カンガルーは左利きだった

アンドレイ・ギリョフ撮影

アンドレイ・ギリョフ撮影

サンクトペテルブルクの研究者は、野生のカンガルーの90%が左利きであることを証明した。これは人間の脳の進化の研究や、精神神経疾患の性質の理解に役立つ可能性があるという。

 野生カンガルーの9割は左利きであることが判明した。サンクトペテルブルク国立大学が、アメリカのナショナルジオグラフィック協会、ロシア科学財団(RNF)の支援を受けて行った、有袋類の「利き手」研究の結果は18日、学術雑誌「カレントバイオロジー」で発表された。

 論文の基礎をなす実地調査は、タスマニア島とオーストラリア大陸中央部で、2012年と2013年に数ヶ月行われた。

 サンクトペテルブルク国立大学生物学部脊椎動物学講座の准教授で、調査責任者であるエゴール・マラシチェフ氏によると、研究者たちは2本足および4本足で移動する有袋類の4~5種の活動種を調査した。

 「我々は動物の自然な行動を観察した。鼻をきれいにしたり、かいたり、葉っぱを摘んだり、エサを口の中に運んだり、前足の片方で立ったりして、動きを乱されたり、挑発されたりしていないところを。4本足で移動する有袋類では、資材をどの足でかき集めるかを記録した」とマラシチェフ氏。

 

すべてはカエルから始まった

 サンクトペテルブルクで「利き手」の研究が始まったのは6年前。カエルがきっかけだった。さまざまな種類のカエルが、いろいろな行動で、異なる足を使うことに、研究者が気づいたのだ。

 「跳ねるカエル(普通のアカガエルやミドリガエル)では非対称性がほとんど見られないことがわかった。ヒキガエルは四肢を置き換えながら動くが、1本の足だけで何かをする時、非対称性が見られる確率は70%。例えば、ヨーロッパヒキガエルは右足で、ミドリヒキガエルは左足」とマラシチェフ氏。

 研究者は当初、有袋類には非対称性があまりないと考え、調査を予定していなかった。だがアカクビワラビーと飼育されているポッサムについては、仮定が正しくなかった。

 「ワラビーは直立状態の時、しばしば前足を使う。4本足で立つ時は非対称性が消える」とマラシチェフ氏。これが、オーストラリアの二足有袋類の「利き手」の調査へとつながった。

 

調査結果

 オーストラリアでの実地調査の結果、人間で右利きが左利きより多いように、カンガルーでは左利きが右利きより多いことを研究者は発見した。マラシチェフ氏によると、これはカンガルーの脳の非対称性が人間の脳の非対称性に非常によく似ていることの大きな証拠になるという。特に顕著な左利きの兆候を示すのは、アカカンガルーとクロカンガルー。このように、「利き手」と2本足の移動には関連性がある。二足歩行での移動が多いほど、その利き手がはっきりとあらわれる。人間は右で、カンガルーは左という違いだけだ。

 サンクトペテルブルク国立大学の研究者はまた、アカクビワラビーが細かい運動協調を要する行動を起こす際に左前足を使い、肉体的な労力をついやす際に右前足を使うことを証明した。

 もう一つの重要な研究結果として、「利き手」がカンガルーの子どもにあらわれることがわかった。

 「子どもでも手を非対称に使っていることがわかった。小さなカンガルーは母親の袋から、左手で草を摘む。これは、利き手の先天性を証明している。このような早期のあらわれは人間でしか知られていなかった」とマラシチェフ氏。

 マラシチェフ氏は、胎盤哺乳類(胎内に子どもを宿す)の脳とは構造の大きく異なる有袋類の脳がこれらの発見によって、生物学者のより詳細な研究対象になるかもしれないと考える。

 サンクトペテルブルク国立大学の研究者は、このような研究が将来的に統合失調症や自閉症などの精神神経疾患の性質の理解に役立つかもしれないと考えている。人間の利き手と相関性のある脳の非対称性は、これらの疾患とも関係している。