プーチンの乗り物:大統領が使用する交通手段あれこれ

シリアのへメイミーム空軍基地へ向かうプーチン大統領の専用機

シリアのへメイミーム空軍基地へ向かうプーチン大統領の専用機

ミハイル・クレメンティエフ/Sputnik
 ロシア大統領総務局には、 何十という乗り物、交通手段がある。大統領専用機、ヘリコプター、リムジン、ヨット、ディーゼル船、モーターボート、それに双胴帆船さえ一隻ある。

飛行機とVIPヘリ

 超過密スケジュールと、「梃子でも動かぬ」と称されるモスクワの渋滞のせいで、プーチン大統領は、自動車からヘリコプターに“乗り換える”ことを余儀なくされた。

 モスクワでは大統領は、ロシア製ヘリコプター「Mi-8」でのみ飛行している。ただしこれは、「空飛ぶオフィス」として改造された特別仕様だ。その内部には、巨大なプラズマディスプレイ、革張りのサロン、多くの機器がそなわっている――コンピュータ、コーヒーメーカーから冷蔵庫にいたるまで。

ウラジーミル・プーチン大統領がウラジーミル州に到着、2015年

 長距離の移動の場合は、主な「エアフォースワン」となるのは、1996年以来、旅客機Il-96の改造版だ。アレクサンドル・コルジャコフ元大統領警護局長は、そのサロンの「インテリアの素晴らしさ」について書いている。このサロンは、ロシア側の示したデザインにもとづき、スイスで設えられたものだ。「この新しい飛行機では、クレムリンにおとらず快適に働き、居住することができた」と、コルジャコフ氏は述べている。

 2013年には、2機のIl機が、1機当たり52億ルーブル(約97億円)の価格で購入された。他の大統領搭乗機としては、ロシア製のTu-214、スホーイ・スーパージェット100、ビジネスジェット「ファルコン」、Airbus A319がある。

 もっとも、総務局は、大統領機のインテリアを公開しておらず、「これ見よがしの贅沢」に関する噂を否定している。機内にあるのは、ウラジーミル・コージン総務局長官によるとワーキングエリア、レクリエーションエリア、任意の省庁との通信設備、電話会議の設備、「司令室」(核兵器管理システム)だという。

 スーパージェットのインテリアには、リビングルーム、ベッドルーム、シャワー、バスルームがある。2016年には、登録リストによれば、大統領搭乗機として、航空機37とヘリコプター18を数えたが、プーチン大統領以外にも、首相、両院議長、裁判所長官、軍人など多くの高官が使用している。

自動車

ロシア製政府専用車「コルテジ」

 2018年初め、ロシア大統領はやっと、外車からロシア製政府専用車「コルテジ」に乗り換える。これまでプーチン大統領は、メルセデス・ベンツS600プルマンに乗っていた。この車種は、1996-2000年製を含め、11台が登録されている。

 今までロシアの自動車メーカーは、十分な防御能力をもつ特殊装甲車は生産していなかった。もっともそれは、公用車の話だが。

 プーチン大統領には、個人的なコレクションもあるが、それについては彼はあまりしゃべらないし、それらの車でモスクワを走ることもない。それらはラリー向きで、ほとんどがソ連車だ。モスクワ州ノヴォ・オガリョヴォの官邸のガレージに収められている。例えば、1956年製「ヴォルガ」、1972年製のウクライナの「ザポロージェツ」、1970年製の赤い「ジグリ」など。

1956年製「ヴォルガ」

大統領のヨット

 水上の移動用には、ヨット2、ディーゼル船3、モーターボート7、双胴帆船1が使用可能だ。ただ、これらすべては、事実上、希望者は誰でも、ロシア大統領総務局のサナトリウム「ルーシ」でレンタルできる(大統領のヨット「チャイカ」は例外)。

 「チャイカ」は、トルコ製の中古で、6つの船室があり、スパとスポーツジムを備える。これを購入したのは2011年のことで、お値段は、リストによると15億ルーブル(約28億円)だった。購入の目的は、80年代初めに建造されたディーゼル・ヨット「カフカス」を代替し、「予算を節約する」ためだった。

大統領のヨット「チャイカ」

 「ディーゼルエンジンが始動するとすぐに、デッキは不愉快で有毒な煙の雲に包まれた。いや、ひどかった!ディーゼルの排気だ。騒音その他の欠点については、言わずもがな」。コージン総務局長官はこう書いている。

 別のヨットは、イタリア製のAzimut 38(電動モーター駆動)で、2000万ルーブル(約3800万円)で購入。床はチーク材で、内装は皮革と着色強化されたオークによる。1時間のレンタル料は、1万ルーブル(約1万9千円)。

バイカー・プーチン

 2010年、全世界は、プーチン大統領のもう一つの顔――バイカー――を目にした。その年、プーチン首相(当時)は、クリミア半島のセヴァストポリで、Harley-Davidson Lehman Trikesに乗ったバイカーたちの先頭を走った。7年後には大統領は、カワサキのバイクを持っているが「なるべく乗らないようにしている」と口をすべらした。その後、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「バイカー神話」を否定し、プーチン大統領には自分のバイクはないと断言した。

 2010年にプーチン首相(当時)は、クリミア半島のセヴァストポリで、Harley-Davidson Lehman Trikesに乗ったバイカーたちの先頭を走った。

 「もっとも、特別な目的のためのガレージ(公費で維持されている、大統領警護局の当該部署)には、カワサキのバイクが何台かある」と、ペスコフ報道官は付け加えた。

 「だが、プーチン大統領が個人的に使っているバイクはないし、大統領がバイクに乗ることもない」。バイクに乗るのは大統領警護局の隊員たちで、大統領は、ただバイクを見に来るだけだという。

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