Lori/Legion Media撮影
ロシア極東連邦大学(FEFU)は、石炭火力発電所の堆積場の灰から金とプラチナを抽出する、実験的な新技術を開発した。研究者はこのソリューションが経済的に有望だと考えている。この方法論によって、加工灰から、金、プラチナ、またレンガ、屋根瓦、断熱材、壁ブロック、敷石などの一部建築資材を得ることが可能。研究者によると、この技術は世界で応用可能だという。中国はすでに、この新技術に関心を示している。
環境災害も防止
この実験的な技術は、重力、電磁気、振動、超音波および浮選を組み合わせた、原料の粉砕および貴重な成分の複合抽出である。
将来的には石炭の廃棄物だけでなく、他の産業構造物の処理の問題を解決することが可能になると、研究者は確信している。FEFUのデータによれば、地下から採掘される世界の原料のうち、消費者までとどくのは6%以下。残りは不要な堆積物になる。
堆積場は満杯だ。巨大な領域を占めているのが発電の灰・スラグの廃棄物。ロシアの灰・スラグの総堆積量は約15億トン、灰堆積で汚染された石炭火力発電所の面積は2万2000ヘクタール以上。
廃棄物の複合処理の新技術立ち上げによって、環境災害を防止し、生産を収益性のある非廃棄型にすることが可能となる。工程で放出される砂も建設リサイクルにまわすことができ、また未燃焼石炭を燃料として発電所に戻すことができる。
「ロシアの石炭堆積場では、以前も金を見つけていた。ただ初めて、より確実な結果を得ることができた。どの灰堆積物でも、どの種類の石炭でも、貴金属を見つけられるというわけではない。本手法の新しい部分とは、同時に貴重な成分を抽出するところ」と、FEFU産業協力発展課の上級専門家で、プロジェクトの副主任であるアンドレイ・タスキン氏はロシアNOWに話した。
海外には類似技術は存在しておらず、産業規模でこのような金の採掘は行われていないという。「灰・スラグから貴重な成分を抽出する、環境にやさしい技術は、最近まで存在していなかった。これまで知られていた方法は、廃棄物リサイクルの第一の課題を解決するものではなかった」とタスキン氏。
金の量はどれほどか
研究者は沿海地方の発電所の廃棄物を調査する中で、1トンあたり平均0.5~2.5グラムの金と同量のプラチナを含有することをつきとめた。
「これが非常に困難かつ不採算になる可能性もある。その要因とは、鉱物資源に関するロシアの法律の特殊性など。調査を行って、堆積場に貴金属が含まれていることを証明する必要がある。良ければ1トンあたり2~3グラムの金になる。開発者は多くの問題を解決しなければならない。それは堆積場の所有者から合意を得ること、技術導入のライセンスを取得することなど」と、ロシア採金者連合のヴィクトル・タラカノフスキー会長はロシアNOWに説明した。
「石炭から金をとるだけであれば、確かに収益性はない。これは大規模な工業生産からでる廃棄物を、貴重な成分を抽出しながら複合的に処理するという話である。経済的には有利。技術は世界で応用可能で、さまざまな地域の特殊性に適応させることが可能」とタスキン氏。この技術には、すでに中国が関心を示している。中国の電力の4分の3は、石炭火力発電所で生成されている。
廃棄場は廃棄場にあらず
廃棄場の希少な成分の含有量が時に、天然鉱山をこえるというのには驚きだ。一部火力発電所の灰堆積場は、貴重な希土類元素の人工鉱山である。多くの灰堆積場の実際の価値は、主要都市の全不動産価格に匹敵する。
研究者はウラジオストク火力発電所2の廃棄物を生産・経済分野に採用して、この処理が費用対効果の高い、環境に安全な処理であるということを証明した。極東建築研究所と極東国立工科大学は1993年から2002年にかけて、実験区域で灰堆積場から建設資材や製品をつくり、また金とプラチナのコンセントレートを抽出することに成功した。研究者によると、工程はその高い収益性で秀でていたという。
廃棄物の問題の深刻さと規模の大きさにもかかわらず、今のところ、国も発電所の所有者もこの研究に関心を示していない。それでも開発者は、新技術導入に興味を持つ産業パートナーを見つけた。その会社は「エコメット」。極東で唯一、火力発電所の灰・スラグ廃棄物の加工を行っている会社である。
FEFUの実験所では現在、沿海地方の発電所の灰堆積場から採取したサンプルで調査が行われている。その結果によって、それぞれの堆積場の金含有量をより正しく評価することができるようになる。
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