「今のところ我々の仲は良くない」

ロイター通信
 米国の新国務長官の初のモスクワ訪問は、露米間の対立点が多すぎるため、両国関係におけるブレイクスルーをもたらさなかった。一方、専門家らは、両核大国間の外交チャンネル復旧の重要性を指摘している。

 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と米国のレックス・ティラーソン国務長官のモスクワでの会談の前日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、露米関係が非常に思わしくない状態にあることを認めた。テレビ局「ミール24」へのインタビューで、プーチン大統領は、露米間の信頼のレベルは、ドナルド・トランプ政権発足後の数ヶ月間で、政治学者らが両国の「冷戦」の精神やレトリックへの回帰を指摘していたバラク・オバマ政権後期と比べても「むしろ低下した」、と述べた。

 

ラブロフ外相、プーチン大統領と相次いで会談

 ティラーソン国務長官の訪露を前にした両国の声明にも、厳しい調子が見られ、国務長官は、シリア紛争でどちらの側に立つかを選択するようロシアに呼びかけ、これに対し、ロシア外務省は、「最後通牒をたずさえてロシアへ来ても無駄である」と応じた。米国は、あたかもロシアが4月4日の化学兵器を用いた攻撃へのシリア政府の関与を隠蔽しようとしていたかのような報告を公表したが、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、そうした非難は事実無根であると声明した。

 ティラーソン国務長官の訪問の前日には、プーチン大統領がクレムリンで同国務長官と会談するのか、あるいは、会談はラヴロフ外相とのみ行われるのか定かでなく、ペスコフ報道官も、4月11日、プーチン大統領の予定表にはティラーソン国務長官との会談は盛り込まれていない、と述べていた。それでも、プーチン大統領は、4月12日、ラヴロフ外相との会談を終えたティラーソン国務長官と会談した。

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シリアや化学兵器をめぐる対立

 コメルサント紙が会談の経過に通じた消息筋の話として報じるところによれば、会談ではシリア問題に主な注意が割かれ、会談の成果をまとめる記者会見におけるラブロフ外相とティラーソン国務長官の発言から判断すると、アプローチの違いは依然として存在するものの、双方にはそれらを協議する用意がある。

 ティラーソン国務長官は、バッシャール・アサド政権は終焉を迎えつつあり、この現実を自国のシリアのパートナーに知らしめることがロシアの務めである、と述べた。一方、ラヴロフ外相は、米国が「アル=ヌスラ戦線」のイスラム過激主義者らと効率的に戦っていないのではないかとの疑問を呈し、「何らかの時点でアサド政権を武力で打倒すべく同戦線を今まで存続させている」との根強い疑念があると述べた。4月4日の化学兵器を用いた攻撃に対する見方には、両国の間で食い違いが見られ、米国は、攻撃はアサド政権によるものであると主張し、ロシアは、無罪の推定を遵守して化学兵器禁止機関(OPCW)の報告を待つよう促した。

 

「低い信頼のレベル」

 一方、両外務担当閣僚は、今回の会談を生産的なものと評価した。ラブロフ外相は、シリアの上空における不測の事態の防止に関するメモランダム(ロシアは4月7日のシリア空軍に対する米国のミサイル攻撃の後に同文書を無効とした)を再び有効とする用意を表明した。また、同外相は、露米は、両国間に存在する問題を分析するためのロシア外務省とアメリカ国務省の代表から成る特別グループを設置する、と述べた。

 これに対し、ティラーソン国務長官は、両国関係は非常に低いレベルにあり、これを修正する必要がある、とし、「両国間の信頼のレベルは低く、世界の両超核大国がこのようなリレーションシップ(関係)を有することがあってはならない」と述べた。

 政治学者で外交専門誌「グローバル政治の中のロシア」編集長のフョードル・ルキヤノフ氏は、両国関係のメカニズムの回復を今回の会談の前向きの成果とみなし、「それ以外では、歩み寄りは見られず、アメリカ側は、目下、最大限強硬な戦術を選択しつつあるように思われる。なにもロシアに対してということではなく、全体として。トランプ政権にとって重要なのは、アメリカがボスなのだということを示すことである」と述べた。

 国立研究大学・高等経済学院(HSE)・欧州国際総合研究センターのチモフェイ・ボルダチョフ所長も、両国関係の進展について語ることはできず、対立の根はあまりにも深い、と考えている。一方、同氏は、ティラーソン国務長官の訪問にはロシアにとって好ましい一つの特徴が見られるとし、「米国は、久し振りにロシアの内政への干渉の姿勢を見せず、ティラーソン国務長官は、ロシアの野党勢力の代表らと会談せず、会談では、もっぱら国際問題のテーマが取り上げられた」と述べた。

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トランプ大統領の反応

 シリア問題のほかに、ラブロフ外相とティラーソン国務長官は、朝鮮半島問題(北朝鮮の非核化を求める姿勢を確認)、ウクライナ情勢(ミンスク合意を遵守する必要性を強調)、二国間協力の問題を協議した。ラブロフ外相が記者会見で指摘したところでは、「ティラーソン国務長官が制裁で私を威嚇することはなかった」ものの、すでに導入されている制裁の解除について協議されることもなかった。

 4月12日に北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長と会談していたトランプ大統領は、モスクワでのティラーソン国務長官の会談について、仕事は上首尾なものであったとし、うまくいくかどうかは分からないもののロシアとの関係を軌道に乗せられればこの上ないと述べ、「NATOとわが国がロシアと仲良くやっていければ素晴らしいが、今のところ、我々の仲は良くない」と語った。

 ボルダチョフ氏は、ホワイトハウスから届く相矛盾する声明(先週トランプ氏はロシアを強く非難していた)は、トランプ政権の単一の外交アプローチについて語ることが難しいことを示しているとし、「トランプ政権は、まだ形成の途上にあり、政権内では、グループや個々人の間で多くの対立が燻ぶっており、今のところ、足並みの乱れが見える」と述べる。