ミサイル「トーポリM」「ヤルス」「サルマト」だけだ。

イスカンデル旅団を構成する兵器は何か

 戦域弾道ミサイル複合イスカンデルMの旅団には、合わせて51の装置や車両等が含まれる。発射装置12基(ミサイルを2発ずつ搭載)、12台のミサイル運搬車両、11台の司令車両、14台の生命維持車両、1台のメンテナンス車両、1つの情報準備ポイントだ。高精度誘導ミサイル、武器一式、訓練用装備も含まれる。

 なお、イスカンデルMは7種のミサイルを使用できる。これらのミサイルは外見が全く違わないが、10種類もの弾頭を搭載できる。

 「その中には着弾すると54発の爆弾に分かれるクラスター爆弾やフガス榴弾、地中貫通爆弾、燃料気化爆弾、さらには核弾頭も含まれ、イスカンデルの各種ミサイルに搭載できる」と「独立軍事論評」紙の編集長ドミトリー・リトフキン氏はロシア・ビヨンドに話す。

 この専門家の指摘によれば、イスカンデルは攻撃地点を放射能汚染しない高威力のミサイルだけでなく、数秒で500キロメートル先の標的まで到達する核ミサイルも搭載できるという。

 「本質的に、イスカンデルはそのミサイルの『詰め替え』の速さゆえにロシアの現代兵器の中で最も恐ろしいものの一つになっている」と同氏は指摘する。

 リトフキン氏によれば、ミサイル複合はある時は2発の長距離巡航ミサイルを搭載している。これは敵の地上インフラを破壊できるだけでなく、対艦ミサイルとしても使用できる。 

イスカンデルの配備地点と任務

 戦域弾道ミサイル複合イスカンデルM大隊はカリーニングラード州、レニングラード州、北コーカサスとクリミアに配備されている。

 リトフキン氏が言うように、「NATOの脇」に配備されているわけだ。

 「国防省がイスカンデルをカリーニングラード州に配備したのは、米軍が垂直発射システムMk 41を備えた防空システムをポーランドとルーマニアに配備したことがきっかけだった。これらのシステムは、弾道弾迎撃ミサイルの他、巡航ミサイルBGM-109トマホークも発射できる。ロシアとヨーロッパの全核施設と非核施設とを簡単に破壊できる兵器だ。そこでロシアは新たな脅威を無力化する必要に迫られたのだ」とリトフキン氏は話す。

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