イランへのS-300禁輸解除のワケ

パヴェル・リシツィン/ロシア通信撮影

パヴェル・リシツィン/ロシア通信撮影

ウラジーミル・プーチン大統領は13日、地対空ミサイル・システム「S-300」のイランへの輸出禁止を解除した。この禁輸措置はドミトリー・メドベージェフ大統領(当時)が導入していたもの。ロシア政府が解除の理由を説明しながら、国際情勢の変化に言及している一方で、専門家は、政府がこのようにして、イランと西側の過度な接近を防ごうとしているのではないか、と考えている。

 プーチン大統領はS-300のイランへの輸出禁止を解除した。セルゲイ・ラブロフ外相はこの決定を、最近スイスのローザンヌで行われたイランの核問題をめぐる協議の「著しい進展」と説明した。また、これに関連して、イエメンを初めとする中東地域の緊迫した情勢や、S-300が防衛システムであることにも触れた。

 イランの国家安全保障最高評議会は、タス通信によれば、年内にもS-300が輸入されると考えており、イラン国防省は解除の決定が両国の協力関係を強めると強調した。一方で、アメリカ国務省のマリー・ハーフ副報道官は、イランが中東地域で「不安定化の役割」を果たしているとし、アメリカはS-300の輸出を非建設的な動きと考えている、と強調した。

 

イランとの関係

 ロシアの専門家社会によると、S-300の禁輸は2010年、国連安保理の決議を受けて、当時のメドベージェフ大統領によって決定された。決議はS-300を含む「地対空」クラスのミサイルを禁じてはいなかったが、大統領令にはこの決議が記されている。

 ロシアの専門家は、外務省と同様、プーチン大統領の決定をローザンヌでの協議の成果と関連付け、さらにイランに対する制裁の早期解除の可能性があることから、ロシアが軍事技術協力の分野でニッチを占有しようとしていると指摘した。ロシア・エネルギー・安全保障センターのアントン・フロポコフ所長は、現在「イランに注目している国の多くが、イランと自国の協力をいかに強化できるかについて考えている」と話す。ロシアのS-300に関する決定は、イランの核問題をめぐる協議の進展をみれば、イランに対する最後のものではないという。

 

ロシアの警戒

 同時に、ロシアはこのようにして、西側との過度な接近を警告する一定のシグナルをイランに送っているのではないか、という意見もある。ロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所国際安全センターのアレクセイ・アルバトフ所長は、これが「西側との協力に完全に切り替える必要はないというシグナル」だと考える。西側は「ロシアほど多くのものを与えることはできない」という。まずは軍備システムのことである。このような動きは、ヨーロッパとアメリカが依存している、イスラエルおよびペルシア湾岸君主国によって強く非難される。

 イランが西側寄りになると、ロシアの国益がないがしろにされるのではないかと、ロシアは警戒している。「それだけではなく、自国の利益のために、ロシアに不利をもたらすかもしれない。例えば、石油およびガスの市場に参入して価格を低下させ、また西側にとってのロシアの代替源になる」とアルバトフ所長。

 

いつどのようなミサイルを輸出するのか

 どのようなミサイルをいつロシアがイランに輸出するのか、という問題もある。政治・軍事分析研究所のアレクサンドル・フラムチヒン副所長によると、PMU-1の改変モデルであるS-300は、すでに生産中止になっているという。イランが他の改変モデルのシステムを輸入することに同意するのかは不明である。以前同様の提案が行われた時、イランは断っている。

 とはいえ、ロシア軍にすでに導入されているシステムを輸出するのは、大きな改変をともなうため、困難なのだという。この改変を限られた時間で行うのは非現実的でもあると、フラムチヒン副所長は考える。

 問題は、より完成度の高いS-400システムの輸出でも生じる。フラムチヒン副所長によると、ロシアの軍需工場は、2020年までのロシア軍再軍備プログラムに関連して受注増の状態にあり、既存の能力では間に合わない。このような状況で、輸出は8~10年先になる可能性があり、それではイランを納得させることはできないという。