アルチョム・ジテネフ撮影/ロシア通信
世界自然保護基金(WWF)ロシア環境・経済プログラムの責任者であるアレクセイ・ココリン氏によると、この現象は標準的気候を逸脱しているわけではないものの、気温が毎年上昇していることから、ロシアでも世界でもより大きな変化が起こってくるという。
ロシアの場合、気候変動を予測することは可能だが、それが経済に与える影響を試算するのはあまり現実的ではない。
どこでも気候変動
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第38回総会・第2作業部会第10回会合が3月末、日本で行われ、世界の海洋と大気が現在の速度で暖まり続ければ、地球上で多くの問題が起こると予測された。
平均気温は確実に上昇しており、研究者もそれを認めている。疑問点は、この状況にどれだけ人間が影響を及ぼしているのか、今後はどのような変化が起こるのかということである。
IPCCの試算によると、過去35年間の平均気温より2.5度気温が上昇した場合、地球で大災害が起こるという。温暖化はかなり不均一であるものの、このようなシナリオが現実となる可能性は高くない。
ロシアでは温暖化に勢いがある。ロシア連邦水文気象環境監視局のデータによると、1975年から気温は1.5度上昇している。世界ではこれが0.8度だ。
気温の変化がもたらしている主な問題は3つ。それは淡水の不足、世界の大洋の上昇、大気中の二酸化炭素濃度の上昇。これ以外の氷床の融解、領域の水没、生物の移動、資源戦争、熱帯病のまん延などは、主要な3問題がもたらす別の問題である。
ロシアへの影響
ココリン氏によると、ロシア、アメリカ、または中国などの国が近い将来、気候変動によってどれほどのGDPの損失を被るのか予測することは不可能で、いかなる研究者でも大まかな数字さえ出せないという。「したがって簡単に試算できる気候変動の要因はロシアにない」
長期的な現象すなわち氷床の融解、海洋水準の上昇、永久凍土の減少の結果としての経済的打撃であれば、予測が比較的容易だという。
「太平洋の環礁はなくなるだろう。住人はオーストラリアなどに避難させなければならない。メコン川河口三角州やガンジス川河口三角州も予測が容易だ。スイスの保養地も、かつてあったものがなくなった。人工雪で五輪を開催することはできるが、通年の保養地ではなくなった」
海洋の上昇で脅かされる地域は、バルト海沿岸を除いてロシアにはない。永久凍土の問題がより差し迫った問題となるが、永久凍土はロシアの領域の60%を占めているにもかかわらず(約1000万平方キロメートル)、経済はこれに依存していない。
このように、ロシアにおける経済への影響とは、詳細な地図を作成しながら、10平方キロメートルごとに個別の対応が必要になることだけだと考えられる。
「すべてを把握するのはとても難しい。気候が何を原因として、どのように変化するのかを理解するために、国内の小さな領域をひとつひとつ調査する必要がある。WWFはヴァイガチ島用の詳細な計画を作成したが、これはとても小さな領域だ」
このような試算が完了するのは10~15年後だという。今のところ、正確な評価が行われているのは、ここ15年で200件から400~450件まで急増した、危険な気候現象の結果だけである。
試算可能なものとは
最近の例をいくつかあげてみよう。
2010年夏、強力な高気圧が数ヶ月間ロシア西部を覆い、干ばつ、森林火災、穀物の不作などをもたらした。同年8月、ロシアは穀物輸出を禁止し、2011年7月1日の再開までに数百万ドルの損失を被った。
同年12月、モスクワを凍雨が襲った。この現象は冬に気温が正温度になると起こる。降雨の際に冷表面と接触し、氷に変わる。これによって送電線が切れ、空港が閉鎖され、5万本の木の枝が落下した。送電線だけで被害額は2億3000万ルーブル(約6億9000万円)。
昨年の夏から秋にかけて、極東を水害が襲った。過去115年でもっとも深刻な洪水となり、230ヶ所以上の市町村が浸水し、10万人以上が被災した。晩秋までの総被害額は10億ドル(約1000億円)以上にふくらんだ。
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