「ピロシキ」
ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディチェルカッスキー・ンナディ氏はソ連が崩壊した1991年、キエフからイスラエルへ移住した。当時、15歳だった。イスラエルでは独特な作風を持つ画家になった。一見すると純朴な絵のように見えるが、とても意味が深い。そこにあるのは家族の現実。最近インターネット上に掲載されたチェルカッスキー・ンナディ氏が子どもだった頃の絵画には、ソ連崩壊前の普通の生活が描かれている。
「メーデー」=ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
5月1日の労働者の日は、労働者の経済、社会的な達成と、労働者の権利をめぐる闘いの日である。ソ連ではとても重要な日で、数百万人の人が典型的なソ連のスローガンの入ったプラカードを持ちながら、メーデーのデモに参加していた。これはいまだに国の祝日である。
「当番」=ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
ソ連では、すべての児童が同じ制服を着ていた。男子用はアルミ製のボタンのついた青いスーツ、女子用はひざ上の茶色のワンピースと黒いエプロン。ピオネールは赤いスカーフを付けていた。当番の児童は赤い腕章をつけて、授業が終わると教室の清掃をしていた。
「この娘スカートはき忘れてる!」=ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
1980年代、9~16階建ての標準的なコンクリート系プレハブ・ビルが国中に建設された。これらの住居ビルでは中庭も標準であった。小さな遊び場、入口付近に置いてあるベンチ。ベンチにはいつも、バーブシカ(老いた女性)たちが座っていた。バーブシカは誰が建物に入り、誰が新しい家具を買い、誰のネコが隣の家のサラミを盗んだかを知っていた。なぜそんなによく知っていたのだろう?それは謎だが、いつでも最高のスパイである。
「カーペット」=ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
ロシア人は壁面を歩くわけではないが、カーペットが壁に”敷かれている”。国民の多くがフルシチョフカ(ニキータ・フルシチョフ時代に建設された低層アパート)に入居していた1960年代、カーペットは国中で流行した。フルシチョフカの壁は薄く、寒いためである。カーペットはまた、防音材であった。カーペットは写真撮影の超人気の背景であった。
「ファゼンダ」=ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
1960年代、よく働く国民にはダーチャ(別荘)の土地が割り与えられていた。広さは6ソトク(600平方メートル)。「ファゼンダ」と呼ばれたりもしていた。こうして、国は食糧の問題だけでなく、国民の余暇の問題も解決していた。ソ連が崩壊していても、夏の週末というと、ダーチャでの作業と遊びのイメージが強い。
「南部へ」=ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
ソ連の列車の旅、特に開放式寝台車として知られる三等寝台車の旅は、とてもおもしろい経験であった。腹を割って話ができたし、事前に用意した食事を皆が持ち込んでいた。平均的な乗客のランチはゆでた鶏肉と卵。列車が出発すると、すぐに皆が食べ始めた。お腹が減っているかどうかは関係なく、それが定番だった。
「ビュッフェ」=ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
食堂で食事をすることは、子どもから年金生活者までのソ連生活の重要な部分だった。人気料理の一つは、カツレツ(ソ連ハンバーグ)とマッシュポテト。女性は食堂に入っても、帽子を脱いでいない。理由は2つ。帽子で乱れた髪を見せたくない、自慢の毛皮帽を見せたい。
「低調ブレイクダンス」(学校のディスコ)=ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
ペレストロイカ時代、ファッション、ラップ、ブレイクダンスなどの当時の欧米文化がソ連各地に入り込んだ。若者の間では大人気となった。欧米の若者のように、ヴァリョンカ(煮たジーンズ)をはき、変わった髪型をし、たくさんのジュエリーを身につけた。
「メーデー」=ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
豪華な祝いの食卓はソ連の謎の一つである。1980年代後半の物不足により、国民は店で調達できる食材と創造力を駆使して、驚きの料理をつくっていた。塩漬けニシン、卵や魚のザリヴノエ(ゼリー料理)、塩漬け料理、ムホモル(”タマゴテングタケ”卵)、トマトは、結婚式、葬式、誕生日など、どのテーブルにも並んでいた。まれにクリスタル・グラスが置いてあった。これは実際に決して使われることのなかった、典型的な結婚式の贈り物である。
「ラジオ・リバティー」 =ゾーヤ・チェルカッスキー・ンナディ
反体制派はソ連のイデオロギーに同意していなかったが、政権を掌握することなど計画していなかった。ソ連で基本的な人権が侵害されていることを、できるだけ多くの人に伝えようとしていただけで、サミズダート(地下出版)やさまざまな西側への情報伝達方法を使っていた。また、ソ連で禁止されていた西側のラジオ局の電波を拾おうとしていた。 1991年、反体制派の時代とソ連自体が終焉した。
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