ロシア人がヴォルガ車に夢中になる理由

テック
ボリス・エゴロフ
 ソ連で最も人気のあった自動車の一つであるヴォルガは、ウラジーミル・プーチン大統領や宇宙飛行士ユーリー・ガガーリンのお気に入りでもあった。東ヨーロッパではこの自動車にまつわる暗黒都市伝説さえある。

 ゴーリキー自動車工場(GAZ)が設計したヴォルガは、ソ連時代最も人気のある自動車の一つであった。

 ソ連のクルマ好きにとってこの自動車は夢であった。大きくてスペースに余裕があるヴォルガは「大衆車」ジグリよりも居住性が高く、豪華だったからだ。

 しかし、この自動車を持てたのは、限られた人だけであった。この高級車はソ連各共和国の官僚や部門、有名芸術家、俳優、作家などからの予約でいっぱいであったからだ。

 1956年に発表されたGAZ-21は、ヴォルガ・シリーズの最初のクルマである。黒く塗られた青いインテリアの車体は1961年に最初の宇宙旅行を果たしたユーリー・ガガーリンに贈られた。この自動車はフランスから贈られたマトラ・ジェット6とともに彼の愛車となった。

 現代においてもヴォルガ好きは多く、プーチン大統領もその一人である。2005年には彼はアメリカのブッシュ大統領をGAZ-21に乗せて運転した。

 黒く塗られたヴォルガはKGBによっても使われ、ソ連国家保安委員会(KGB)の陰のシンボルであった。KGBに最もよく使われたのがGAZ-24-24で、このクルマは時速170キロまで加速出来、ソ連最速のクルマの一つであった。

 KGBの恐怖はヴォルガを巡って多くの伝説を生んだ。1960年から1970年にかけて、「黒塗りのヴォルガ」という暗黒の都市伝説がポーランドやハンガリーで流行した。聖職者、僧侶、悪魔崇拝者や吸血鬼や悪魔自身までもがこのクルマを運転して、小さい子供を誘拐し、内臓を西側やアラブの金持ちに売るというものだ。

 GAZ-24-95は軍や警察用やソ連指導部の狩猟用の新型オフロード車として作られた。しかし構造が複雑すぎて、製造や補修が簡単でなかったため、日の目を見たのはたった5台だけであった。

 GAZ-3102は、リムジンタイプに乗るには位が低いが、ある程度の居住性と安全性を求む限定数の中級官僚向けに生産された。

 最新のヴォルガ・サイベルは2008年に登場した。しかし不運にも、世界経済危機と国内重要の低下からこの計画はすぐに中断し、ヴォルガ車の生産は2010年に打ち切られた。