ロシアの専門家らによれば、自国の軍事力の誇示が、ロシアの同盟国シリアの軍隊への米国のミサイル攻撃へのロシアのリアクションとなりうる。ロシア科学アカデミー・国際安全保障問題研究所の専門家アレクセイ・フェネーンコ氏によれば、米国サイドからの攻撃がもう一度実施された場合、ロシアは、アメリカの巡航ミサイルの一部を撃墜する措置に出るかもしれない。それまでには、ロシアは、示威的にシリアにおける自国の軍事活動を活発化させる。
フェネーンコ氏によれば、米国は、2013年からすでにシリアの大統領の軍隊に対する軍事作戦を計画しており、金曜日未明の空爆は、米国の国外での新たな軍事作戦の端緒となるにすぎないのかもしれない。しかし、そうした予想が正しいとすれば、「早かれ晩かれ、対決の論理そのものが、武力で報復することをロシアに余儀なくさせる」。その場合、両大国の衝突は、必ずしもグローバルな核のホロコーストの形を取らない。それは、1936~1939年のスペイン内戦当時の状況を彷彿させるかもしれない。そのとき、ソ連の空軍は、ファシズムのイタリアとナチズムのドイツの軍と宣戦布告なしに戦闘を行った。
一方、この代理戦争の場合でも、核兵器使用の可能性を完全に除外することはできず、両国の軍人らが戦術核兵器の使用を必要とみなす可能性は、十分にある。
専門家らは、米国が、ミサイル攻撃がシリア国内の状況や米露関係にもたらしうる影響を考慮せず、ロシアとの何の協議もなしにミサイル攻撃を実施した、という点を指摘している。国立研究大学・高等経済学院(HSE)の国際問題専門家ドミートリイ・スースロフ氏は、ロシアNOWへのインタヴューで、それは、ドナルド・トランプ政権は「本質においてブッシュ・ジュニア政権ライトと化し、国際法を無視した軍事力の行使を伴う強硬な一方的な政策を実施していく」と結論づける根拠を与えている、と述べた。
米国は、シリアの大統領に対する自国のアプローチを忽然と変え、再び一貫して同大統領の辞任を求めていくであろう。ロシアは、自国の同盟国を裏切るつもりはなく、シリアにおける軍事プレゼンスを増強していく。一方、米国も、「弱みを見せずに自分を強く見せる」願望がトランプ氏の基本的なモチーフとなりつつあるので、恐らく譲歩はしまい。こうした状況において、シリアにおける露米関係の深刻な軍事的・政治的エスカレーションが、極めて現実的なものとなりつつある。スースロフ氏は、そうした状況において私たちがキューバ危機の際に見られた「緊張のリインカーネイション(転生)」の目撃者となる可能性も、除外していない。55年前、両超大国は、キューバへのソ連のミサイルの配備後に核戦争の瀬戸際に立たされた。しかし、そのとき、ソ連は「自由の島」から、アメリカはトルコから、それぞれ自国のミサイルを撤収し、戦争は回避された。
しかし、すべての専門家がロシアはシリアにおける米国への何らかの軍事的報復を準備していると考えているわけではない。独立系の戦略的評価研究所を主宰するアレクサンドル・コノヴァーロフ氏によれば、ロシアは、現時点ですでに行われた措置すなわちアメリカの軍人らとの飛行の安全に関するメモランダムからの離脱に留まる。同氏は、「米国は、シリアで戦争を始めたわけではなく、声明がなされているように単発的なアクションを行ったにすぎない」ので、ロシアは、シリアにおける自国の軍事プレゼンスを拡大しない、と考えている。
いずれにせよ、ロシアは、国際機関に訴え、国連安保理の場で米国のシリアへの攻撃に関する問題を取り上げ、シリアにおける化学兵器使用の調査に関する対話をアメリカに提案する。しかし、米国がロシアのこうした姿勢に応じるかどうかは、予断を許さない。
ロシア科学アカデミー・東洋学研究所のウラジーミル・ソートニコフ氏によれば、両国の協力が今後どのように構築されていくかは、「デリケートなミッション」を携えてくる米国のレックス・ティラーソン国務長官のモスクワ訪問に、その多くがかかっている。同氏は、ロシアNOWへのインタヴューで、「ティラーソン国務長官は、一方では、 [シリアへのミサイル攻撃に関する] トランプ氏の決定を説明しなくてはならず、他方では、ロシアとの協力を維持しなくてはならない」と語り、米国は、シリア危機に介入している以上、現地にプレゼンスを有するロシアとのコンタクトなしに済ますことなどできず、シリアにおけるロシアとの接点を模索するほかない、と述べた。ロシア・ビヨンドのニュースレター
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