外国人を困惑させるロシア人の名前と苗字

ライフ
エカテリーナ・シネリシチコワ
 ニワトリを思い起こさせ、何度も何度も訓練が必要で、おかしな文字が組み合わされていて、奇妙な連想をさせる・・・。ロシアに長く住んでいる外国人にさえも特別な響きを持つ名前や苗字を紹介しよう。

 ロシア人の名前というのは、それほど大きな問題を引き起こすものではない。名前と父称で呼ぶという状況に直面するまでは・・・。父称とは父親の名前をとってつけられるもので、その長さは名前の2倍ほどある。(たとえばアンナ・ヴャチェスラヴォヴナの場合、ヴャチェスラヴォヴナが父称)。しかし、ここにも例外があることが分かった。外国人に「苦手な」ロシアの名前は何か訊いてみた。

 

変な響きの名前

 中国出身のジャン・ウィボさんにとっては、セルゲイ、ドミトリーなど、“P”(=r)の文字が入った名前はどれも難しいと打ち明ける。「この音を出すには長いこと訓練しなければなりません。それに、女性名の「ユリヤ」(リはlの発音)と男性名の「ユーリー」(リはrの発音)はほとんど同じ響きにしか聞こえません」。

 “Ю”(=Yu)の音も難しいと感じる人が多いようだ。「“ль”(=lの軟音)と“я”(=Ya)を一緒に発音する名前なんてありえません。わたしにとっては、女性名のユリヤと男性名のイリヤー(lの軟音の後にyaがくる)は同じに聞こえます。このロシア語の“Ю”の発音には頭がおかしくなりそうです」と話すのはトルコ人プログラマーのトゥンクト・カンクルさん。 

 もう一つ、あまり外国人に好まれない名前が、リュボーフィ(愛を意味する女性名)。ドイツ出身のアレクス・スタインボーンさんによれば、これはドイツ人には非常に発音しづらい名前であるという。というのも、ドイツ語には子音の軟化というものがないからである。「この組み合わせの音は非常に発音しにくいのです」。ランゲージ・スピーキング・クラブの英国クラブを率いるレイ・ビリー・ウォレスさんは、リュボーフィ(女性名としては非常に奇妙に感じる)以外にも、オレグ、トロフィムなどの男性名、そしてエヴドキヤという女性名も非常におかしい感じがする他、プロホル、ナジェジダなどは発音が難しい名前だと話す。 

*名前についてはこちらの記事もどうぞ

 ときに名前とその指小形についても疑問が生じる場合がある。スペイン人のイスラエル・セルヴァンテスさんは、「コンスタンチンという名前を始めて耳にしたとき、ロシアにそんな名前が存在するとは信じられなかった(この名前はヴィザンチンから入ってきた名前で、ルーシ時代の多くの公の名前がコンスタンチンであった)のだが、コンスタンチンという名前とその愛称のコースチャを結びつけるのはさらに困難でした」と述べている。

 

連想 

 フランス語の教師で通訳者であるレア・デニマルさんは、ガリーナという名前に違和感を覚えると言う。というのも、ラテン語でガリーナはニワトリという意味を持ち、固形ブイヨンの「ガリーナ・ブランカ」(白いチキン)を連想させるからだ。 

 セルゲイという名前の持ち主も不運である。セルゲイという名前は、性的嗜好を連想させるからである。もちろん、名前の持つ意味とはなんの関係もない。「名前の由来は知らないけれど、Sir Gay(サー・ゲイ)という意味でないことは確か」とダブリンからやってきたディミトリ・ショルスさんは指摘している。

 

発音不能な苗字 

 もっともロシアの名前で特に困ったことはないという人もいる。「ロシアの名前を発音するのが大変だったことはありません。ロシアに10年滞在していますが、ロシアには19種類の名前しかないように感じています。ですからすぐに覚えることができました。古い名前で、まったく発音できないようなものがあると聞いていますが、そのような名前の人に出会ったことはありません」と話すのは、モスクワで英国の幼稚園を開いたホーリー・ロバーツさん。 

 「難しいのは苗字です。とくに苗字の中に、“Ы”(=iy)、“Х”(=kh)、“Я”(=ya)あるいは“Ю”(=yu)の文字が入っているものです。たとえば、同僚にプレディバイロという苗字の人がいるのですが、この苗字の発音が困難だと思っている人はわたし一人ではないようで、あるとき彼女はわたしたちの苦労を軽減するため、「ミス・プリティ」と呼んでいいと言ってくれました」。

 実際、ロシアには、ロシア人にも一度聞いただけでは分かりにくい苗字というものがある。ホーリーさんのロシア人の夫の苗字はリャビュクであるが、彼は、外国人にだけでなく、ロシア人にこの苗字を告げる場合でも、必ず一文字ずつ読み上げているとのこと。

 外国に移り住むときに、苗字を変えるロシア人もいる。ミネアポリスに移住したマイク・シュルキンさんはQuoraにこう綴っている。「わたしの元々の苗字は、“Ж”(=zh)の文字が入っているので、英語の話者には発音しにくいのです。これはzhと置き換えられるものですが、英語圏の中でこの文字が入っている組み合わせを発音できる人はいないのです」。