ロシア産飛行艇の新たな挑戦

ミハイル・モクルシン / ロシア通信撮影

ミハイル・モクルシン / ロシア通信撮影

ロシアでは水陸両用飛行艇「Be-200」の生産が拡大している。外国での販売促進および認証の作業が現在進んでいるが、近い将来、飛行艇分野の激しい競争に遭遇するだろう。主なライバルはアジア諸国。

 中国産水陸両用飛行艇「蛟龍600」(ターボプロップエンジン4基、波の高さ2メートルで使用可能)が来年、世界市場に投入される。これは世界最大の飛行艇になるため(現在は日本産「US-2」)、ロシアのBe-200にとっては手ごわい存在だ。 

ロシアの航空産業界のシンデレラ

 ロシアの飛行艇の実績は豊富だが、常にシンデレラ的な状況に置かれていた。予算配分は残高に応じて定められ、国家発注は少なく、輸出の見通しも不明瞭だった。注文、量産がなければ、海外市場への展開も行えない。

ロシアの水陸両用飛行艇「Be-200

水陸両用飛行艇「Be-200」は、水陸両用飛行艇A-40「アリバトロス」をベースに設計された。用途は火災の消火、貨物輸送、人員輸送、巡視、その他の一連の課題遂行に応じて刷新可能。

 状況がいくらか改善したのは数年前。最初にロシア連邦非常事態省が注文した。昨年にはロシア連邦国防省も発注。ロシア軍は今年末には最初の飛行艇を受け取るという。

 増産に関連して、開発者の「G.M.ベリエフ・タガンログ航空科学・技術複合体(TANTK)」とロシア政府は、海外で積極的な販売促進活動を行っている。海外では海上の捜索・救援活動、森林火災の消火活動などに使われる。

 

ヨーロッパや北中南米に

 昨年のパリ航空ショーでは、ベリエフTANTKの専門家がスイス、カナダ、アメリカ、フランス、チリの企業とBe-200についての商談を行った。「この商談は水陸両用飛行艇『Be-200』の優れた輸出可能性を証明した」と、ベリエフTANTKのウェブサイトには記されている。

 「Be-200ChC-E」モデルは2010年、欧州航空安全機関(EASA)認証を取得している。Be-2002011年にフランスで行われた試験で火災の消火活動に参加し、フランスの専門家の高い評価を受けた。

 フランスの機関はBe-200をレンタルすることを計画している。しかしながら、多くの協議が行われたにも関わらず、Be-200輸出先の地図は、今のところ拡大していない。

 

アジアの強力な競合企業

 排他的経済水域の巡視や捜索・救援活動が行える飛行艇の人気が高い、有望な東・東南アジア地域には、アジアの強力な競合が存在するため、この地域へのロシアのBe-200の輸出は困難である。

 日本は今年、防衛装備移転三原則を導入したことから、輸出を行えることになった。「新明和工業」はUS-2の輸出許可を防衛省から受けている。US-22010年、インド海軍の入札に参加(ロシアのBe-200、カナダのCL-415も参加)。今年初めに、日本とインドの間でUS-2輸出に関する事前合意がなされた。日本産飛行艇にはインドネシアとブルネイも関心を示している。ロシアがインドの入札で負けたことは、Be-200の今後の輸出に負の影響をおよぼしかねないし、販売促進にはさらなる努力も求められるようになる。この状況において、中国の蛟龍600が登場するのだ。

 困難な挑戦とはなるが、Be-200には中南米および東南アジアの市場で競争できるチャンスがある。飛行艇の需要はこれまでと同様、世界で高い。航空分野の調査会社「アヴィアポルト」のデータによると、今後10年の飛行艇市場の潜在性は150機。ロシア政府が設計、開発、またBe-200のマーケティングを強化すれば、外国の空でBe-200を見ることができるようになるかもしれない。

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