あなたの国ではバーテンダーに向かって「40グラムお代わり」とは言わないだろう。しかし、ロシア語では強い酒を頼む時一般的にこう言う。この記事を読んで、さまざまな酒の量を表すロシア語のスラングに詳しくなろう。
革命前のロシアでは、計量法は今と異なっていた(かつロシア独自だった)。1ボーチカ(491.96リットル)は40ヴェドロー(1ヴェドロー=12.299リットル)、1ヴェドローは10シトフ(1シトフ=1.2299リットル)、1シトフは2ブトィールカ(1ブトィールカ=0.61495リットル)で、最小の単位はシカーリク(0.06リットル)だった。
18世紀に作られたシトフ
アポリナリーとヴィクトル・ヴァスネツォフ記念ヴャトカ美術館1918年、ソビエト政府はロシアにメートル法を導入した。それ以来、すべての量はリットルで量られるようになった。1923年にソビエト政府が生産を始めた「公式」ウォッカの「ルースカヤ・ゴーリカヤ」(「ロシアの苦いウォッカ」の意)は0.5リットルの瓶に入れて売られた。当時のソビエトのグラスの容量は250ミリリットル、100ミリリットル、50ミリリットルだった。
欧米の1ショットはふつう40ミリリットルだが、ロシアの1ショットは50ミリリットルだ。それにしても、なぜロシアではウォッカや他の酒がミリリットルではなくグラムで量られるのだろうか。
1930年代末までは、ウォッカの量について話す際、従来のシトフとシカーリクという単位が使われていた。この慣習が途絶えたのはロシアとフィンランドの冬戦争(1930年―1940年)の時だった。1940年、国防人民委員のクリメント・ヴォロシーロフが、赤軍の兵士と司令官らに100グラムのウォッカを配るようヨシフ・スターリンに要請したのだ。なぜヴォロシーロフが「ミリリットル」ではなく「グラム」という言葉を使ったのかは誰にも分からないが、とにかく彼はグラムと言った。
ヨシフ・スターリン(左)とクリメント・ヴォロシーロフ(右)
Public domainこの要請は聞き届けられた。戦車兵は毎日200グラムのウォッカを、パイロットは100グラムのコニャックを配給された。それ以来、「ナルコムの100グラム」というフレーズがソ連で一種の流行語となった。「ナルコム」は人民委員を意味する略語で、この酒の配給を推進したヴォロシーロフのことを指していた。
ウォッカの100グラムを飲む兵士
Nikolai Handogin1940年代以降、ロシアで強い酒について話す際は「グラム」が使われるようになった。ただし強い酒限定だ。つまり、「200グラムのワインを飲む」と言うのは不自然だったが、ウォッカやウィスキー、コニャックについて言うなら全く問題なかった。
ソ連の人がウォッカを飲んでいたグラス
rashek/forum.guns.ru1ショットを注文する際は「50」を意味する「ピッヂシャート」(пятьдесят)という言葉を使えば良い。「ダヴァイ・パ・ピッヂシャート」(「50ずつ飲もう」(давай по пятьдесят))は飲み会の最初によく発せられる言葉だ。
「スト・グラム(сто грамм)」は「100グラム」を意味し、ダブルを頼む時に使える。しかし現在のロシアのバーテンダーの中には、世界の他の地域と同じく、欧米式に1ショットを40ミリリットル、ダブルを80ミリリットルで提供する人もいる。
別の記事で言及したように、250グラムの瓶はチェクーシカと呼ばれ、ヴェーラ・ムーヒナがデザインしたソビエトの定番のグラスの容量も250グラムだった。だが酒を頼む際にはこの単位はもう使われていない。ふつう、ショットやダブルに続くのはボトルだ。
ボトルは500ミリリットルであるため通常「ポルリートラ」(поллитра)(「半リットル」の意)と呼ばれた。この言葉は1瓶のウォッカを表す最も一般的なスラングだった。それより量が多い場合は? 酒によっては0.7リットルや1リットルで提供される場合もあったが、それを表すスラングはなかった。
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