セルゲイ・サヴォスチャーノフ撮影/ロシア通信
ロシア連邦水文気象研究センターのロマン・ヴィリファンド所長は、環境の変化がロシア東部上空で気団の異常な循環を引き起こしたためと考えている。
今夏の観測データによると、中国上空には非常に温かく、水蒸気を大量に含んだ空気が、また同時にサハ共和国上空にはかなり冷たい空気があった。温度差によって低気圧が発生し、この地域の大きな河川の河床を大雨が襲った。
平均気温上昇→自然災害増加?
ロシアの大気圏下層の平均気温は、1990年代だけでも摂氏0.4度上昇。ロシア連邦水文気象・環境監視局は2005年、ロシアの環境変化の長期予報を発表。国内全域で自然災害の件数が急増すると考えた。
サハ共和国、東シベリア、ロシア北東アジア地域、カムチャッカは、降水量が増えることによって、冠水被害を受けるという。自然災害の発生の大部分は、積 乱雲の下で大きな気団が上下に動く気象現象が引き起こすもので、予測は困難だ。極東に洪水をもたらした低気圧も、この現象の一つ。
アメリカのプリンストン大学とメリーランド大学の研究グループの調査によると、ロシア極東には、嵐や竜巻をもたらし、豪雨で洪水を引き起こす、熱帯の台風と暴風が現れるようになるという。熱帯の風雨のゾーンが、地球の北側へと移動することがその原因。
ツンドラでは温暖化によって、根が細かく背丈の低い植物の代わりに、根が深く背丈の高い植物が増えてきている。すでにいくつかの苔類や地衣類が消滅の危機にさらされている。人工衛星のデータは、背の高い灌木(平均気温の上昇が成長に影響)が北方で徐々に増えてきていることを証明している。
最新の調査によると、北西ユーラシア(フィンランドから西シベリアまで)のツンドラ南部の10~15%を、2メートル以上の灌木が占めている。最近までこの高さは1メートル以下だった。遊牧民が”新しい木”のせいで、自分たちのトナカイがいなくなっていると訴え始めたことから、研究者がこのような変化に 注目するようになった。
「実は人為的要因はない」
地球環境・生態研究所の上級研究員で、生物学博士であるアレクサンドル・ミニン氏は、地球では常に環境変化が起こっており、ここには人間の影響はないと 考える。
「環境は常に変化しているが、現在そのバランスが崩れてきている。温暖化は実際に起こっているが、それは局地的。さらに1年を通してそれが不均等 に分布している。一部地域では逆の寒冷化が認められる」。
環境の変化には常に一連の要因が影響を及ぼしているが、世界的な環境の変化は、森林伐採や天然貯水池の干拓などの局地的な問題によって顕著になるという。「シベリアと極東の一部地域では、生育期が数週間ずれ、渡り鳥の移動時期も変化している。北極ツンドラでは温暖化によって、植物相の一部種類が絶滅の 危機にさらされている」とミニン氏。
ロシアの北部、極東の生活への悪影響
狩り、釣り、農耕などで暮らしている、ロシアの北方先住民族に、特に温暖化の脅威が迫っている。植物相と動物相の変化によって、伝統的な生活の源を失いかねない。
早期の融雪や大量の降雨は、すでに問題をもたらしている。先住民が飲料水として使用している小川や湖の水では、大腸菌が増えており、胃腸感染症が広がっ ている。このような負の影響の予防として近い将来、大量の食料品や飲料水をシベリアと極北の僻地に運搬しなければいけなくなるかもしれない。これには連邦 予算の配分が必要となる。
環境の変化は市街地の住民にも問題をもたらす。水文気象・環境監視局の専門家は、融雪と降霜が頻繁にくり返されるようになっているために、すでに建物の維持や管理の条 件が悪化し、その寿命を短くしていると話す。それは特に永久凍土地域で建設された建物、すなわち凍った土に直接打ちつけてある杭が基礎となっている建物で 顕著になる。
プラスの経済効果も
環境の変化は必ずしも悪いことばかりをもたらすわけではなく、経済にはプラスとなり得る。例えばシベリアでは農業に適した土地が増え、エニセイ川やレナ 川などの大きな川では船舶の航行期間が長くなる可能性がある。暖房使用期間が短くなれば、エネルギー資源を大きく節約できる。
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