ウラジーミル・プーチン大統領の公邸8選

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ニコライ・シェフチェンコ
 プーチン大統領は小さなアパートを持っているが、スターリンのダーチャからロマノフ家の城まで、数多くの公邸を利用している。

1. モスクワ州のノヴォ・オガリョヴォ

 ここはプーチンが我が家と呼ぶ場所だ。

 この地所はモスクワ州西部、モスクワ市のすぐ近くにある。オジンツォフにあるこの公邸は国家機密ではなく、グーグルマップで検索しても簡単に現れる。

 ノヴォ・オガリョヴォがプーチンの公邸となったのは2000年のことだ。プーチン自身はこの地所を所有していないが、彼は確かにここを自宅と考えている。このことは、彼が2008年から2012年までの4年間大統領職から退いた際もここが事実上彼の所有物のままだったということから容易に分かる。ロシアの法律では、引退する大統領は公邸のどれか一つを永遠に自分のものにして良い。2008年に大統領職から身を引いた際、プーチンはノヴォ・オガリョヴォを自身の住まいに選んだのである。

 この地所のメインの建物は、19世紀にアレクサンドル3世の弟、大公セルゲイ・アレクサンドロヴィチの命で建設されたが、後にはソビエト政府が外国の代表団を受け入れる迎賓館として使用された。

 ホワイトハウスとは異なり、ノヴォ・オガリョヴォは一般人に公開されていない。だがここに、公邸内部を撮影した一時間のプレビュー動画がある。38分16秒辺りでは、プーチンの冷蔵庫の中まで見れる(リンクはこちら)。

2. クレムリン

 モスクワのクレムリンは、ロシア大統領の第一の公邸である。

 大統領官邸はクレムリンに内部、エカテリーナ大帝の命で1776年から1787年に建設された元老院にある。本来ここには、元老院のモスクワ支部が入っていた。

 クレムリンの大統領官邸は、建物の北翼の中心にある。アメリカの大統領官邸とは異なり、窓は大統領の机の後ろではなく、左側にある。大統領の机もまた、アメリカの大統領執務室のものとは形が違っている。前部が前に引き出せる構造になっており、ロシア大統領が政府の役人と一対一の会談を行う際に使用される。クレムリンの官邸の壁には樫の板が張られ、天井は文様で彩られ、大きなシャンデリアが2つ吊られている。

 机の上には複数の電話があり、ロシア大統領が用いる安全な通信システムを構成している。

 しかし、ホワイトハウスに住むことが期待されているアメリカ大統領とは違い、プーチンは実際のところクレムリンには住んでいない。だがもちろん、彼はこの歴史的な官邸にヘリコプターか車でいつでも立ち寄ることができる。

3. 知られざる場所の知られざるアパート

 ここはプーチンが正当な所有者として公式に所有している唯一の住まいだ。77平米のアパートで、ロシア大統領の住まいにしてはあまりに侘しい。その外観やおよその所在地についてもほとんどしられていない。唯一の情報は広さだけで、そこから判断するに、ロシアのどこかにあるマンションの、寝室が二、三室ある部屋だろう。噂では、この建物はプーチンが生まれ育ったサンクトペテルブルクにあるという。

 プーチン大統領は、18平米のガレージも所有していることも明かしている。

4. モスクワの政府貸下げアパート

 プーチンのモスクワの住まいの住所はメディアで広く公表されている。アカデミカ・ゼリンスコヴォ通6番だ。アパートの大きさは153.7平米である。1990年代、ボリス・エリツィン政権で首相を務めた際の特権で国家から支給された。部屋が何階にあるのかは知られていないが、その控えめな室内を写したとされる二、三の写真がある。

5. ソチのボチャロフ・ルチェイ

 主な公邸の他、プーチン大統領はロシア全国に多くの住まいを有している。その中で最も広く認知されているものの一つが、ソチのボチャロフ・ルチェイだ。

 この邸宅は、ソ連元帥でヨシフ・スターリン政権の有力者であったクリメント・ヴォロシーロフの委託で建設され、1955年に竣工した。この政府のダーチャには、フルシチョフやブレジネフといったソビエトの歴代指導者が通った。現在、ボチャロフ・ルチェイはロシア大統領の夏の公邸となっている。黒海沿岸にある唯一の政府のダーチャである。

 ここでプーチンは2008年にジョージ・W・ブッシュ大統領と会い、2018年には花束を持ってドイツのアンゲラ・メルケル首相を迎えた

6. ヴァルダイ公邸

 もう一つの公邸がノヴゴロド州にある。ヴァルダイ、ウジン、ドルギエ・ボロディという3つの異なる名で通っている。

 邸宅は元々スターリンのダーチャの一つとなる予定だったが、アンクル・ジョーはここが危険すぎると断じた。1930年代当時、邸宅は小さな半島にある唯一の建物であり、密な森に囲まれ、本土へ通じる避難路が一本しかなかった。

 とにもかくにも、ヴァンダイ公邸は1980年代に完成した。ロシア初代大統領ボリス・エリツィンはここで釣りをするのを好んだ。政権を引き継いだ際、プーチンはヴァンダイ公邸を使用する権利も得た。

 驚くべきことに、誰でもこれらの別荘の一つにチェックインして二、三泊することができる。ただし実際の大統領の邸宅には泊まれない。宿泊代は最低二泊でたった800ドル(5万ルーブル)ほどだ。 

7. サンクトペテルブルクのコンスタンチン宮殿

 以前ロマノフ家が所有していたこの城は、フィンランド湾沿岸、サンクトペテルブルクの中心部から20キロメートルしか離れていないところにある。

 当初は、壮大さでベルサイユ宮殿に勝る皇帝の邸宅を作ろうとしたピョートル大帝の命で建設が始まった。後には大公コンスタンチン・パーヴロヴィチがここに住んだ。

 ソビエト時代にはここは大会宮殿として知られ、第二次世界大戦中は深刻な被害を受けた。レニングラード北極学校の生徒らも受け入れた。ソ連崩壊後は徐々に老朽化していったが、2000年代初めに大統領府が大規模な改修工事を行った。

 プーチンが実際にここに住んでいるかは分からないが、宮殿はしばしば公式行事で使用されている。コンスタンチン宮殿は、2006年のG-8サミットと2013年のG-20サミットの会場となった。

8. カリーニングラードのヤンターリ

 カリーニングラードのロシア大統領公邸は、ドイツ帝国初代首相オットー・フォン・ビスマルクが居を構えていた場所に建てられた。

 第二次世界大戦中、ここにはナチスの軍事機構の地域支部、ドイツ空軍の兵舎が置かれた。現在の公邸が建てられたのは2011年のことで、当時大統領だったドミトリー・メドベージェフによって開かれた。

 この邸宅は公式には大統領府のものだが、今のところ首相のドミトリー・メドベージェフと外相のセルゲイ・ラヴロフしか訪れたことがない。