米国にロシアのロケット・エンジン納入計画

写真提供:mharrsch/flickr.com

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ロシアのエンジン製造会社「クズネツォフ」とアメリカの人工衛星製造会社「オービタル・サイエンシズ(Orbital Sciences)」は今月中旬、ロケット・エンジン「NK-33」を2020年までアメリカに納入することを定めた、オプション契約を結んだ。

購入する“権利” 

「オプション契約とは、買い手が事前に定められた条件で製品を購入する権利の契約であって、義務の契約ではないため、取り引きが確定したわけではない」と「クズネツォフ」は正式に伝えている。

2基の改良型「NK-33」は、アメリカが開発した、国際宇宙ステーションに物資輸送を行う中型ロケット「アンタレス」の1段目で使用される。最初の打ち上げは今年予定されている。

「NK-33」のエンジンは、ソ連の宇宙飛行士を月に送る「N-1」ロケット用に製造されたものであるため、新型とは言えない。このプロジェクトは1974年に停止していた。現在「NK-33」は、「アンタレス」と同様に今年の打ち上げが予定されている、ロシアの新しい軽量ロケット「ソユーズ2.1v」の1段目に使用されている。

エンジンとロケットの完成度を高める 

年が明けてから伝えられた、新たなロシアの宇宙計画を信じるならば、今後数年は“飛躍的進歩”を遂げることになる。最優先課題のひとつは、打ち上げロケットの完成度を高めることだ。これが実現すれば、宇宙飛行の質のみならず、世界の商業的ロケット打ち上げサービス市場において、ロシアの地位も確固たるものにする。

世界でロシアのロケット・エンジンの代表格となっているのは、国内最大の科学生産合同体「エネルゴマシュ」の「RD-180」だ。「エネルゴマシュ」対外経済活動部のアナトーリ・フロロフ部長は、同共同体の予算の75~80%が、「RD-171」と「RD-180」の輸出でまかなわれていると述べる。

米国のアトラスロケットにも搭載 

「RD-180」のプロジェクトは1996年初め、アメリカの「ロッキード・マーティン」製打ち上げロケット「アトラス」の1段目を選ぶコンクールで、見事優勝した。1999年春には「アトラス」のエンジンとして、「ロッキード・マーティン」が認証書を発行し、2002年8月に「RD-180」搭載の「アトラス」の初の打ち上げが実施された。現在このエンジンは、アメリカ国防総省などのアメリカの政府機関の貨物を軌道に投入する、最新型「アトラス5」にも搭載されている。

「エネルゴマシュ」の業務最高責任者であるウラジーミル・ソンツェフ氏によると、同社は今後5年間でアメリカに「RD-180」を30基納入する計画だという。米露の「RD-180」契約では、全部で101基の納入が定められている。現在アメリカは63基をすでに受け取っているが、50基目を受け取った頃、自国生産品の導入を検討し始めた。しかしながらプログラムの詳細な評価を行った結果、現実的ではないとして導入は見送られた。

日本も購入へ 

「エネルゴマシュ」が最近関係を構築し始めたばかりの日本も、アメリカと同様の動きを見せた。日露協力プログラム「ギャラクシー」によると、日本側が参加して完成させたエンジンの、日本への納入が開始されるという。当初日本は独自のエンジンを製造しようとしていたが、結局ロシアのエンジンが搭載されたアメリカのロケット「アトラス」を購入することになった。

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