長い髪に青い眼をし、グレタ・トゥーンベリさんに少し似た美しい少女は、けしてしかめ面をしたり、不満を言ったり、泣いたりしない性格で、どの写真や動画を見ても、自然に微笑んでいる。そしてどの写真にも必ず映っているのが、カモミールやイラクサなどの植物で、アレクサンドラは森の中で切り株に座って、その効能について語っている。彼女は環境フォーラムなどには出席していない。学校が終わった後は草を摘み、新しい料理や煎じ薬を作るのに忙しくて、時間がないのだという。
こうしてサーシャ(アレクサンドラの愛称)はロシアで、そして世界でもっとも若いハーバリストとしての名を守っているのである。
アレクサンドラはサンクトペテルブルクで、ハーバリストと調理師の家庭に生まれた。毎年、春と夏になると、両親は娘を祖母がいるニジェゴロド州のダーチャ(サマーハウス)に連れて行き、草の摘み方とそれを使った料理の作り方を教えた。
サーシャは当時を回想して、「何かとてもユニークなものに感じられて、すぐに熱中しました。4歳のときには祖母と一緒にタンポポとトマトとケッパーのサラダを作ったのを覚えています」と話している。
サーシャが初めて持った本は、花を使った料理のレシピと野生植物の効能についての本である。
サーシャは言う。「花を使って料理をするのは、何か魔法のようなものを作っている感じがして、すっかり魅了されてしまったのです。一方で、料理を作ると言うのは芸術的なことで、劇場や美術館に足を運ぶのと同じようなものだと思っています」。
母親のナタリヤさんは仕事と並行して、既婚女性のためのミセスコンテストを組織している。子どもを預ける先がないとき、彼女はサーシャを職場に連れて行っていた。あるフェスティヴァルに出かけたとき、子どものコンテストの関係者が、サーシャの美しさに目をつけ、コンテストに出場してみてはどうかと声をかけた。そこで、彼女は7歳で初めてのコンテストに出場することとなった。生まれて初めてのコンテストがどんな風に行われたのか、サーシャはよく覚えていないが、コンテストは歌や踊りで競う、よくある子どものコンクールに似ていたと記憶している。
コンクールに出場する理由について、サーシャは次のように話す。「わたしは今でもコンクールに出場しています。自分のハーブへの興味を広く知ってもらうためです。たとえば、フキタンポポやゴボウ、イラクサの汁が髪をツヤツヤにし、髪を伸ばす効能があることを知っている人はほとんどいません。コンクールで、わたしの髪を見た人は、それが本当に効果があることを理解し、わたしの言葉に耳を傾けてくれるのです」。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、サーシャは一家でダーチャに移動した。自主隔離体制を守りつつ、サーシャは両親とともに、ウイルスから身を守るための民間療法を行っていた。
「抗ウイルス薬にはシモツケソウとオレガノを使いました。これは自然界のアスピリンのようなものです。浸酒にし、植物はお茶に入れました」。
自主隔離の時間を有効に使うため、サーシャは1つの植物から、30分で10の料理を作ると言うロシアの記録を打ち立てようと決心した。
「エゾボウフウを使うことにしました。まさに野生の植物で、どこにでも生えていて、畑で野菜を育てている人は普通、抜いてしまおうとするものです。しかし、実際には、これはビタミン豊富な植物で、ぜひ皆さんにもこれを大事にしてもらいたいと思い、食材に選びました」とサーシャはエゾボウフウを選んだ理由について、こう語っている。エゾボウフウを使った料理は21分17秒で、10種類出来た(下ごしらえをしたものを使って)。ピロシキ、ドラニキ、スムージー、ジュース、サラダ数種類、そしてピーマンの肉詰めである。
彼女に寄せられるコメントやメッセージの中で、彼女はよく環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんと比較されている。しかし、サーシャ自身は彼女との間に共通点は特にないと感じている。
「地球を大切にして、プラスティックを使わないようにし、木を伐採せず、草焼きをしないようにすべきだと言う考えには同意します。しかし、そのすべてについて、自然を壊したのは大人だと責めるのは間違っていると思います。何もかもにそれほど攻撃的に反応し、過去を掘り返すのではなく、皆で一つになって、地球を守るためにはこれからどうしたらいいのかを理解する必要があるのではないでしょうか」。
サーシャは、将来は医学の道に進むか、ロシアの大学の化学生物学科に進学したいと考えているという。しかし、これはまだ先の話で、とりあえずは、母親が許してくれれば、近い将来、動画投稿サイトTikTokで、ハーブについて投稿したいと考えている。
母親のナタリヤさんはこれについて、次のように語っている。「TikTokの派手な傾向が好きではないのですが、もしすべて真面目にきちんとやるなら、反対はしません。ただわたしはやはり、彼女には自転車を思いきり漕いで、おばあちゃんと村の草原をたくさん歩いて欲しいと思っています。それはどんなソーシャルネットワークよりも大事なことだと思うからです」。
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