打ち上げ失敗後も前に進むだけ

プーチン大統領は4月、ボストチヌイ宇宙基地の建設状況を視察した時 =タス通信撮影

プーチン大統領は4月、ボストチヌイ宇宙基地の建設状況を視察した時 =タス通信撮影

カザフスタンのバイコヌール宇宙基地近くには、幅20メートル、長さ40メートル、深さ5メートルの大穴が空き、数千個の細片が散乱している。

3年間で7回の事故 

 これはロケット「プロトンM」がもたらしたすべてだ。アメリカのGPSの競合品である、ロシアの全地球的航法衛星システム「グロナス」への追加衛星として、3機が7月2日に軌道に投入される予定だった。

 事故調査委員会は、専門家がマスコミに主張し、ドミトリー・ロゴージン副首相が否定していた人的要因を認めた。フルニチェフ国立宇宙科学・生産センターで誰かが角速度センサーを誤って装着し、その後誰かが十分な検査を行わなかった。

 一大プロジェクトではすべての規模が大きく、かつてないほどの影響をもたらした。それは多額の損失(180億円分の保険金がかけられていたものの、ロ ケットの製造と発射だけでも100億円以上)、プロトンに積載されていた毒性燃料による環境汚染をめぐるカザフスタンとの関係の緊張、他のプロトン・ロ ケットの再検査、世界の宇宙開発で上位に数えられるロシアとその宇宙分野のステータスの低下だ。わずか3年間で実に7回も事故を起こしている・・・

 

改革待ったなしで一致 

 ロシアの宇宙ロケット開発分野には、ずっと前から徹底的な改革が必要だった。管理方式、人材、ホールディングの再グループ化と強化などの組織再編成、技 術。そして何よりも目的意識だ。何を目指して努力するか、優先目標は何か。ロシア連邦宇宙局外の専門家は、ほぼ全員がこれを訴えている。

 連邦10ヶ年計画(2006~2015年)はすでに4回も変更され、予算がこれによって2倍に増大したことを、宇宙飛行士のユーリー・バトゥーリン氏と監 査員のアレクサンドル・ピスクノフ氏が明らかにしている。この際、活動費用は3倍になり、数十機の重要な宇宙機の製造と打ち上げは3~4年延期されている という。

 是正措置としては、人材、構造、管理、技術、教育の方向転換が必要だ。これを実施しなければいつまでも非効率に映るだろうし、世界の宇宙開発市場の競合国がロシアより優勢になってしまう。

 

ボストチヌイ宇宙基地と重量級ロケット「アンガラ」 

 改革は浅宇宙と深宇宙の探査計画に影響を及ぼすだろうか。ロシアの設計者は、ロケットの開発の遅れが深宇宙探査を遅らせ、さらに惑星間飛行の基盤をなくしてしまうことを理解している。

 ロケット「ルーシM」の開 発再開が明らかとなったのは昨秋のことだ。6.5トンから50トンまでの中・重量級の系列ロケットは、ボストチヌイ宇宙基地用に開発された。

 重量級ロケッ ト「アンガラ」には、最大35トンを低軌道に投入する能力が備わる予定だ。ロケット宇宙企業「エネルギヤ」はまた、75~100トンの超重量級ロケットの 開発を再開しようとしている。だがこれは将来の計画である。今のところ信頼性の高いロケットは、浅宇宙に宇宙飛行士や衛星を運び、国際宇宙ステーションに 貨物を届ける「ソユーズ」と、2020年まで打ち上げを続けるこの「プロトン」だ。

 

2020年まで約48000億円を支出 

 世界のロケット打ち上げの40%をロシアが占めている。宇宙機総数ではロシアはアメリカとEUに続いて第3位だが、平均年間資金供給増加率は世界の大国 の5倍である。今年から2020年まで、国家プログラムで1兆6000億ルーブル(約4兆8000億円)が配分される。

 宇宙ステーションのモジュール、月、火星、その他の惑星間研究・開発機器を打ち上げるボストチヌイ宇宙基地には、イノベーションが必要だ。連結プログラ ム、隕石プログラム、地球遠隔探査や救助衛星のプログラム、保健、教育、宇宙からの環境管理のプログラムなど、納税者が効果を実感しやすい応用プログラム の遅れも取り戻さなければならない。ロシアの社会・経済用宇宙機の軌道グループ化は今のところ、数でも、活動期間でも、実績でも、他の国より劣勢にある。

 

平均年齢55 

 新しい人材を育成すれば、月やそれより遠くに飛行することができるし、宇宙ロケット開発分野の刺激にもなる。ロシアのこの分野の平均年齢は現在55歳を こえていて、3年勤務して辞めてしまう若い専門家の数は40%にものぼる。宇宙分野で働く人の住居、給与、出世、社会保障、また正しい管理や有益なパート ナーシップという地球上の必須条件を整えれば、宇宙でも結果が出てくるだろう。

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