写真提供:「ロスアトム」
世界的な科学者や技術者は今日、「福島第1原子力発電所」の事故処理の過程で、非常に困難な問題や課題を解決している。このような問題の一つが、特別な貯蔵タンクにたまる膨大な量の放射能汚染水である。「福島第1の放射能汚染水を、然るべき量、完全に処理するにはいたっていない。既存の原発の技術は、セシウムとストロンチウムの放射性同位体を浄化できるが、トリチウムはできない。対策パッケージというより、事実上の放射能汚染水処理のための戦略計画が必要だと思う」と、原子力安全分野の権威ある国際的な専門家、ロシア科学アカデミー原子力安全発展問題研究所のレオニド・ボリショフ所長は話す。
「RosRAO」は放射性廃棄物の処理に特化した企業。廃棄物の収集、輸送、処理、保管を手掛ける。また、原子力エネルギー装置のある原子力潜水艦や水上艦のリサイクルの際、核燃料や放射性廃棄物を取り扱う。あわせて50万立方メートル以上の放射性固体廃棄物、液体放射性廃棄物、電離放射線源がある国内の貯蔵施設を管理している。
日本政府は昨年秋、連邦国営単一企業「放射性廃棄物取扱企業(RosRAO)」(ロシアの国営原子力企業「ロスアトム」傘下)と「V.G.フロピン・ラジウム研究所」を選んだ。この2組織は、福島第1の汚染水のトリチウム浄化処理技術を開発する、実証プロジェクトのパートナーとして活動することになる。ロシアの組織とともに、このプロジェクトには、アメリカの「キュリオン」社、「日立製作所」とアメリカの「ゼネラル・エレクトリック」の合弁企業「日立ニュークリア・エナジー・カナダ」が選ばれている。日本政府はそれぞれの実験参加者に960万ドル(約11億5200万円)を配分した。
実験所とミニ水除染ステーションからなるデモ施設は、2015年の秋 にも設立される予定。
「まず、天然同位体組成の水で施設の試験を行い、その後モデル溶液で試験を行う。それから放射能組成の水のモデル溶液でくり返す。これは福島第1にたまっている、セシウムとストロンチウムを前浄化した水。試験中に処理されるモデル溶液はせいぜい50立方メートルほど。これは福島第1の8000分の1にすぎない」と、RosRAO革新開発設計事務部のセルゲイ・フロリャ部長が説明した。
基本設計は6月30日までに示される予定。
「ロシアの専門家には明確な強みがある。ソ連、ロシアにおいて、原子力産業が存在する70年間、放射性廃棄物の取り扱いの知識と技術を積み重ねてきた。加えて、ロシアではすでに何年も、国家的な放射性廃棄物管理システムが機能しており、また固体や液体などの各種廃棄物の処理と貯蔵において、豊富な経験がある。これによって、ロシアの原子力科学者は、放射性廃棄物の、文字通りあらゆる問題を解消するために、自分たちの知識と革新技術を応用することができる」と、ボリショフ所長。
実証プロジェクトが正常に2016年3月までに完了した場合、福島第1にたまったトリチウム液体放射性廃棄物を浄化するための、本格的な産業施設の創設を、ロスアトムは見込める。
ロシアは原子力技術分野で、国際的な提携を行っている。具体的にはヨーロッパ諸国、中南米、アジアでの原発建設や、科学的協力の話である。原子力安全発展問題研究所の専門家は例えば、アメリカとフランスの原子力センターや国立原子力機関との契約にもとづいて、すでに20年以上も活動している。
「日本とロシアの専門家が福島第1の問題で互恵協力することによって、放射能汚染水の問題について悩まずに済み、また環境の脅威を除去できるだけでなく、両国の信頼関係を著しく強める。これは今日、とても重要」と、原子力エネルギーの独立専門家アレクサンドル・ウヴァロフ氏は考える。
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