ナタリア・ミハイレンコ
ウクライナ危機の行方がロシアと世界の関係に影を落とすことは明らかであり、露日関係も例外ではない。
日本の反応は予測可能なものであった。日本はロシア非難のG7声明に賛同した。しかし、G7内部にわずかながら亀裂が生じていることも否めない。共同声明は採択されたが、米国、英国、フランスの極めて強硬な姿勢とドイツ、イタリア、日本の慎重で控えめな反応との間の温度差が指摘されている。
日本政府は「自制」を呼びかけつつ、対決をあおるレトリックを放棄した。3月3日の安倍晋三首相の発言にも「慎重さ」と「自制」を促す(しかも、ロシアのみならずすべての紛争当事者に対して)姿勢が見てとれる。
日本政府のこうした抑えたトーンは偶然ではない。2012年12月に政権の座について以来、安倍首相は15カ月間にロシアのプーチン大統領と5回も会談している。
安倍首相がオバマ、オランド、キャメロンといった西側の首脳が冬季五輪開会式をボイコットする中で、ソチを訪問してプーチン大統領と会談したことも特筆に値する。
露日間では経済面や人道面の交流が活発化し、平和条約に関する交渉も再開されている。今秋には10年ぶりとなるロシア大統領の日本公式訪問が予定されている。日本の外相は、安倍首相のロシア訪問準備の枠内で今春にロシアを訪れる意向を確認した。
日本は対露関係におけるいかなる急激な変化も国益にとってマイナスの結果をはらんでいることを認識している。
エネルギー事情も要因
この面で大きな役割を演じているのは経済的事情だ。
化石燃料の供給源の多角化を目指す福島原発事故後のエネルギー部門再編はロシアの役割の向上を見込んでいる。
ロシアもアジア重視の輸出政策を推進しつつ、日本を極めて有望なエネルギー市場の一つと捉えている。3月4日に茂木敏充経済産業相が両国間の経済・資源外交の基本に変わりはない、と述べたのも理由のないことではない。
日本は、過度な親露的姿勢が、ロシアとの対決路線をとったかに見える米国との信頼関係を損ねるということを自覚している。
それゆえ、日本はロシアとの関係を損ねてまでウクライナ問題で米国と手を結ぶべきか、太平洋の向こうの「兄貴」の怒りを買うリスクを冒してまでロシアとの関係強化の路線を堅持すべきか、というジレンマに立たされている。
「二兎追う者は一兎をも得ず」という状況に変わりはない。とはいえ、何らかの局面打開の道がいずれ見出されることであろう。
ドミトリー・ストレリツォフ、モスクワ国際関係大学教授
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。