ロシア vs. NATO:精鋭特殊部隊の将校になるには何が必要か

Alexander Vilf/Sputnik
 血と汗、そして(時には)骨折が、特殊部隊最高の将校の一人となるに相応しいことを示そうとする者たちの試練に必要不可欠な要素だ。

 あなたは朝目覚めて、もう会社勤めに耐えられないことを悟る。そこで人生を劇的に変えて、並の徴集兵ではなく、海軍や空軍のエリートになることを決意する。

 これを実現するには何が必要だろうか。

 軍の精鋭部隊の一員となるために最も重要なのは、申し分ない健康状態にあることだ。中近東やアフリカ、中南米、南アジアで対テロ作戦を行う精鋭特殊部隊のポストをめぐってトップアスリートたちと競争するには、心拍から膝の半月板まで、すべてが万全の状態でなくてはならない。

ロシアの赤ベレー

 赤ベレーはロシアの精鋭特殊部隊将校のシンボルだ。これをかぶる権利は、血と汗を流して得られる。赤ベレーの将校はロシア国内外の紛争地域や対テロ作戦に真っ先に派遣されるからだ。

 赤ベレーを手に入れたい者は、休憩なしに3つの試験に連続で合格せねばならない。

 最初の試験は、27キログラムの背嚢を背負い、AK-74M小銃と水筒を腰につけての10キロメートル・クロスカントリーだ。レースのポイントは、完全装備で陸上や水中の障害物を突破する間、次の射撃場での射撃実習と3人の特殊部隊教官との10分間の対戦に臨む体力を温存しておくことだ。

 クロスカントリーでは、人里離れた沼地や川、森を駆け抜けることになる。あなたはここへ100人の候補者とこの場所へ連れて来られ、実戦で任務を遂行する能力があるか否かを見極めるため、プロの兵士らによって訓練用の手榴弾を足元に投げられ、あるいはすぐそばの地面に発砲される。

 この「サディスト」たちは、あなたに並走して罵詈雑言を浴びせてくる。または、「やる必要はないんだ。諦めろ。一言言うだけで、街の温かいベッドに戻れるぞ」などと耳元に囁いてくる。この心理的な圧力は、世界中の特殊部隊の訓練に付きものだ。地上で最も「やくざな」男の一人になりたいと望む以上、これは越えなければならない壁である。

 このランニングを終えると、候補者は真っすぐに射撃場へと向かい、それまで森を駆け抜けながら携帯していたAKで、いくつもの的を撃たなければならない。この試験の鍵は、小銃を「清潔に」保って沼や林の中を進み、いつでも敵を撃てるようにしておくということだ。ランニングの際に小銃を汚してしまってクリーニングが必要だというようでは、即刻落第である。

 だが、もし小銃が正常に作動し、射撃場のすべての的を射抜けたとしても、最もハードな最終試験が待ち受けている。10分間の総合格闘技対決だ。 これは終日続く試験の中で最もハードな局面だ。

 クロスカントリーおよび射撃試験という過酷でストレスの溜まる試練を乗り越えたあなたは、リングに上がる以前に気絶寸前である。

 この試験では、リングで3人のプロの戦士と立て続けに対戦することになる。あなたは10分間連続で戦わなければならないが、あなたを叩きのめすよう命じられた男たちと戦う合間に休憩する時間は一切与えられない。したがって骨折やノックアウトがこの試験には付きものだ。

 10分が経過するまで息をし続け、自分の脚で立ち続けることができたなら、あなたは赤ベレーを授けられる。晴れて精鋭特殊部隊の一員となるのだ。

 試験のいずれか一つでも落としてしまったなら、次の年の再試験のチャンスを待たねばならない。

英国特殊空挺部隊(SAS)

 SASのモットーは、「敢えて挑む者が勝つ」だ。選抜試験の初日に教官らは候補者にこう言う。「我々は君たちの中から最も優秀な者を選抜するのではない。君たちを殺しにいく。生き残った者が教育を続けるのだ。」

 候補者らはある軍事基地に連れていかれ、真夜中に試験が始まる。彼らは起こされ、トラックの荷台に放り込まれる。トラックは未知の場所へと向かい、そこで彼らを降ろす。

 彼らは自分たちがどこにいるのか全く分からない。地図はなく、彼らを導く者はいない。100人の歩兵と犬を連れた警官らが彼らに続くだけだ。装備は27キログラムの背嚢と小銃、水筒だ。目標は誰にも見つかることなく20時間以内に基地まで戻ることである。

 周辺住民は「見知らぬ者」を見かければ警察に通報するよう命じられている。そのため、40マイルの行進は「忍耐」と呼ばれている。

 基地に戻った候補者は、直ちに4マイル走を始め、30分以内に完走しなければならない。

 候補者は、自分たちがいかなる状況でも生き延びられることを証明しなければならない。

 もし捕まってしまえば、警官に訊問される。 彼らはあなたの指を折ったり爪に針を刺したりはしないが、椅子に縛られ、あなたが観念して彼らの知りたい情報を吐くまで、めった打ちにされることは覚悟しておこう。これはSASの隊員の資質を試すのに欠かせない心理テストの一部だ。

 もし40マイルの行進を無事完走し、訊問にも耐えたなら、SASの一員となる資格を与えられる。

米国デルタフォース

 米国デルタフォースの一員となるためには、候補者は、現在の紛争地域でのあらゆる困難を肉体的・精神的に乗り越える準備ができているか否かを見極めるための数々の選抜試験に耐えなければならない。

 デルタフォースの訓練キャンプの主眼は、「あなたを強くするためにあなたを壊す」ことだ。デルタフォースの定員は限られている。したがって、選抜試験と訓練では、身体的な苦痛に対処して克己することだけでなく、ライバルたちよりも強く、優れていることを示すことも重要となる。

 選抜は候補生の身体能力の試験から始まる。特殊部隊の将校を目指す者にとっては標準的なプロセスだ。あなたはいくつもの体力テスト(限られた時間内での2マイル走、完全装備の着衣状態での100㍍水泳、何回もの懸垂、腕立て伏せ、スクワット、腹筋運動)を受けなければならない。

 各運動は極めて短い休憩時間を挟んで次から次に行われる。ロシア軍の赤ベレーの試験と同様、このテストのポイントは、あなたの体力や持久力を試すだけではなく、壊れそうになる限界まであなたの身体を追いやるという点にある。将校らからは「お前のような糞たれはママのお家にいるべきだった」などと怒鳴られる。彼らがあなたの走りや運動を加速させる。このプロセスであなたの血圧や心拍数は上がり、あなたは卒倒寸前の状態になる。肺は内側から破裂しそうになる。この「基本選抜テスト」が終わって30分間は呼吸を整えることも難しい。心臓を落ち着けようとするが、激しい鼓動は止まらない。気分は最悪だ。

 第一ステージをクリアした候補者は、一連の陸上ナビゲーション・コースを受験する。これは、英国のSAS候補者に課される、かの試験に似ている。候補者らは真夜中に未知の土地へ連れて行かれ、基地まで18マイルの道程を、18キログラムの背嚢を背負って歩いて帰らなければならない。どことも知れぬ辺鄙な場所で、自力で生き延び、基地まで戻らなければならないのだ。この試験もまた時間制限があり、タイムオーバーした時点で落第が決まり、これまでのすべての努力が水の泡となる。

 このナビゲーション試験をクリアした候補者は、「訓練前」の最終試験を受ける。これは、極めて難関の多い土地で20キログラムの背嚢を背負って40マイルを行進するというものだ。

 なお、各試験の制限時間を書かなかったが、これはそれが機密情報であり、デルタフォースの司令部と、選抜試験を監督する将校にしか知られていないためである。

 すべてのステージを突破した候補者は、危険な状況や戦場での砲火の中でどのように行動するかを見極めるための心理テストを受ける。

 全試験に合格した候補者は、最後にオペレーター・トレーニング・コースを受講する。これは、合格者を外国での実際の対テロ作戦に備えさせるための集中トレーニングで、6ヶ月か、あるいはそれ以上続くこともある。このコースは、火器訓練、索敵殲滅作戦、救助作戦、解体・破壊コース、発展ナビゲーション・コースなどから成る。半年間のトレーニング・コースの間、将来の特殊部隊員は、友人や親族とほとんど、あるいは一切連絡を取らないように命じられる。彼らの技術の大半は、今後外国での極秘任務で使われることになるからだ。 あらゆる選抜試験とトレーニングを乗り越えたデルタフォースの将校は、世界で最も優れた精鋭特殊部隊員の一人となるのである。  

 どの試験が最も過酷に思えるだろうか。コメント欄にぜひ意見を寄せて頂きたい。

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