原子力はエネルギー分野に限らない

=タス通信撮影

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国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、2035年までの世界の電力需要に占める原子力発電所の割合は、現状と同じ6%であるという。しかし、フランスのように揚水発電所と組み合わせて電力を貯めたり、隣接分野への応用などで新展開が開ける可能性がある。

原子力+揚水発電で電力を貯める

 原子力発電の未来を眺めながら、切っても切り離せない特徴のひとつに気づく。原子力発電所はかなり慣性的で、電力需要の増減に対応することはできないということだ。したがって新しい原子力発電装置の建設には、モスクワ郊外にあるザゴルスク揚水発電所のような揚水発電所をつくることが必要になってくる。原子力がエネルギー比率の70%を占めるフランスは、この方法を採用している。人々が電気自動車に乗り換え、夜中に安い原子力発電で給電するようになる将来には、原子力発電所の増減対応の問題がなくなる可能性がある。

 「ロシア・ベンチャー会社」革新・社会プログラム部のエヴゲーニー・クズネツォフ部長は、生活の質を向上させる最新技術の大きな可能性には、可動式発電機が欠かせないと考える。「スマートフォン、自動車、移動式住居、独立式住居といったあらゆる物の、消費可能な電力が増えれば、それぞれの役に立つ機能や質も高めることができるようになるかもしれない。最新型のバッテリーを使える可能性が拡大すれば、消費者ひとりひとりの発電電力量が増えるため、安い原子力エネルギーは別の使い方をされるようになるだろう」。

 

原子力ロケットなど隣接分野への応用 

 ロシアの原子力の飛躍的な発明は近い将来、エネルギーや軍事の分野以外で聞かれるかもしれない。何十年もの間、原子力の平和利用というと原子力発電所の電力供給をイメージしていたが、この分野の専門家は今日、核医学、スーパーコンピューター開発などの隣接分野により注目するようになっている。

 専門家は、宇宙分野における人類の未来の進歩と、原子力宇宙エンジンの発展を関連づける。原子力エネルギー装置は実際、すでに10年以上も宇宙機のエネルギー供給に使われている。連邦国営単一企業「ケルドィシュ研究センター」は2010年、メガワット級原子力推進装置を基礎にした、宇宙輸送エネルギー・モジュールの開発を始めた。

 研究者は、このモジュールが将来的に、深宇宙開拓や宇宙機の次世代機の製造に役に立つことを期待している。

 

隣接分野からの収益が全体の3分の1 

 原子力分野の多様化の必要性には、「スコルコボ」革新センター原子力技術本部執行責任者であるデニス・コヴァレヴィッチ氏も同意する。「多様化を始める理由は少なくともふたつある。ひとつ目は市場がすでに発展していて、多くのことが必然的に動いているということだ。福島原発事故はロシアで起こったわけではないが、直接的に影響を及ぼしている。ふたつ目は隣接分野の市場が、エネルギー分野よりもかなり急速な伸びで成長し、規模の点でも、ひけをとらなくなっていることだ」。

 先進国ではすでに、原子力の隣接分野での収益が、原子力の全収益の3分の1ほどにまで拡大しているため、隣接分野の将来性はとても魅力的だ。

 専門家によると、すでに発見されている世界のウラン備蓄を、現在のペースで原子力発電所に投入し続けると、30~40年は維持できるという。

 ロシアにおける原子力発電の難しさは、ウラン採掘の現場が高緯度で、高くついてしまうことにある。しかしながら高速炉に転換したり、世界のエネルギー分野がトリウムなどの他の種類の燃料を主流にしたりするようになれば、現状を将来的に改善できるかもしれない。

 

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