多種多様な民族が住むロシアのカフカス:人口が多い民族TOP10は?

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エレオノーラ・ゴールドマン
 ロシアには約200もの多種多様な民族が暮らしており、そのうち約50はカフカスの各地方に住んでいる。

 ロシアのカフカスには多数の民族が暮らしており、それぞれに独自の歴史、言語、文化、食文化がある。カフカスのなかには、イングーシ共和国のように、イングーシ人が人口の95%を占める、ほぼ単一民族地域もあれば、ダゲスタン共和国のように、約30の民族と14の公用語をもつ多民族地域もある。では、カフカスで人口が最も多い民族は何だろうか?

1. チェチェン人

 これは、この地域だけでなく、ロシア国内でも最大の民族の1つだ。しかし、彼らの大多数はチェチェン共和国に住んでおり、120万人以上(計150万人)に達する。チェチェン人は、隣接するダゲスタンとイングーシの両共和国にもいる。なお、チェチェン語には、7つの主要な方言と多くの地方の方言がある。

 チェチェン人は自分たちを「ノフチイ」(人々)および「ヴァイナフ」(私たちの人々)と呼んでいる。これは、チェチェン人および近縁のイングーシ人の一般的呼称だ。

 そして、チェチェン人社会は「テイプ」で構成されている。これには、親族関係で結ばれたいくつかの家族が含まれる。

 ほとんどのチェチェン人はイスラム教徒だ。 女性は、伝統的なスカーフで頭を覆い(ただし、顔を隠す習慣はない)、明るい色の長いドレスを着る。男性も路上でショートパンツを履くことはない。

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2. チェルケス人

 チェルケス人はアディゲ人とも呼ばれ、いくつかの種族を含んでいる。アディゲ人、カバルド人、シャプスグ人、チェルケス人などだ。

 世界には約250万人が(最大500万人と推計するデータもある)、ロシアには約72万人がいる。 彼らの半分以上は、カバルダ・バルカル共和国(カバルド人)、アディゲ共和国(アディゲ人)、カラチャイ・チェルケス共和国(チェルケス人)、クラスノダール地方(シャプスグ人)など、各地に点在している。彼らチェルケス人は、同一の言語および地方の方言をもっているが、と同時に同じ伝統、習慣、文化を有する。

 チェルケス人もほとんどがイスラム教徒だが、北オセチアには正教会の信者もいる。ちなみに、カフカスの男性の伝統的な衣装は、チェルケス人にちなんで「チェルケスカ」と呼ばれている。

3. アヴァール人

 ダゲスタン共和国で最大の民族はアヴァール人だ。この共和国には約90万人いる(世界には推定100万人)。つまりダゲスタンの全人口の約4分の1だ。アヴァール語も、ダゲスタンで最も普及している言語だが、その地方ごとの方言は大きく異なることがある。現代のアヴァール人の多くは、イスラム教スンニ派を信奉している。

 世界で最も有名な、現代のアヴァール人というと、総合格闘家でUFCチャンピオンのハビブ・ヌルマゴメドフだろう。

4. ダルギン人

 アヴァール人に次いでダゲスタンで2番目に大きい民族はダルギン人だ。約50万人いる(世界では推定60万人)。ダルギン人の文化と言語には長い歴史がある。ダルギン語で書かれた最初の写本は13世紀にまで遡る。

 現代のダルギン語のアルファベットは46文字で、多くの方言に分かれている。アヴァール人と同じく、イスラム教スンニ派を信仰している。

 ダルギン人は複数の種族を含んでいる。たとえば、クバチ村の住民で、ここは民芸品の生産で知られている。

*クバチ村の見事なスカーフについてはこちらをどうぞ。 

5. オセット人(オセチア人)

 北オセチア共和国では、人口のほとんどがオセチア人だ。彼らは、自分たちは古代アラン人の末裔だと考えている。

 ロシアのカフカスには約50万人のオセット人がいる(世界には約70万人)。

 オセット語はイラン語派に属する。ほとんどのオセット人は正教徒であり、この宗教を古代カフカスの伝統、習慣と組み合わせている。近隣地域とは対照的に、イスラム教徒はわずか10%だ。

 ちなみに、当地の主要な郷土料理であるオセチアン・チーズパイは、ロシア全国で人気があり、ほぼすべての都市で見られる。 

6. イングーシ人

 イングーシ人のほとんどは、イングーシ共和国に住んでいる(共和国内に約40万人)。さらに約30万人がロシアの他地域と外国にいる。 

 イングーシ人は自分たちを「ガルガジ」(ガルガイ)と呼んでいる。言語学者たちによると、この言葉は「ガラ」という言葉に由来する。これは塔なので、「塔の人」を意味するわけだ。イングーシの望楼は、この山岳の共和国の各地に残る、とても印象的な歴史的建造物だ。

 また、チェチェン人と同じく、彼らは自分たちを「ヴァイナフ」と呼んでいる。イングーシ人にも独自の言語、イングーシ語があり、ロシア語とともに公用語とされている。地元メディアも、イングーシ語の放送を行っている。

7. クムイク人(クムク人)

 クムイク人は、カフカスで最大のテュルク系民族だ。推定50万人以上がおり、そのうち43万人がダゲスタンに住んでいる(これは同共和国で3番目に大きい民族だ)。彼らが住む、歴史的な地域は、「クミキア」と呼ばれる(テレク川とスラク川の間に位置する)。

 クムイク語は、カフカス最古の言語の1つであり、20世紀初頭まで、北カフカスの民族間の共通語として機能していた。この地域を若い頃に訪れた、ロシアの文豪レフ・トルストイも、これを研究した。

8. レズギ人(レズギン人)

 カフカス伝統の人気のダンス「レズギンカ」をお聞きになったことがあるかもしれない。結婚式から大規模なコンサートまで、この民族舞踏抜きのイベントはあり得ない。このダンスの名は、レズギ人の名に由来する。歴史的に彼らは、ダゲスタン南東部とアゼルバイジャン北部で暮らしてきた。

 約40万人のレズギ人がダゲスタンに、ロシアの他地域にはさらに10万人が住んでいる。アゼルバイジャンにも約20万人がいる。そのため、現代のレズギ人は、ロシア語とレズギ語だけでなく、アゼルバイジャン語を話す人も多い。 

9. カラチャイ人

 これはテュルク系民族で、そのほとんどが山岳地帯のカラチャイ・チェルケス共和国に住んでいる。カラチャイ人は、合計約20万人。研究者らの見解では、彼らの祖先はアラン人であり、実際、古代アラン人の言葉の多くがカラチャイ語に残っている。「アラン」という言葉自体が、カラチャイ語での相手への呼びかけに使われる。

 現代のカラチャイ人の暮らしにおいても、モラルの規範、民族の伝統、客のもてなしはとても重視されている。客はすべて、「ヒチン」を常にふるまわれる。これは、野菜や肉を詰めた平らな揚げパンだ!

10. ラク人

 ラク人は、ダゲスタン最大の民族の1つ。総数は約20万人で、そのほとんどが歴史的な居住地域、すなわちクミキア付近のラキアに住んでいる。

 カフカス最初のモスクも、ラキアのクムフ村にある。8世紀に建てられ、今日までよく保存されている。

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