ロシア人総合格闘家ハムザト・チマエフは、中10日で2階級(77キロ級と84キロ級)の2試合に勝ち、アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)の記録保持者となった。10日間で無名の格闘家が世界的栄光を獲得し、UFCチャンピオンベルトの最も有力な挑戦者となったのである。
これまでこのような偉業を成し遂げた格闘家は一人もいない。
総合格闘技界全体がチマエフをその同胞ハビブ・ヌルマゴメドフになぞらえる。これは驚くべきことではない。彼らは外見が似ている。どちらもコーカサス地方の出身だ(チマエフはチェチェン人、ヌルマゴメドフはダゲスタン人)。どちらも格闘技が国民的スポーツである地域のマットで幼少期と青年期を過ごしている。どちらも破城槌のように対戦相手の足をすくって引き倒し、張り付け、息をつく間も、相手が自分の下から這い出すチャンスも与えないまま、打ちのめす。
チマエフは、軽量級チャンピオンのヌルマゴメドフと同様、対戦相手をマットに張り付ける戦法を好む。注意を逸らすパンチを頭に食らわせ、脚を狙い、地面での戦いに持ち込み、そのまま勝負の行方を決する。ハムザトはその攻撃的かつ凶暴な運動で総合格闘技ファンの心をつかんだ。彼はまるで「獲物」を狙う狼のように駆けずり回り、背後から攻撃したかと思えば、今度はいきなり脇から現れ、胴と頭を耐えず殴打する。
彼の敵は殴打の嵐に茫然として何もすることができない。殴打と並行して、鉄床のような80キログラムの獣が地面に押さえつけてくるからだ(正確にはほぼ90キログラムだ。どの選手も試合前日の軽量後に10キログラム以上食べるからだ)
チマエフの格闘スタイルは(ハビブ・ヌルマゴメドフのスタイルと同様に)現在UFCで最も支配的なスタイルの一つだ。今のところ、世界のどの流派も、ロシアのコーカサス地方から数年前にUFCに到来した流派を攻略する鍵を見出せていない(ハムザトは8勝0敗、ハビブは28勝0敗)。
今のところ、皆脚を狙われる間にカウンターで相手に膝蹴りをかまそうとしたり(最たる例が、開始5秒で終わったホルヘ・マスヴィダリとベン・アスクレンの試合)、コナー・マクレガーやダスティン・ポイエーがハビブとの試合で試みたように、立ったままノックアウトを試みたりするだけだ。上手くいったのはマスヴィダリだけである。
ここ十年、チマエフはスウェーデンに住み、ここでトレーニングをしている。兄弟の手術を行う必要があり、一家全員で移住し、そのまま留まったのだ。
最近までチマエフは個人のボディーガードからクラブの用心棒まで、職を転々としていた。本人曰く、全く金がなかったという。
ハムザトが新たな人生への切符を手にしたのは数年前、ハビブ・ヌルマゴメドフのマネージャー、アリ・アブデリアジズが彼と契約を結んだ時だった。
チマエフは自分の仕事を微笑みながら次のように表現する。「誰かを打ちのめし、金を得る。簡単なことだ」。そして今後2年でタイトルを獲得することを計画している。UFCの才能あるプロスペクトがメディアで取り上げられ、ある等級でランキングを上げるのに必要な時間はおよそそのくらいだ。
総合格闘技の取材をしている米国の主要な記者の一人によれば、エリアル・ヘルワニーによれば、チマエフは現在総合格闘技界の期待の新星ナンバーワンで、相応の対戦相手を見つけることはほとんど不可能だという。
「最近2回の戦いでは、相手の2発に対してチマエフは192発を食らわせて圧勝した。皆がハムザトのレベルを理解しており、誰も将来のUFCチャンピオンのタイトル獲得の道の通過点になることは望んでいない。彼の対戦相手として誰が差し向けられるか非常に興味深い」と記者はテレビチャンネルESPNの自身のポッドキャストで話している。
チマエフの次の戦いは2020年10月24日に予定されている。対戦相手、方法、会場、時間が明らかになるのは秋口だ。
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