量子コンピュータ、空飛ぶ自動車、無尽蔵の石油

GettyImages / Fotobank撮影

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7月初めにトムソンロイター社が発表した世界で最も影響力のある学者のリストに、8名のロシア人が含まれた。世界的水準の科学的成果を挙げているにもかかわらず、ソ連崩壊後のロシアの学者たちの活躍については、あまり知られていない。ここ20年間にロシアの学者によって為されたきわめて重要な発見を点描してみよう。

超重量元素

 ロシアの学者らは、まさにポストソ連時代に、メンデレーエフの周期表の超重量元素を追い求める競争で先頭に立った。2000年から2010年にかけて、モスクワ近郊のドゥブナー合同原子核研究所(JINR)内のフリョーロフ名称ラボラトリーの物理学者たちは、原子番号113から118までの六つの超重量元素を初めて合成した。

 そのうちの二つは、すでに国際純正・応用化学連合(IUPAC)によって正式に認証され、フリョーロヴィウム(114)とリヴェルモリウム(116)と名づけられた。元素113、115、117、118の発見の申請は、現在、IUPACで審査されている。

JINRの核反応ラボラトリーのセルゲイ・ドミトリエフ所長は、こう語る。「問題は、メンデレーエフの化学元素周期表のすべての欠落を埋めることではなく、地球の自然界に存在するものの枠を超える特性を具えた新しい形態の物質を創り出すことなのです」

 同氏によれば、もしも一定の質をもった超重量元素が合成できれば、人類は、宇宙遊泳に適した薄くて丈夫な服、反物質で動くエンジン、使用期限のない燃料エレメントやバッテリー、ガス状のコンピュータ画面など、さまざまなものを創り出す可能性を手にする。

 

エクサワット・レーザー

 2006年、ニジニ・ノヴゴロドのロシア科学アカデミー応用物理学研究所に、地球で最も強力な光の放射が得られるペタワット・レーザー装置PEARL(PEtawatt pARametric Laser)が設置された。この装置は、非線型光学結晶における光パラメトリック効果のテクノロジーに基づいており、現存するすべての発電所の出力を数百倍上回る出力0,56ペタワットのパルスを発振することができる。

 現在、同研究所には、PEARLの出力を10ペタワットまで増加させる計画があり、当面は出力200ペタワット、将来は出力1エクサワットのレーザーを創出するXCELSというプロジェクトを立ち上げる計画もある。

 ロシア科学アカデミー準会員で物理数学博士のエフィム・ハザーノフ氏によれば、そうしたレーザーシステムは、極限の物理学的プロセスや基礎的な宇宙の法則の研究を可能とする、とし、こう語る。「光パルスの電場は、核外電子を維持している電場を桁違いに上回り、放射の集中度は、真空が物質や反物質を生みだす値に達します」

 

超強力磁場

 1990年代初め、アレクサンドル・パヴロフスキー氏を中心とするサロフのロシア核センターの物理学者たちは、記録的に強力な磁場を得るメソッドを開発した。

 彼らは、衝撃波が磁場を圧縮する爆発力磁束圧縮ジェネレータによって、28メガガウスの磁場を得ることができたが、その値は、人工的に得られた磁場の最高記録で、地球の磁場の力を数億倍上回る。

 そうした磁場を用いれば、超伝導体といった物質の極限状況における動態を研究することができる。

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 科学アカデミー物理学研究所の物理数学博士であるウラジーミル・プダーロフ氏は、こう語る。「超伝導の磁場システムを用いて、現代的な素粒子加速器が造られています。強力な磁場は、制御される熱核融合の反応を得るために欠かせません」

 同氏によれば、超強力な磁場によって超伝導体の動きを制御することができ、将来的には、まったくロスなしに遠くまで電力を送ることのできるケーブルや好きなだけエネルギーを蓄えることのできる超強力な蓄電装置の開発が期待できる。超強力な磁場は、磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)やさまざまな磁気軸受のために必要であり、将来的には、空中浮揚装置の開発も夢ではない。

 

無尽蔵の石油やガス 

 メディアやエコロジストたちは、石油やガスは50~100年以内に枯渇し、現代文明は破局を迎えるかもしれない、とさかんに警告しているが、ロシアのグブキン名称石油ガス大学の学者たちは、そうならないことを証明した。

 実験と理論的計算によって、彼らは、石油とガスは、広く認められている理論にあるように、有機物質の分解の結果ではなく、非生物由来の(非生物学的な)方法で生成される、ということを証明した。彼らは、地球の100~150キロメートルの深さにある上部マントルには、複雑な炭化水素システムを合成するための条件が存在している、ということを究明した。

 グブキン大学のウラジーミル・クーチェロフ教授は、こう語る。「つまり、天然ガスは再生可能な枯渇しないエネルギー源とみなすことができる、というわけです。ロシア経済は、世界経済も多くの点で同様ですが、エネルギーの価格に左右されています。ロシアにおける石油の採掘は、まず第一に厳しい気候条件のために、コストが高くついてしまいます。将来、石油を人工的に合成するテクノロジーが開発されれば、経済面およびエコロジー面の多くの問題が氷解するでしょう」

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