ロシアの医師らはコロナウイルスで急増する緊急の作業をどのように対処しているのか?

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 勤務時間が終わった後、酒を飲み始めるという医師もいれば、患者の温かい言葉のおかげでなんとか持ち堪えているという医師もいる。

スヴェトラーナ、病院勤務の内科医

 わたしと当直の医師らは、シェレメチェヴォ空港で、外国から帰国する人々の対応に当たるよう言われました。空港での勤務は12時間、24時間連続で行われ、それと並行して、病院のシフトもこなしていました。

 まだ国際便の運行が中止されていなかったとき、わたしは中国からの到着便の乗客たちの対応をしていました。そのほとんどは休暇を終えて帰ってきた学生たちでした。わたしたちは機内で乗客の体温を測り、その後、入国審査を経た乗客たちにはメディカルスペースに行ってもらい、そこでわたしたちは乗客の写真を撮影し、ウイルス検査のための分泌液を採取し、それぞれに識別コードをつけ、連絡先、便名、チケット番号などを調べるアンケート用紙を書き込んでもらいました。

 乗客全員に、なんらかの症状が出た場合に気をつけることを記したメモを配布し、自己隔離することについて警告し、帰宅してもらいました。

 最初は乗客が200人、300人という大型機が到着し、わたしたちは一晩で3便から5便くらいを対処しましたが、日中はもちろんもっと多かったです。

 イタリアから到着した人々については、写真を撮り、アンケート用紙に記入してもらっただけで、分泌液の採取はしませんでした。イタリア発の航空便はガラガラだったので、それほど大変ではありませんでした(ロシア初のコロナウイルス感染者は、イタリアから帰国した市民だった)。

 しかし、その後、ドイツ、スペイン、フランスから大量の人々が帰国し始めました。非常に多くの飛行機が到着し、その飛行機はどれも満員でした。

 皆、疲れ切っていて、イライラしていて、多くの人が子供連れでした。しかも時間は午前3時、4時。休憩したり、水を一口飲んだりする時間はありませんでした。感染しているかもしれない乗客たちを扱うその場所では、水も飲んではいけなかったからです。しかも防護服はとても暑く、呼吸器を着てとても息苦しかったです。

 トイレに行くのも一苦労でした。防護服を脱いで、防護具を外して、チェックゾーンから出て、手指消毒をして、それからやっとトイレに行けるという状態でした。トイレに行くのに手間取っている仲間たちを見て、わたしは我慢した方がいいと思っていました。

 主なフライトの乗客の対応が済んだ後、わたしたちは病院に戻りましたが、そのときにはモスクワでは外出自粛が宣言されていました。

 病院では肺炎の患者の受け入れを注視し、患者たちは別の病院の特別な診療科に行ってもらうことになりました。計画診療も取りやめ、受け入れは急患だけとなりました。ほぼすべての患者にコロナウイルスの検査を行いましたが、幸い、全員、陰性でした。 

 病院内の状況はさらに緊張したものになりました。医師も患者もパニック状態となり、一体この先どうなるのかは誰にも分からない状況でした。 

 患者たちはコロナウイルスに感染することを異常に恐れ、皆、医師たちに発熱や乾いた咳は風邪のせいだと言い張っていました。中には大騒ぎする患者もいて、なんとか説得して個室に運び込むということもありました。 

 医師らもピリピリしていました。わたしたちは皆、コロナウイルスがどのようなものなのかまだ解明されていないということを理解しています。どこでどのようにして感染するか分からないのです。 

 1回の勤務時間に80人から200人までの患者を診察し、家に帰るとすぐにベッドに倒れこむ状態でした。でもわたしは自分の仕事が好きなのです。唯一恐れているのは、自分自身が感染してしまって、病人たちを助けられなくなることです。早く終息してくれるよう祈っています。

スヴェトラーナ、病院勤務の内科医

 勤務の1日は本当ひどいものです。もう2週間も、いつもの2倍の患者を診ています。その数は40人から50人くらいですが、とにかく医師が足りていないのです。同僚の1人は、この多忙な勤務状態に耐えきれず、この感染拡大が深刻化する中で退職しました。もう一人の女性医師は産休に入り、その結果、現在は1万人の患者に対し、医師が2人という状態です。

 病院には救急診療科があるのですが、大量の患者を処理しきれず、4月1日からはわたしも緊急医療に呼ばれるようになりました。多くの患者をなんとか処理できているのは、もっとも一般的な病気であるウイルス性呼吸器感染症などの薬の処方箋と書類を準備しておくという方法をとっているからです。

 もっとも多い依頼は、コロナウイルス検査をして欲しいというものです。とくに若者の間でパニックが広がっています。しかし、わたしたちが検査してもいいとされているのは、肺炎患者と外国から帰国した人あるいは外国人と接触した人だけです。それについては、そのように指示書に書かれているのだということ、また自分の健康が心配な人は有料の検査を受けることができることを説明しています。

 最近、勤務時間が終わるたびにボトルのワインを飲んでいます。正しいことではないとは分かっているのですが、今のような状況では、これ以外にストレス解消の方法はないでしょう。

アレクサンドラ、サンクトペテルブルグ市消毒所の感染症医

 わたしたちの仕事は消毒作業です。なんらかの感染症の拡大が起こったときに、ロシア消費者権利保護・福祉分野監督庁から感染源を探すよう指示が出ます。そしてそれを見つけ出し、特別な薬剤で消毒をし、除菌されたかどうかを管理します。

 感染は「セヴェルナヤ」という寮から始まりました。その寮にはコロナウイルスに感染したイタリアの学生が住んでいたのです。その患者を隔離した後、寮には4グループか5グループの作業班が入って、作業しました。その学生はすべての階を移動していたからです。消毒作業をしたあと、わたしたちはその学生の衣服、毛布、マットレス、シーツ、タオルなどを持ち帰りました。患者に触れたものはすべて、60℃に設定された特別な消毒ケースに入れ、除菌しました。その日は疲れて、家に帰るとすぐに寝てしまいました。

 消毒作業を行なった後、すべての学生に2週間の自宅隔離を要請し、その後、6グループで寮に入り、感染が二度と起こらないよう、もう一度消毒作業を行いました。 

 コロナウイルスの感染の確認数が多くなっていることから、仕事がかなり多くなっています。作業班のメンバーは、細菌学者、微生物学者を含む医師で構成されているのですが、作業員は不足していて、感染場所は拡大する一方です。昼も夜も、新たな感染場所に派遣され、非常に疲れます。以前は有料の除菌作業を行なってもいましたが、現在すべてのオーダーはストップしている状態です。

ラノ・アミルベコワ、内科医 

 現在、ロシアのクリニックは救急患者に対応するための特別班を作っています。医師、とくに内科医は絶望的に足りていないため、体性疾患の救急支援出動には、リウマチ専門医、外科医、神経科医も駆り出されています。わたしのような内科医はコロナウイルス(COVID-19)の検査のために、コロナウイルスが疑われる人の家や、すでに感染している患者の家に派遣されて、出払っているからです。

 わたしは3月27日に新しい仕事を始めたばかりで、まだ3回勤務しただけですが、たったこの3日間で、自分の職業や人々に対する考え方が変わりました。

 わたしの勤務時間は午前8時に始まり、いいときで午後8時に仕事を終えます。しかしこれは外に出て仕事している時間であって、その後、まだ書類の作成や診断の確定などを行なっています。

 わたしたちは2日行って、2日休む、あるいは2日行って、1日休むというようなシフトで勤務しています。わたしは地区の内科医なので、家族全員を診ています。重い症状の患者には電話番号を教えてあり、いつでも連絡が取れるようにしていますし、オンラインでの相談にも乗っています。

 今の状態で、増加する患者に対応するのはもちろん大変です。自分の勤務時間内にすべての患者を診なければならないからです。患者は16人のときもあれば、34人のときもあります。コロナウイルス対応班には運転手付きの自動車が与えられています。そして警察官も同行しています。

 ときに変な人にも遭遇します。出会う人が、「コロナウイルス、見つかった?」と訊いてきたり、患者と車に乗っていると、患者がわたしたちと写真を撮りたがったり。3回のシフトで、何回、写真を撮られたか数えられないほどです。また患者の中には、コロナウイルスに感染したことを絶対に信じず、検査をしたがらない人もいます。これはすべて政府の陰謀だと言うんですが、そうではないと患者たちを説得することになります。

 仕事の条件や形態が特殊であることから、わたしたちは顔に一般的な保湿クリームを塗ってはいけないことになっています。ぼうぼうの眉毛はいつか手入れすればいいのですが、勤務中、顔を触ることはできません。12時間、顔にマスクをつけた後に顔を見ると、誰の顔か分からないくらいです。不便であることは気にしないようにしています。ただ自分の仕事をするだけです。

 いまの状況を生き抜く「ライフハック」はただ一つ、注意深くあればあるほど、時間を節約することができるということです。大事なことは自分を失わないことです。あなたがいて、患者がいる。より注意深く、より詳しく、質問すればするほど、どのようなリスクがあるのかをより短い時間で、より正確に特定することができるのです。患者のところまで来て、よく分からない話をしたなら、2倍の仕事をすることになるだけです。

 出会う人々が、わたしにモチベーションを与えてくれています。昨日、インドネシアから帰国したという患者さんのところに行きましたが、診察が終わったとき、彼がわたしに「ありがとう、ドクター、あなたがたを高く評価します」と言ってくれたんです。たしかあれは昨日の28軒目の患者だったと思うのですが、わたしはまだカバンや書類ファイルを手にしていて、このコロナウイルスをめぐるこの状況が夢だったらいいのにと思っていたのです。しかしこの言葉を聞いた途端、まだ30人は診察できると思えました。

 今回のコロナウイルス騒動が収束した後、ロシアで、医師や病院に対する態度が大きく変わり、わたしたちの仕事が正当に評価されるようになることを願ってやみません。

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