コンスタンチン・アグラゼ氏=セルゲイ・ミヘエフ撮影/ロッシースカヤ・ガゼータ紙
本物の生命を生み出す
一番難しかったのは、人間の細胞の成長に最適の温度を設定することで、何度も試行錯誤を繰り返した挙句、37度という適温にたどり着いた。また、移植の「メカニズムを起動する」化学物質も突き止めた。
この「日本製心臓」の小片を顕微鏡で見ると、それが収縮している様子がわかる。人工的な方法で、本物の生命が生み出されたことになる。
学者たちは今や、心臓の損傷部分にこの「生きた継ぎ」を当てて早期に治療することが可能になると期待する。
「πの二乗」をかける
アグラゼ教授の研究が実を結ぶためには、細胞同様に、その「培養」のための正しい条件が必要だった。その条件を教授は、故郷のロシアではなく、日本で見つけることになった。
もちろん、アグラゼ教授はロシアでの仕事も提供されたし、2010年には、ロシア政府による初のコンクールで巨額の助成金も獲得して、母校モスクワ物理工科大学に現代的な実験室を作った。
だがアグラゼ教授は、やがて官僚主義の壁を思い知らされることになった。2011年に教授はこんなことを言っていた。
「ソ連時代に学者たちは、この国の仕事の遂行期間には"π"(パイ=円周率)をかけなくては、と冗談に言っていました。でも、米国と日本で仕事してから、今10年ぶりにロシアに帰って来て、"πの二乗"をかけないとだめだと思いました」。
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