タティアナ・ペレリギナ
新たな現実
一流の政治家や政治学者のほぼ全員が、世界で新たな現実が生じたことを認めている。
冷戦終結にともない、状況は根本的に変化した。もっとも、それと変革自体の内容の概念はすぐに訪れたわけではないが。一方で、現在の世界危機が示している通り、最初の計画には国内発展の問題が来る。社会・経済を筆頭とする国内発展の強固さこそが、重要な外交資源なのである。
他方で、世界は解放され、歴史的創作の自由を多くの国が手にした。世界は自由以上に自由になった。国際関係の脱イデオロギー化だけがこの自由を確固たるものにしているわけではない。地域的な大国、世界のすべての文化・文明的多様性など、経済成長および政治影響の中心の多数化がその保証となる。多極化は地政学的三角形ロシア-アメリカ-中国の範囲に収まらない。
勢力の要因
世界のすべての大国は、その歴史の中で実際に嫌というほど戦った。第一次世界大戦でそれを十分経験した国、第二次世界大戦で経験した国がある。
これは軍事力の要因が国際関係でその役割を果たさなくなったということではない。ここ20年の経験は、さまざまな対立が減るどころか、逆に増えていることを示している。ここでは状況を2種類にわけなければならない。
まず、国際社会の明確な意志表明とアメリカ自体の国家利益にかかわらず、イラク戦争を始めた、ジョージ・ブッシュJr.政権の経験である。国際的な立場だけでなく、国内発展の部分で、国家の自己崩壊の要素として軍事力を利用した。
次に、他の世界に明白な、具体的な国家利益の保護という、情勢に応じて必須となる軍事力の使用である。例としてカフカス情勢と現在のウクライナ情勢をあげることができる。
新たな抑制
軍事的な対応力が、隠れた攻撃や、「政権交代」が起こった模造国家を通じた攻撃の際に、決定的な意味をなすということを、カフカス情勢も、現在のウクライナ情勢も示している。総じて、露骨なロシア抑制政策を通じた、以前のヨーロッパ政策またはヨーロッパ・大西洋政策への回帰の試みは、多極化世界でその意味を失いながらも、地域の深刻な不安定化の源になり得る。
非グローバル化
非グローバル化の傾向は、経済・貿易分野の世界的政策の地域化にもあらわれている。
以前の地政学的考察を持ち込もうとする試み、すなわち何かのためではなく、地政学的な敵と見なされる国の孤立化を目的として、何かに対抗するために団結することが可能だというのは興味深い。
地政学
WTO規定やEU規格の導入を通じたユーラシアの統合、ヨーロッパでの「統合による統合」、またEU、ロシア、ウクライナを含むその共通の隣国の三者間プロジェクトは、一般的なグローバルの傾向に沿っている。現在のウクライナ情勢は逆に、別の政策が何をもたらすかを示している。このような地政学的かけひきの対象となった国は、不安定化し、崩壊し、冷戦時代のサンプル、地政学的「統治領域」に変わる。しかしながら基本的な問題、正確には策略の欠点とは、このような管理が多額の資金とスポンサー国側からの「完全な義務」を必要とすることである。冷戦のイデオロギー的強制には、どちらも付随していた。現在は資源もそのような政治的意志もないのだから、これは問題だ。
その理由は事態が経済的意義に反し、20世紀のヨーロッパの悲劇的な経験を思い起こさせ、ウクライナ情勢が対ヨーロッパの陰謀、二極化時代の人工的な対立だととらえられ、主要なヨーロッパ諸国の政府が直接的な関与者ではなく、アメリカとロシアの仲介的関与者としてふるまっていることである。
プラグマティックな外交
ロシアは現在、新しい条件の下、自国の力に対する新たな自信をもちながら、ヨーロッパと世界のすべての喫緊の問題のスペクトルで、完全かつ幅広い政策を実行できるし、実行しなければならない。
それは国家の実際の利益と開放・幾何学的利益にもとづいた多様な同盟への参加の必要性を考慮に入れた、プラグマティックかつマルチベクトルの外交のことである。
*アレクサンドル・ヤコヴェンコ駐英ロシア連邦特命全権大使
非公式の抄訳
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