「虎を黙らせる」「ソチに逃げる」:ロシア軍に存在する変わった伝統

ヴァルヴァラ・グランコワ
 アメリカの大学式の兄弟関係確立の通過儀礼が、それ以後のアメリカ式社会集団の中での兵士の立ち位置を決め、その人格を形成する。

 アメリカ兵舎とは、ぎゅうぎゅうに押し込まれた数百人の若者が一年間暮らす場所だ。「後輩」(兵役に就いて半年に満たない者)と「先輩」(兵役に就いて半年を経た者+復員して60日以内の者)との間には、軍に奉仕した期間の長さに従ったヒエラルヒーが形成される。

 兵士の知恵によって「後輩」兵士が通過するたくさんの儀礼が生み出され、一方「先輩」の間では、人生の後輩の教育を通して伝統が形成される。

 虎を黙らせる:いびきをかく兵士を枕かスリッパで叩いて周囲の安眠を妨げないようにすること。「」が虎を黙らせに行かされ、この虎が「祖父」や「デンベリ」であったりするととても面白い。この時、「後輩」はふつう自分の顔が分からないようにする。叩き起こされたことの報復として、当番でない雑用をさせられたり、「小穴を磨き」に行かされたりする可能性があるからだ。

 小穴を磨く:一日で兵舎すべての「小穴」(便器)を洗うこと。「小穴」に送られるのは、命令に従わなかったり規則を破ったりした新兵だ。この罰は、「後輩」の高慢の鼻をへし折り、さぼりが許されないことを示すために適用される。この罰を逃れて「消える」ことができるのは、兵役修了まで残り数週間の「デンベリ」だけだ。

 消える:仕事をさぼること。「消える」のは「祖父」の特権的不服従行為と考えられている。仕事や軍務から逃れるため、言葉の意味通り体育館や兵舎に「隠れ」、帰宅後に備えて最後の数週間を自分のやりたいことに費やすことができる。

 「一」の指令:「デンベリ」が「一!」と叫ぶと、兵舎や練兵場のすべての「後輩」が彼のものに駆け付け、「じいさん」の要望を聞かなければならない。「後輩」である以上、「先輩」の指令には無条件に従わなければならない。

 二かける二:「デンベリ」が「霊」に「二かける二は」と尋ねる。この質問に、「霊」は復員までの残り日数を答えなければならない。「霊」がこれを知らなかったり、忘れていたりすれば、日々を無為に過ごしていると見なされ、罰を受ける。

 後輩を揺らす:新兵の定期的な肉体トレーニングのこと。これも「後輩」の高慢の鼻をへし折る罰として適用される。肉体労働とスポーツの他、練兵場で数時間行進させられたり、冬には部隊の敷地全体の雪掻きをさせられたりする。

 ソチに逃げる:「週末休暇」の同義語。兵士は(職務中の功績が認められれば)ボーナスとして土曜日と日曜日に家族のもとへ帰る「チケット」を受け取る。また、「ソチに逃げる」という表現は、「無断軍務放棄」を働く者に対しても適用され(ここでの「ソチ」(Сочи)は街のことではなく、「無断退隊」(самовольное оставление части)の略である)、部隊の敷地から違法に抜け出したり脱走したりすることを指す。「ソチ旅行」は「ディーゼル」の罰を受ける。

 ディーゼル:規律大隊、または兵士刑務所のこと。違法に「ソチに逃げた」兵士や、窃盗やゆすり、けんか、将校や同僚に対する背負い投げや殴打など、部隊で規則に反する行為を働いた者が送られる。

 体温計:「起床」の指令が「聞こえなかった」兵士を起こす方法。ベッドが横向きに立てられ、兵士は床に転がり落ちる。

 デンベリ協定:復員した者が、部隊で一定の社会活動をし、将校らに自分について良い印象を残すこと。この活動はすべて任意で、「後輩」は呼ばずに「先輩」の手だけで行われる。例えば、私の同期のある者たちは兵舎の修繕をし、別の者たちは将校のためにトレーニング場を作るのを手伝った。

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